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自治体の公共建築物の木造化の促進にはデザインビルド方式が最適です。

 自治体の公共建築物について、低層のものに限らず、積極的に木造化を促進していくには、設計・施工一括発注方式の一類型であるデザインビルド方式(別途選定した建築デザインに基づく詳細設計付き施工発注方式)が最適です。

  しかし、我が国では、官公庁等の建築工事の発注方式として、設計・施工分離発注方式が専ら用いられています。設計・施工分離発注方式の主眼は、工事仕様書として確定した詳細仕様に基づき、緻密な積算により予定価格を策定した上で、施工業者を選定して発注するところにあります。設計・施工分離発注方式では、使用する資材や工法が工事仕様書で詳細に規定されているため、施工業者が資材や工法について創意工夫を凝らすといった裁量の余地はありません。また、予定価格策定時の資材価格は、一般財団法人建設物価調査会が毎月刊行する「建設物価」に基づきます。このため、予定価格設定後に資材価格の上昇が見込まれたとしても、その上昇リスク分を予定価格に反映させることはできません。このように、設計・施工分離発注方式では、最先端技術等の高度な技術力を有する施工業者であっても資材や工法に創意工夫を凝らすことが許されない上に、資材価格の上昇に打つ手がありませんので、前例の無い取組みが求められる場合も少なくない公共建築物の木造化の促進に、適するとは言えない発注方式です。

 他方、米国での官公庁発注(建築工事の場合には別途選定した建築デザインに基づくデザインビルド)は、プロポーザルとネゴシエーションを基本とする発注方式です。つまり、我が国の「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の第18条に規定された「技術提案の審査及び価格等の交渉による方式」とほぼ同義の、設計・施工一括発注方式です。

 設計・施工一括発注方式では、その一類型であるデザインビルド方式を含めて、確定した詳細仕様に基づき緻密な積算で予定価格を策定することなど、そもそも不可能です。それゆえ、デザインビルド方式における予定価格は、要求要件を必要十分に示した要求水準書に基づく業者見積もりの徴収・査定に依ることとなります。このことから、デザインビルド方式では、施工時に使用する資材や工法は、要求要件を満たす限り建設業者の裁量で決めることができます。このため、資材価格の大幅な上昇が見込まれる場合であっても、建設業者は、その上昇リスク分を見積価格や入札価格に予め反映できる上に、最先端技術の活用や創意工夫を凝らすことにより使用する資材や工法を最適化することも可能です。このことから、デザインビルド方式は、前例の無い取組みが求められる場合も少なくない公共建築物の木造化の促進に、最適な発注方式であると言えます。


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