未来 2024.3月号より
銃声というときの声なまなまと夜の喉は引き絞られて
椀に味噌汁の残りの冷ゆる間をガザ侵攻の報は流れつ
黒き影を帯ぶるゆえ美しき響きもつ或いはセヴァストポリという名も
ニューヨークに戦車の走る恍惚をあかときの夢のなかに抱けり
廃墟よりビル群は聳え立ちてゆく逆再生のヴィデオテープに
灰色の街、血や肉や慟哭のモザイク、匂いは知る由もなく
手のひらに名前を書いてそのときをただ待つのだという人々は
天使エスメラルダひととき現れていずこへ消えてゆく声もなく
細胞と細胞の頽れてゆく感覚に耳目を鎖して遠つ戦争は
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