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【小説】強盗に花束を 第7話【創作大賞2023応募作品】

第7話

本当にいた。

警察が。

物凄い数。

銃を持って包囲してある。

ここまでは想像してなかったので正直驚いた。

高木さんの通報を重くみて、慎重に来てくれたんだろう。

僕は警察に目を合わさずに開錠をする。

手を必要以上に震わせて、佳境であることを伝える。

これで伝わってくれたらいいのだけど。

そのままカーテンから離れる。

「よっしゃ。そしたら人質交換やな。ちょっと移動しよか」そう言うと、おじさん強盗は首に包丁をあてたまま女性強盗ごと移動する。

自動ドアの前、7メートルほどのところに。

「ほな、せえのでお互い人質離すで。お互いゆっくり歩かせよな。交換成立したらすぐにでていけよ?」おじさん強盗が言う。

強盗団は5人とも自動ドアのカーテンのすぐ前に立っている。殿が田代支店長を人質に取っている強盗だ。そして向かい合って7メートル、僕とおじさん強盗と少年強盗が立っている。おじさん強盗は女性強盗は人質にしている。

両者、人質をゆっくり解放する。

二人は対象的に歩き出す。

堂々と歩く女性強盗。

あまりの恐怖からか、生まれたての子鹿の様にあるく田代支店長。

すれ違い様に、田代支店長がまた人質にされるのでは。

そう思ったが、女性強盗は見向きもしないで出口に行った。

「行きましょう」女性強盗が言った。

先頭の強盗がカーテンをくぐる。

「え?」先頭の強盗の声が聞こえる。

おじさん強盗、少年強盗、僕が同時に動く。

おじさん強盗と僕はタックルで。

少年強盗は綺麗なドロップキックで強盗団を外に追い出す。

「警察だ。動くな」突然威嚇の様にサイレンが鳴り響いた。

僕たちによって外に押し出された強盗団はパニックになった様に動きを止めた。

一人を除いて。

女性強盗だけが素早く動いた。

ジャンパーの内ポケットに手を伸ばす。

銃が出てくる。

『その銃は偽モンってのはこっちは分かりきってるけど、他にも持ってるかもしれんしな』おじさん強盗の声がフラッシュバックする。

持ってたんだ。

リーダーが。

2丁。

スローモーションの様に世界がゆっくりになる。

大丈夫だ。

あれで何かしようとしても手遅れだ。

詰んでいる。

この警察たちからは逃げられないし、僕たちのタックルによって外に弾き出された強盗団は、店内に戻ることもできない。

今、銃を撃っても徒に罪を重くするだけだ。

冷静な女性強盗がそんなことをするわけがない。

大丈夫だ。

だけど僕の予想を遥かに越えて。

女性強盗は僕に銃を向ける。

「ごめんなさいね」女性強盗がそう言ったのを、僕は確かに聞いた。

ぎゅっと目を閉じる。

バンバンバン。

サプレッサーがされていない銃声はとてつもない爆音だった。

まるで打ち上げ花火が目の前で爆発したような。

キーーーンという耳鳴りの中。

僕は物凄い衝撃を全身に浴びた。

銃で撃たれるとこんな衝撃があるのか。

冷静にもそんなことを考えていた。

目を開けると視界は真っ黒だった。

死んでしまったのか、と思ったがそうではなかった。

目の前に何かが覆い被さっていた。

おじさん強盗だ。

『いざと言う時の話やねんけどさ、自分らまだ、若いやんか。俺が盾になった方がええと思うねん』おじさん強盗の声が反響する。

そうか。

おじさん強盗はとっくに覚悟を決めていたんだ。

少年強盗がおじさん強盗にしがみつく。

何かを言っているが、耳がおかしくなってわからなかった。

視界の端で強盗団が確保されているのが分かった。

「おじさん」名前も知らない命の恩人に向かって僕は叫んだ。

エピローグに続く






第1話



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