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名前で運勢が変わるか?(7):12万6千人の姓名判断で実証?

●例外的に検証データを開示した姓名判断書

ここまでのところで、「名前は職業選択、若々しさ、性格や気質、能力などに影響するかもしれない●●●●●●」ということがわかりました。

ただ、これらは名前または漢字のイメージ●●●●が影響した(かもしれない)ケースです。残念ながら、一般的な姓名判断の効用、つまり字画数との関連を調べたものではありません。

では、そうした研究は何もないのでしょうか。実はひとつだけあります。というか、1冊だけ見つけました。ただし、否定派の批判が実証性に乏しかったように、これから紹介する肯定派の研究も実証性には問題があります。

何はともあれ、その内容を見てみましょう。書名もズバリ、『姓名判断の実証』(増村治良著)です。[*]

●おおむね実証的な肯定的研究

『姓名判断の実証』の特徴のひとつは、なんといっても扱ったデータ量が半端ではないことです。各種の出版物等から過去24年間(昭和48年~平成8年)に収集した人名データは12万6千件にものぼり、それらの文字の種類や画数をすべて調査したというのです。

『赤ちゃんの名前』の4万人に比べても、データ量は3倍以上ですから、とにかく「すごい!」の一語に尽きます。

その膨大な量の人名データを、東大合格者、有名企業の社長・会長、芸術家、芸能人やスポーツ家、さらには各種の被害者など、23種類(吉運13種と凶運10種)のテーマ別に分類し、姓名判断的に調べたそうです。

こちらも『赤ちゃんの名前』の職業14分類に比べて、分類テーマは1.5倍以上です。その結果、地格数、外格数、総格数、名前の文字(漢字、かな)には明らかな偏りがあったそうです。

このうち、文字の偏りについては、すでに当ブログでも「あるかもしれない」という考えに傾いていますので、これ以上は深入りしないことにします。

ただし、この書にあるような、個々の漢字と吉運・凶運テーマの関連を無条件に承認するものではありません。これらを正しく評価するには、専門の統計学者に追試してもらう必要があるからです。当ブログの立場は、あくまでも「あるかもしれない」です。

●地格数、外格数、総格数について

そういうわけで、ここでは「地格数、外格数、総格数に見つかった偏り」に限定して見ていきます。地格数、外格数、総格数の用語については、少し説明が必要でしょう。

姓名の各文字の画数を足し合わせ、その合計数で運勢の吉凶を判断する技法を「数霊法」といいますが、この技法を用いる占い師は、多くが5種類の画数合計を使います。たとえば、名前が「渡辺直美」 さんなら、次のようになります。

① 渡(の画数)+辺(の画数)
② 辺(の画数)+直(の画数)
③ 直(の画数)+美(の画数)
④ 渡(の画数)+美(の画数)
⑤ 渡(の画数)+辺(の画数)+直(の画数)+美(の画数)

このうち、地格数とは③、外格数は④、総格数は⑤のことです。なお、占い師によっては、地格、外格などを他の名称で呼ぶこともあります。

●東大合格者の字画数の偏り?

さて本題に戻って、この書にはテーマごとに字画数の吉凶評価が、男女別に五段階で記載されています。

たとえば、東大合格者の項目では、男性の場合、地格数は3、26、28などが最上位です。つまり、東大合格者には、地格数が3、26、28などの人のほうが、2、19、29などの人より相対的に多かったというのです。

分析方法は先の『赤ちゃんの名前』とほぼ同様に思われますが、私の読解力が足りないせいか、本文の説明からは少々読み取りにくいところがあります。また、字画数の取り方には重大な混乱があるため、この点が分析結果に与えた影響は無視できません。

具体的には、この著者は姓名判断に使用する字体を「戸籍謄本に記載されているものが基本」とし、新・旧字体が区別されるとします。当ブログの分類では、これは「戸籍派」です。

ところが、「芸名やペンネーム、或は通称名があって、普段使用されている方は、こちらの姓名を使用」するとあるので、この定義に従えば、「常用派」になります。

●統計学者による追試に期待

字画数を決める際、「戸籍派」「常用派」のそれぞれに問題(疑わしさ)があるものの、この両者を混用する場合に比べれば、問題の大きさはいくぶん限定的です。『漢字の画数問題(3):戸籍派』と『漢字の画数問題(4):常用派と併用派』で見たとおりです。

いっそ「戸籍派」か「常用派」のどちらか一方の立場でデータ収集したなら、もっと意味のある結果になったのでは、と惜しい気がします。

とはいえ、調査方法をかなり具体的に明示しているので、おおむね実証的な研究といえそうです。この著者の結論(分析結果)には賛否を控えるとしても、今後の研究の足がかりとなる意義は大きいでしょう。専門の統計学者による追試に期待したいところです。

地格数、外格数、総格数の偏りが確かであれば、字画数を用いた姓名判断の実効性を示す証拠になるかもしれません。

=========<参考文献>==========
[*] 『姓名判断の実証』(増村治良著、文芸社、1999年)

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