すずめの戸締まり

何事も気にしなければ気にならない。
気にしなければテーブルの上に馬糞が乗っていてもディナーを楽しむことができる。
ときに我々は鈍感であった方が人生楽しめる。
だがしかし、馬糞をご馳走だと思い込まされて食べるわけにはいかないし、まして人様に馬糞を勧めることはできない。

いや、まあ、なんの話かというと。
『すずめの戸締まり』を観たんですよ。
率直にいうと面白かったです。
でもね。
やっぱり我々は震災というものに対し、もっとナイーブになってもいいんじゃないか。という気持ちがずっとあって。
それを娯楽として扱うことはデリカシーに欠けているんじゃないか、それを語るとき傷つく人はたしかにいるはずで、その人たちを蔑ろにすることになりやしないか、という思いがどうしてもカーテンをおろす。
いやそんなこと言い出したら戦争映画とか作れんやんけ、っていわれるとまあそうなのだが、それはそれとしてやっぱり東日本大震災はちょっとなぁ。うーん。

物語の幕開け、主人公すずめが目を覚ますと顔のまわりに2頭の蝶が飛んでいるんです。でもすずめはそれに気づかない。
寝起きで遭遇したくない昆虫ランキング、オオスズメバチを1位とすると蝶はランク外だろうけど、とはいえやっぱちょっと驚くだろー。
と、いぶかしく思ってたんですけど、これは実は意味のある演出で。
後々、あーなるほど…と得心がいったわけだけど、それもなんか、あざといというか、デリカシーなくね?と思ってしまったわけで。
こういうのもね、まあ、考えすぎといえば考えすぎなんだけど。

それはそれとしてよかった点。
とにかく草太さんがいいんですよ。
めっちゃヒルコ妖怪ハンターの沢田研二さんと原作の稗田礼二郎をミックスした感じで。
あまりにヒルコ妖怪ハンターっぽいから、あこれミミズにもキンチョールが効くんじゃない?って期待したんですけどねー。後半はむしろハウルの動く城でした。
新海誠監督は年下の女の子に守られる情けない男を描くのがすこぶる上手くて、本作も期待を裏切らなかったです。これはもうなんかそういう性癖だよね。ぼろっちい椅子になって女子に踏まれたり座られたりするってそうとう拗らせてますな。しかしそういうのがいい。

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