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人生最終盤を社会でどう支えるかを考えたい。死に関すること、介護のことなどをテーマにした文書をまとめます。
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記事一覧

とろみビールと介護Bar

(この原稿は、毎日新聞WEBでの私の連載「百年人生を生きる」で2019年9月26日に掲載された記事です。無断転載を禁じます) 本人が努力して、自力で口に食べ物を運び、のみ込もうとしても、年をとると手や口の筋力が衰えてうまくできなくなる。そうなると周囲のサポートが頼りだ。しかし、正しい口腔(こうくう)ケアや食事介助ができる人はまだまだ少ない。そこで、自分の口で食べられる高齢者を増やすために、食事のサポート法を伝授する講座や、食べることが不自由な人やその家族、介護関係者らが一緒

まだ復活できる!高齢者の「かむ力、のみ込む力」

(この原稿は毎日新聞WEBでの私の連載記事「百年人生を生きる」に2019年9月12日に掲載された記事です。無断体裁を禁じます) 口の力の衰えは全身の衰えの前兆かもしれない――。前回、加齢で口の力が衰え、かむ力やのみ込む力が落ちてしまう状態「オーラルフレイル」を紹介した。予防や対策が重要なのは言うまでもないが、加齢による衰えは根本的には止めることはできない。自分の力でどうにもならない時はどうしたらいいのだろうか? まず「専門家の力を借りる」という選択肢がある。「最後まで口から

「かむ力、のみ込む力」を鍛えて長生きする方法

(この記事は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年8月23日に掲載した記事です。無断転載を禁じます) 食べることは、生命を維持するためだけではない、人生の大きな喜びでもある。しかし年をとるにつれて、かんでのみ込む機能は衰えていく。口の機能が衰えると健康を損ない、最終的には社会とのつながりが希薄になる恐れがある。口や喉の筋力が落ちて、口の力が虚弱になった状態「オーラルフレイル」を察知して早く対処し、口で食べて栄養を得られる期間を長くすることが健康寿命を延ば

高齢化団地で「2040年の介護危機」を先取り解決

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年8月9日掲載の記事です 無断転載を禁じます) 高度経済成長時代、都市部で就職した地方出身の人たちの多くが家庭を持ち、首都圏の集合住宅、いわゆる「団地」に住んだ。現在その団地の多くが、住民の高齢化や1人暮らしの増加などの課題に直面している。団地は「日本社会の課題を先取りした場所」ともいえる。団地の課題解決は、日本社会が抱える課題解決にもつながる。団地の空き室を活用し、新たな地域コミュニティーを作る試みを取材

団塊世代に勧めたい 「謝縁会」で生きてるうちに資産寄付

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年7月26日掲載の記事です 無断転載を禁じます) 縁のあった人たちを招いて感謝する生前葬を開き、その場で、次世代支援の個人基金への寄付を呼びかけるパーティー「謝縁会」が6月30日、東京都内で開催された。寄付の普及を図る公益財団法人「パブリックリソース財団」(東京都中央区)が企画した。寄付といえば、遺言で遺産の寄付先を決め、亡くなってから寄付する「遺贈」や、故人を思って相続人が財産を寄付する「遺贈寄付」を連載

料理や食事で呼び覚ます認知症高齢者の元気

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年7月5日掲載の記事です 無断転載を禁じます) 認知症になったり、施設に入ったりすると、高齢者は「危ないから、料理は無理」と決めつけられ、調理から遠ざけられがちだ。献立から調理までさまざまなプロセスがある料理は、日常生活の中で段取りを考えて手先を動かすことが要求される行為だ。料理をすることで認知症予防や改善、情緒の安定といった効果が期待できるとして、高齢者施設の中には「料理療法」を取り入れるところも出てきた

自治会、高齢者、人々のつながりに利 千葉県松戸市「あんしん電話」

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年6月20日掲載の記事です) 1人暮らしや夫婦のみ高齢世帯への定期訪問など、見守り活動がさまざまな形で広がっている。その一つが、千葉県松戸市で運営されている「あんしん電話」だ。週1回、利用者宅に安否を尋ねる電話が自動的にかかってきて、プッシュボタンで安否を回答する仕組み。体調不良や要連絡など回答に応じて、地域のボランティアが利用者宅を訪問する。シンプルで、利用者につかず離れず安心を届けることができる▽自治会

