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出口が見つかった人は凄いなあ

今日はニーネの1st「8月のレシーバー」に収録されている「茫洋」という曲について書きます。


「茫洋」は「広くて見当のつかないさま」という意味らしいです。「もうどうすればいいかわかりません」みたいな。


自分ってのが解らなくってやばいよ
何言ってんだか解らなくってやばいよ

「茫洋」

荒々しいギターの中で「最近俺はやばいよ~」と歌っていて、とても精神不安定で大好きな曲です。

曲の後半には「君」が登場します。

ぼおっと出来るなんて凄いな
ぼおっと出来るのが凄いな
何も考えないでいても 何も考えないでいれる 君が好きだよ

要するに「俺」は頭の中が常にぐちゃぐちゃで、一秒も心が休まらない状態なんだろうなというのがわかります。ニーネはなんだか不穏なラブソングが多いのですが、この曲は特にそうです。そしてこの不穏さは2ndの「アンチリアルロック」にも強く表れていています。


何もない毎日がいいなぁ 毎日何も起こらなければいいなぁ
どんな天気の時にも 天気と同じ気分でいれたら いいなぁ

「復活の歌」

「復活の歌」は2ndの最後の曲で、ぱっと聴くと明るい歌にも聴こえるのですが、ぼくはド根暗ソングだと思って聴いています。「何もない毎日がいいなぁ 毎日何も起こらなければいいなぁ」というのは、一秒も気を抜くことができなくて、もう現実と向き合うのに疲れ果てている人にしか書けない歌詞だと思っています。

この時期のニーネの歌詞世界の主人公は「人生がしんどい、あんまりうまくいってない」みたいな感じが常にあります。そして人生がうまくいっていない場合、普通は「もっといい方向に進みたい」といった変化を求めるものだと思うのですが、この主人公は「毎日何も起こらないでほしい」と願っています。「そんなことよりとにかく俺はもう意識があることに耐えられない」という切実さがあって、そこがよいのです。


ちなみに「茫洋」は2003年のライブバージョンだと後半の歌詞がまったく違うものになっています。

やりたいことが見つかった人は凄いなあ
出口を見つけられた人は凄いなあ
出口が見つかった人は凄いなあ
出口を見つけるって凄い
出口が見つかるなんて凄いなあ
本当に見つかったって思わない
見つかってないのに 見つかったって思えるみんな 凄いなあ

「茫洋」2003/09/07 高円寺JIROKICHIバージョン


2003年のニーネはラブソングがないところが特徴のひとつで、やはり「茫洋」からも「君」が消えています。そしてもともと過激だった歌詞がさらにとんがったものになっています。皮肉のように「出口が見つかるって凄い!凄いなあ!」と連呼していて、サウンドもノイズすれすれで、はちゃめちゃで最高なのです…「こんな感じでやさぐれてしまったためにお客さんが離れていっちゃった」と大塚さんは仰っていましたが…。しかしぼくはこんな感じが大好きなので助かります。「詩集の第2章にこっちのバージョンの歌詞も収録するのはどうでしょうか」と大塚さんに提案しておくべきだったかもと最近反省しています…。いつか増補版が出せるような日がもし来たらそうしてみたいな。


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