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聞き間違い

聞き間違い

 視力が落ちてきたのを実感してすでに数年経ちますが、最近では見えないことにも慣れてきました。普段はメガネをかけないで過ごすので、ウッカリ鏡の前でメガネをかけると、急に現れるシミ・白髪・ホコリ。

 あー、ビックリな現実。見なかった事にしようとメガネを外します。非現実の世界で生きているような気持ちでいればオッケーです。

 数年前の職場で、私より少し上のお姉さまたちが「目の次は耳にくるよ〜」と言っていたのを思い出す。そうなんです、最近は耳も怪しげになってきて、初老の入り口に立ったのだなと実感するのです。
 先日、朝ごはんを食べながらテレビは、フジテレビの「早く起きた朝は…」が聞こえていました。そう、磯野貴理子さんと松居直美さんと森尾由美さんが届いた葉書を読んでトークする、もうご長寿番組。大好きです、「早く起きた朝は…」。貴理子さんが葉書を読んでいます。

「結婚して2年目の主婦です。先月私は、オッサンのために実家に帰省しました。…」 

耳から入る貴理子さんの声。え?おっさんのために帰省?おっさんてお父さん?耳からの情報を頭の中で形にするとどこか違和感が。

「…出産が始まりました」貴理子さんの声。えー、そういうことか!オッサンではなく、お産だったのかー。家族は誰もオッサンとは聞こえなかったようでした。

 息子の学校の保護者で集まって話していた時のこと。大体男子のお母さん達が集まると、「手紙を提出しない」「部屋が汚い」「ゲームばかりする」などなどのオンパレードなのでホッとするのです。 1人のお母さんが

「もう、昨日のトレーナー学校から持って帰ってこないんだもん」

と嘆いていました。昨日の…トレーナー…あり得なくはないのかもしれない。でもちょっとだけ頭の中では違和感が。

「…部活用のトレーナー着て帰ればあったかいのに、置いてくるんだよねー」 

なるほど、昨日のトレーナーではなく、起毛のトレーナーか。またも、他のお母さんたちには、昨日とは聞こえなかったようでした。

 実家に寄った時のこと。病院の帰りに母に頼まれた買い物をして、父がスーパーから帰ってきた。どうやら頼んだものの他にローストビーフを買ってきて予算オーバーだったらしい。レシートを見ながら、

「高いと思ったらローストビーフ買ってるじゃない」

「いやー、美味しそうだったから〜」認知症ではないので、故意なのである。

「もうお父さんに頼むと高くつくわ」と言ってる時にはもう父は聞こえていないようだった。「ああやって都合悪くなると聞こえなくなるんだよ」と母が言うと、

「ん?」と振り向く父。聞こえてんじゃん。

都合の悪いことは聞こえない。何て羨ましい。都合の悪いことは見えない、聞こえない。早く私もその域に達したい、楽しみだ。ローストビーフも美味しそうだった。

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