名残り

わたしは箸を置いた
箸はわたしを置いた
わたしと箸は同じ置かれたもの同士
夏休みの端に腰掛けて
初めての話をした
眠たい話をした
存在に挨拶をする
挨拶は水のように沈黙する
やわらかな肘のところから
街へと抜けていく脇道がある
量も質もいらなかった
子供の頃、何度も歩いたその道で
母親を見窄らしいと疎んじていた
わたしが箸を持つ
箸がわたしを持つ
植物のまま終わる命がある
名残り、鈍色に滑り落ちる

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