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妻が倒れた日

爛漫と咲く桜や、特に散る桜の花びらを見る季節になると
思い返してしまうことがある。
当時、仕事で県外に単身赴任先していた私は深夜次女からの
電話で起こされた。
眠気でぼーっとして電話に出た。一言・一言確かめるように、
でも力強く話し始める様子に何かがあった事を察知し覚醒した。
「これから言う事を・落ち着いて・聞いて・・・お母さんが・
倒れた・病院に居る・・・。今から来れる?」

妻が倒れる前の日は私の誕生日で、妻が私の単身赴任先に来て、
色々世話を焼いてくれて、誕生日のプレゼントもくれた。
元気だったのに・・・。余韻が残る楽しい思い出が一変した。

後で妻から聞いた話では、その日の夜、妻は懇意にしているお隣の家で
食事を共にしお酒を飲んで帰宅した。
間もなく、今までに経験した事のない猛烈な頭痛に襲われ、その異常さに
やっとのことでお隣に体の急変を電話して助けを求めた。
その時、妻は事態の重篤さが解らず、もしダメなら翌朝まで耐えようと
思っていたらしい。
しかし、お隣のご主人様が心配してマイカーで病院に連れて行ってくれた。この事が回復に大きな功を奏した。
ご主人は感謝してもしきれない命の恩人となった。
蛇足だが、そのご主人は心臓疾患をかかえていて、容体が悪くなった時に、我家の長女が車で病院に連れて行ったという出来事が後に起こった。
ささやかだが恩返しになったのかもしれない。

もうずいぶん前の出来事だが、その時の次女の電話の様子、
嵐の中を駆け水溜にはまった衝撃に思わずハンドルを握りしめた恐怖、
ICUのベットで寝ている妻に何度も語り掛けたことが今でも、
映像として頭の中に焼き付いている。

復活してから何回目かの妻の誕生日に「きみの誕生日に」を記した。
書くことはもっともっといっぱいあるがこれでいい。
それらは心の中にあって読み返す度に何倍もの感慨が溢れて来るから。
今年も、また読み返している・・・。

あの時、共に健康でどちらかが逝くまでずっと一緒に居たいと願った事は、歳を重ねるごとに強くなっていく・・・。

前述の『きみの誕生日に』を載せます。
「ありがとう❢」
月並みな言葉だね
違う言葉も探したけど
やっぱり
気持を託すには
この言葉がいいと思った

ボクが入院した時
1日も欠かさず来てくれた きみ
きみが家から持ってきた
けろけろけろっぴの
プラスチックコップ
その時の気持ちを忘れないように
今でも大切に使っている

ボクの退院の日に 病院で鼻血を出して・・・
ナースセンターのお世話になるほど
疲れていたんだね
ありがとう

きみが倒れた夜
単身赴任先に居たボクは
嵐の夜中50㎞超の道を疾駆して
ICUできみと会った。
くも膜下出血だった。

それから ボクは毎日病院に通った
きみは 後遺症の発症も無く
奇跡の生還を果たしてくれた
ありがとう

きみが倒れる前の日は ボクの誕生日だった
満開の桜 花びらが舞うレストランの庭
大きな野天傘の元でのランチが忘れられない
思い返せば いろんなことがあって
此処まで来た
とことん走って バッタリ倒れる
全力を出し来る きみ
余力を残して 備える
慎重派のボク
違うタイプなのに
よく ここまで歩いてきたものだと
思う
そんな キミは
ボクにとってかけがえのないひとになった

願わくば ボクも
君にとって そういう人であったらいいと思う・・・
これからは とことん走ってバッタリは嫌だよ
余力を残して 休んでね
逝く日まで 元気でいてほしい

それが ボクの願いです

どうか 叶えられますように・・・



最後まで読んで頂いてありがとうございました。
自分の中では大きな大切な思い出です。
記事ではよくわからない部分が多いと思いますが。

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