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【シリーズ第19回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 引越し当日、なにを思ったのか、運命の彼は私に電話をかけてきた。

 彼のことはスッパリあきらめ、私のストーカー疑惑を晴らすために、2カ月間もクラブ通いをやめていたにも関わらず、

 「会える?」

 と聞かれたら、間髪入れずに、

 「嬉しい~!」

 と叫んでいた。

 彼に誤解され、うんざりされ、怖い顔をされ、こちらもうんざりしていたはずなのに、私はピョンピョン、飛び跳ねんばかりに喜んだ。

 さて、無事に引越しも終わり、お部屋も私もピカピカにして、約束のキングストン・マインズへ向かった。

 今回はクラブの中ではなく、外で待ち合わせだ。

 スムーズに再会を果たし、会話もそこそこに、私のアパートへ向かうことになった。
 
 とっても安易な36歳。

 彼の車の後について走っていると、ハイウェイの手前にある、セヴンイレヴンで車が止まった。

 お買い物があるらしい。

 彼が窓越しに聞いてきた。

 「キャンドルある?」

 ・・・キャンドル???

 ・・・洋服もないのに、キャンドルなんてあるはずもない。

 ・・・何に使用するんだ???

 ・・・この男には、変な趣味でもあるのか???

 ・・・SMか???

 想像は果てしなく広がる。
 
 「・・・ない」

 と答えると、彼は店の中へ入っていった。

 このまま彼を残して逃げ出すべきか?

 そんな趣味があるようには見えなかったが・・・。

 あ~、どうしよう・・・。

 決めかねて、車の中で待っていると、ホットドッグとコンドームを持った彼が出てきた。

 なるほど~!!!

 ”キャンドル”ではなく、”コンドーム”だったんだ!

 謎は解けたけれど、リアル過ぎて、ドキドキしてきた。

 
 アパートに到着したものの、引越し直後なので、部屋にあるのは、ベッドと勉強机のみ。

 いい大人が二人、この状況でできることといえば、ただひとつ。
 
 そのひとつのことが終了すると、彼が言った。

 「A、B、C、D…て順番に言うてみ」

 ・・・もうちょっとマシなことは言えんのか~~~っ?!?!?

 ハリウッド映画みたいな、ロマンチックを期待していたわけではないが、なんで、終わった直後に発音の稽古なんだ!!・・・と思いながらも、

 「A、B、C、D、E、F、G・・・」

 と、言い始める私。

 私が発音するたびに、彼は正しく直してくれたけれど、途中で面倒くさくなったのだろう、Zにたどりつく前に、

「プラクティス(練習)」

 と、見放された。

発音の練習が始まった・・・

 そして、レッスンが終わると、彼はとっとと帰り支度を始めた。

 ま、こんなもんだ。

 安易にこういうことをすると、こういう目に遭う。

 今日で最後かなぁ・・・と思いながら、彼を扉の前まで見送りに行った。

 すると、

 「またね」

 と言って、彼が唇を突き出した。

 ・・・・・・???

 おぉぉぉぉーーーーー!!!

 お別れのキスだーーーっ!!!

 英語の稽古のことなど、いっぺんに吹っ飛んだ!

 映画やドラマで、アメリカ人が、

 「じゃね、ハニー!」

 と言って、軽くキスするシーンだっ!

 そんな日が、私にやってくるとは思ってもみなかった!

 突き出された彼の唇に、チュッとキスをした。

 あ~ん・・・幸せ♡

 これも今日が最後かなー。


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