精神病棟の女 続編
前回の続きです。
彼女に私は、「今度お茶どう?久しぶりに会わない?」と連絡しました。
彼女からの返事は、
「ごめん。飛び降りちゃって、入院してるの」
だった。
まるで、「ごめん。その日都合悪くてー」みたいなテンションでの返事だったけど、私は本当に飛び降りた事を確信した。
彼女は、これまでも、辛い出来事を何食わぬ顔で話すところがあった。
それは平気なのではなく、まるで感情が欠落したような。
「辛い、怖い、悲しい、死にたい、助けて」の感情だけ抜け落ちたかのように見えた。
私は彼女のお見舞いに行った。
駅からバスを乗り継いでたどり着いた病院。
その病院は、ほんの数十年前までは、認知症の家族や精神疾患のある家族をもった人が、入院させて数十年の長期入院をしている人も珍しくなかった。
地元では、「手におえないどうしようもない状態の家族を捨てる姥捨山のような病院」
と言われているところだった。
(当時、治療法が今より限られていたため地元でそういった呼び方をされていたもののきちんとした病院です。
今もきちんと医療目的のために経営されています。)
ナースステーションに声をかけると、彼女はリハビリに行っていると言われたのでしばらく待つ事にした。
しばらくすると、彼女は、車椅子で看護師と戻ってきた。
彼女は手を小さく振ってくれた。
その日なんの話をしたのか覚えていない。
ただ、本当に飛び降りてしまった話と、多分もう歩けない話は聞いた。
私は思う。
彼女の父親は過ちをおかした、と。
こうなる前に、彼女を自由にしてあげる必要があった。
頭が良くて美人な彼女は、本当なら幸せになれた。
普通に結婚もして、子供をもつ事もできた。
好きな男性と付き合い、愛を育む事もできた。
大企業で新卒採用でバリバリ働く事もできた。
結婚相手の男性の学歴や、彼女の学歴なんかにこだわらなければ彼女は、幸せになれたのに。
その後の、彼女の事は知らない。
知ると私が辛くなると思うから。
※この話が、実話か架空かは読み手の方が読みやすいよう想像していただければ…と思います。
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