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人生最終盤を社会でどう支えるかを考えたい。死に関すること、介護のことなどをテーマにした文書をまとめます。
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#つながり

団塊世代に勧めたい 「謝縁会」で生きてるうちに資産寄付

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年7月26日掲載の記事です 無断転載を禁じます) 縁のあった人たちを招いて感謝する生前葬を開き、その場で、次世代支援の個人基金への寄付を呼びかけるパーティー「謝縁会」が6月30日、東京都内で開催された。寄付の普及を図る公益財団法人「パブリックリソース財団」(東京都中央区)が企画した。寄付といえば、遺言で遺産の寄付先を決め、亡くなってから寄付する「遺贈」や、故人を思って相続人が財産を寄付する「遺贈寄付」を連載

料理や食事で呼び覚ます認知症高齢者の元気

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年7月5日掲載の記事です 無断転載を禁じます) 認知症になったり、施設に入ったりすると、高齢者は「危ないから、料理は無理」と決めつけられ、調理から遠ざけられがちだ。献立から調理までさまざまなプロセスがある料理は、日常生活の中で段取りを考えて手先を動かすことが要求される行為だ。料理をすることで認知症予防や改善、情緒の安定といった効果が期待できるとして、高齢者施設の中には「料理療法」を取り入れるところも出てきた

自治会、高齢者、人々のつながりに利 千葉県松戸市「あんしん電話」

(この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年6月20日掲載の記事です) 1人暮らしや夫婦のみ高齢世帯への定期訪問など、見守り活動がさまざまな形で広がっている。その一つが、千葉県松戸市で運営されている「あんしん電話」だ。週1回、利用者宅に安否を尋ねる電話が自動的にかかってきて、プッシュボタンで安否を回答する仕組み。体調不良や要連絡など回答に応じて、地域のボランティアが利用者宅を訪問する。シンプルで、利用者につかず離れず安心を届けることができる▽自治会

最期まで安心できる「おひとりさま」の身支度とは

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年4月24日の記事です) 入院時や施設に入るとき、身元保証人を求められる場合がある。あなたには頼める人はいるだろうか。また、自身が亡くなったあとのさまざまな死後事務手続きや遺品整理などを、託すことができる人はいるだろうか――。こうした身元保証や死後に必要な手続きは、以前は家族がすることが当然と考えられていた。しかし、「おひとりさま」高齢者らの増加を背景に、それらを請け負う事業が広がりをみせている。「生前契

第二の人生「会社ではなくボランティア」という選択

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年4月11日の記事です) 高齢化に伴い、企業では定年延長や再雇用が広がる。社会とのつながりは「やはり仕事」というシニアも多いだろう。そんな中、働く場を企業や行政からNPOなど市民セクターに移すなど、定年前後を境により一層「社会」を意識した生き方を選ぶ人も目立ってきた。 定年後の生活についてフリートーク 東京都文京区本郷にある老舗旅館の一室で、2019年2月17日、50代から60代の男女11人が車座に座っ

「遺贈寄付」したい人のための注意点

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年3月21日の記事です) 前回、遺贈寄付の実例を紹介し、「思い」が次世代に引き継がれることで生まれる「寄付者よし、受け手よし、社会よし」の「三方よし」のお金の流れについて述べた。今回は、なぜ遺贈寄付への関心が高まっているのか、実際に寄付しようとする際にどんな点に注意したらよいのか紹介する。 遺贈寄付への関心の高まりは、寄付を受ける側の実例をみるとよく分かる。例えば、NGO「国境なき医師団日本」の場合、20

「没イチ男女」再出発に必要な婚前契約と思いやり

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年2月24日の記事です) 軽快なディスコミュージックやJポップに合わせ、高級ファッションブランドのベルサーチなどで着飾った男性たちが赤じゅうたんの上をさっそうと歩く。東京都港区三田の寺で2018年12月9日、少し変わったファッションショーが開かれた。59歳から79歳までの6人のモデルは全員、妻に先立たれた男性だ。ショーの名前は「没イチメンズコレクション」。「没イチ」とは配偶者に先立たれた人のことをいう。

寺カフェで集い語り合う 「墓友」というつながり

(*この原稿は、毎日新聞WEB「医療プレミア」で筆者が連載する「百年人生を生きる」2019年2月6日公開の記事です) 家族関係が大きく変わる中で、私たちが迎えた多死時代。少子化で後継ぎがいない、地方から都市に出てきたので菩提寺(ぼだいじ)がないといった事情を背景に、従来の「家墓」「先祖代々墓」とは異なる墓を選ぶ人が増えている。墓石を使わない「樹木葬墓地」や、都会で次々と販売されている納骨堂だ。「家」に縛られず、最後に眠る場所を自分が選ぶ時代になった。その選択が新たな「つなが

孤独に苦しむ73歳男性を救った都心の居場所

(*この原稿は、毎日新聞WEB「医療プレミア」で筆者が連載する「百年人生を生きる」で2018年12月21日に公開された記事です) 老後の暮らしを想像したことがあるだろうか。すでに老後の生活を迎えている人は、若いころに想像していたような日々を過ごせているだろうか。いま、「人生100年時代」の到来がいわれている。100歳以上の人口は約7万人。老人福祉法が制定された1963年には153人しかいなかった100歳以上の高齢者は、81年に1000人、98年に1万人を超え、その後も急速に増

「人間らしく生きる」の意味が問われるコロナ禍 「つながり」を意識する

哲学者、内山節先生のお話をオンラインで聞く機会がありました。自律した個を前提とする西洋哲学に対し、内山先生は「関係性」を基軸に据えます。人は人と人とはもちろん、自然と人、自然と自然という重層的な関係性の中にある関係的存在という考え方です。新型コロナウイルスも関係性の視点で捉え、示唆に富むものでした。 ウイルスも関係的生命ウイルスという存在もまた、人と人、自然と自然、自然と人という関係の中に生命基盤を持つ。同時に、ひとつずつの個体としてではなく個体同士が関係しあいながら全体と

疾患があっても医療や介護を支えとして症状を緩和し、人生を前向きに歩いて行く力が「健康」

「健康」の概念について興味深い論考を拝見した。『安楽死・尊厳死の現在』(松田純著、中公新書)。健康概念以外にも様々な気づきがある本なのだが、自分自身が最近、健康についてぼんやりと考えていたことがまさに字になっていた。そもそも人は関係性の中で生きる存在であり、自己決定が万能という考え方に私は以前から違和感を感じ、反対を表明していた。それが健康概念とのからみで肚落ちしたのが今回の論考だ。 WHO憲章は健康を「身体的・心理的・社会的に完全に良い状態」と定義している。「社会的」が入