「家族に頼れない私」自治体が支えるエンディング

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年5月10日の記事です) 一人暮らしなどで家族に頼れない高齢者が増え、入院する際の身元保証や葬儀、納骨や死後事務などをサポートする事業が広がっていることを前回「最期まで安心できる『おひとりさま』の身支度とは」で紹介した。今回は、市民の「終活」を自治体が支援する、新たなサポートの形を紹介する。神奈川県横須賀市が2018年5月に始めた「終活情報登録伝達事業」(通称「わたしの終活登録」)だ。墓の所在地や遺言書の

最期まで安心できる「おひとりさま」の身支度とは

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年4月24日の記事です) 入院時や施設に入るとき、身元保証人を求められる場合がある。あなたには頼める人はいるだろうか。また、自身が亡くなったあとのさまざまな死後事務手続きや遺品整理などを、託すことができる人はいるだろうか――。こうした身元保証や死後に必要な手続きは、以前は家族がすることが当然と考えられていた。しかし、「おひとりさま」高齢者らの増加を背景に、それらを請け負う事業が広がりをみせている。「生前契

第二の人生「会社ではなくボランティア」という選択

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年4月11日の記事です) 高齢化に伴い、企業では定年延長や再雇用が広がる。社会とのつながりは「やはり仕事」というシニアも多いだろう。そんな中、働く場を企業や行政からNPOなど市民セクターに移すなど、定年前後を境により一層「社会」を意識した生き方を選ぶ人も目立ってきた。 定年後の生活についてフリートーク 東京都文京区本郷にある老舗旅館の一室で、2019年2月17日、50代から60代の男女11人が車座に座っ

「遺贈寄付」したい人のための注意点

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年3月21日の記事です) 前回、遺贈寄付の実例を紹介し、「思い」が次世代に引き継がれることで生まれる「寄付者よし、受け手よし、社会よし」の「三方よし」のお金の流れについて述べた。今回は、なぜ遺贈寄付への関心が高まっているのか、実際に寄付しようとする際にどんな点に注意したらよいのか紹介する。 遺贈寄付への関心の高まりは、寄付を受ける側の実例をみるとよく分かる。例えば、NGO「国境なき医師団日本」の場合、20

「没イチ男女」再出発に必要な婚前契約と思いやり

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年2月24日の記事です) 軽快なディスコミュージックやJポップに合わせ、高級ファッションブランドのベルサーチなどで着飾った男性たちが赤じゅうたんの上をさっそうと歩く。東京都港区三田の寺で2018年12月9日、少し変わったファッションショーが開かれた。59歳から79歳までの6人のモデルは全員、妻に先立たれた男性だ。ショーの名前は「没イチメンズコレクション」。「没イチ」とは配偶者に先立たれた人のことをいう。

寺カフェで集い語り合う 「墓友」というつながり

(*この原稿は、毎日新聞WEB「医療プレミア」で筆者が連載する「百年人生を生きる」2019年2月6日公開の記事です) 家族関係が大きく変わる中で、私たちが迎えた多死時代。少子化で後継ぎがいない、地方から都市に出てきたので菩提寺(ぼだいじ)がないといった事情を背景に、従来の「家墓」「先祖代々墓」とは異なる墓を選ぶ人が増えている。墓石を使わない「樹木葬墓地」や、都会で次々と販売されている納骨堂だ。「家」に縛られず、最後に眠る場所を自分が選ぶ時代になった。その選択が新たな「つなが

孤独に苦しむ73歳男性を救った都心の居場所

(*この原稿は、毎日新聞WEB「医療プレミア」で筆者が連載する「百年人生を生きる」で2018年12月21日に公開された記事です) 老後の暮らしを想像したことがあるだろうか。すでに老後の生活を迎えている人は、若いころに想像していたような日々を過ごせているだろうか。いま、「人生100年時代」の到来がいわれている。100歳以上の人口は約7万人。老人福祉法が制定された1963年には153人しかいなかった100歳以上の高齢者は、81年に1000人、98年に1万人を超え、その後も急速に増