見出し画像

ウルトラマンエースにみられる、プロレス的技の組み立てかた

以前「ルチャの受け身とウルトラマンの受け身は同じ?」で、前まわり受け身を中心に、歴代ウルトラ兄弟のプロレス技を使った戦い方を書いたが、今回はウルトラマンエースをフォーカスし、より深堀りしてプロレスラー的に見るとどうなのか?を改めて検証してみたいと思う。

番組開始時のエースは、動きにぎこちなさが見え、超獣と抱き合ってくんずほぐれつの素人のケンカのような戦い方が多い。見た目に何をやっているかわかりずらく、プロレスラーだったら控室に帰って先輩にこっぴどく叱られるであろう闘い方と言っていい。

前半から中ごろまでエースが多用したのは力道山ばりの空手チョップで、後半でもこの技は、試合組み立てのベースとなる。
同時に両手を相手に叩きつける、モンゴリアンチョップ、あるいはスレッジハンマーともとれる、ダブルチョップが使われている。
相手の攻撃をよける際、当初は頻度が少なかったが、中盤以降一度の戦いの中で側転を繰り返し行うにようなった。しかし同じ技を一試合中に何度も使わないことが基本であるプロレス的には、あまりほめられることではないと言えよう。

つなぎ技としてはショルダースルー、巴投げ、腰投げといった基本的な投げ技が多く使われ、パンチ、ひざ蹴り、ミドル、ハイキックも多用している。
ショルダースルーは自らがかがんだ状態で、相手が突っ込んできた勢いを利用して投げるパターンが多いが、初期には全女の若手式の自分から相手の股下に入り込んで、持ち上げて投げるパターンもあった。

時折みられるドロップキックは両足で蹴る形は少なく、片足だけで蹴るライダーキックが多い。
これも高さがあり、超獣の顔面にきれいにヒットするのであれば文句はないのだが、エースのそれは低空飛行。
「あの技かっこ悪いからやめたほうがいいんじゃない?」と仲間のレスラーから忠告されてもおかしくないレベルだ。

ここまで辛口が続いてしまったが、エースの技でうならされた点を挙げると、超獣の正面で倒立し、両足を首に引っ掛けるヘッドシザースホイップがあげられる。この時代かなり珍しかったであろうこの技は、おそらくミル・マスカラスを手本にしたと思われる。
さらに逆エビ固め、田上明ばりのダイナミックキック、フライングボディーシザースといった技も使われており、この辺りはエースの研究熱心なところが伝わってくる。

序盤はぎこちなさの見られたエースだが、終盤が近づくにつれ動きはだいぶ滑らかになり、前回り受け身のトレス・クアルトスは一回の戦いの中で何度も見せるようになる。
これに関しては見せる要素の強い側転と違って受け身であるため、何度やってもマイナスポイントにはならない。しかし後方受け身は苦手なようで、素人以下の倒れ方をしてしまうシーンも見られ、これは残念なところだ。

そして最後のほうになって使われた技が、超獣に対しての顔面蹴りだ。
全盛期の天龍源一郎のように倒れた超獣に対し、えげつなく下から顔面を蹴り上げるのだが、これだけにとどまらず、前田日明が長州力の顔面を蹴り上げた時のような、問題になりそうなパターンまでみられるのだ。
例として顔面を蹴り上げられた超獣アクエリウスは、地球を植民地にしようとしていた悪い奴だったので、これぐらいされてもいいとは思うのだが、なぜかエースはアクエリウスを倒した後、その場に墓石を連想させる巨大な岩を置き、両手を合わせて懺悔している。(やりすぎたと思ったのだろうか?)

作品を続けて観ていると、しばしば不思議に思うシーンに出くわすが(超獣が自分で川に頭から突っ込み、動けなくなるなど)、どうやら演者さんが転んだりして、本来ミステイクになるべきものが撮り直しをせず、そのまま本編で使われていたようだ。
そのためキックを放ったエースが、そのまますっころんだりするシーンまである。
しかし「撮り直しなし」というこの姿勢は、単なる現場のやっつけ感が感じられるため、ルー・テーズの言う「プロレスにNGはない」理論と一緒にするのは、考えすぎだろう。

最終的にエースは、相手の顔面も容赦なく殴り、蹴り上げるなど、デビュー当初とは比べ物にならないぐらい荒っぽいレスラーとして(?)成長したといえるだろう。(この後のタロウは、最初から相手の顔面を容赦なく素手で殴る、かなり危険な選手となるが、これはまた機会があった時に)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?