未来 2023.12月号より
まぐわいの果ててゆくときアメーバの分裂、薄き培養皿のなかに
ラ・トマティーナまぶしかりけり肉叢は血潮のごとき朱に染まりて
かぶとむしの匂いの夜の性はきらきらとLGBTQ…
高所恐怖症の人しか愛せぬと女は言えり 緑の瞳
制汗剤のにおいの蠱惑的なるをハンディファンの風が運びき
スマートフォンに記憶を同期させながら人ひとり忘れゆく夏の夜か
巨人サヨナラ負けの短夜にタクシーはまだつかまらぬまま
メラニー・ロランうつくしき映画を終えて眺むる窓の外の晩夏光
メロンソーダ零れて端ゆ滲みゆく原稿用紙に初秋の季語
夏というひとつの円を閉じてゆく硝子の森を統べる力に
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