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花形装飾フォント「唐草文彩体」の配布

こんにちは!てのりです。

花形装飾フォント「唐草文彩体」は、私が当時大学の卒業研究で制作した飾り罫フォントになります。

私の中ではもう何年もずっと卒業研究止まりで特に配布などはしていなかったのですが、
ある出来事をきっかけに「もしかしたら需要があるかもしれない」と思い始め、今回お試しで配布してみることにしました。

今回の配布にあたり制作したビジュアル

配布しようと思ったきっかけ

きっかけは、同じ研究室だったクラスメイトから「大分のキリシタンを扱う創作舞台の広報物にこのフォントを使いたい」とご連絡が来たことでした。

舞台が上演された会場
舞台が上演された会場

舞台となるのは豊後国(現・大分県)。
幼い頃からキリスト教を信仰していた主人公が、当時禁教令を出していた日本を逃れ、聖地エルサレムやローマを目指すまでの壮大な物語を描く、史実を元に練り上げられたオリジナルの創作舞台で、大分の文化行事のセレモニーの一環として上演されました。

和洋折衷感ある本舞台の広報物に、グラフィックデザイナーの方々がこちらの花形装飾フォントを広報物に素敵にあしらっていただき、
また舞台当日はデザイナーさんともお会いしてお話しさせていただいたりなど、私の中ですごく印象に残った出来事になりました。

舞台のフライヤー
舞台のフライヤー
舞台のパンフレット
舞台のパンフレット

デザイン:田中里佳、須藤史貴

こういった機会を作ってくれた方々に感謝しつつ、私もこの出来事を何かに活かそう!と考え、当時の論文などを引っ張り出して配布の準備を進めることにしました。

以下では、制作過程を振り返りながら本フォントについて紹介しつつ、また実際の使い方やダウンロード方法などをご案内していこうと思います。

概要

はじめに、「花形装飾活字」をご存知でしょうか。

花形装飾活字とは、活版印刷期(15世紀)にヨーロッパで誕生した蔓草花の図案を象った模様で、タイポグラファーや活字鋳造者たちによって作られ、当時の書物や活字見本帳を鮮やかに彩りました。

出典:『エンスヘデ活字見本帳』(リプリント,1993)
出典:『エンスヘデ活字見本帳』(リプリント,1993)

日本でも19世紀に活版印刷機の到来と共に輸入され、印刷技術の変遷とともに次第に馴染みは薄れていきましたが、 昨今ではそういった古典装飾への関心もあり、デジタルデータとして復刻されたり特集を組まれる事例も多いです。

しかし、こういった歴史的な意義としての紹介だけでなく、もっと新しい何かに応用(展開)できないかと考えた私は、次第に「現代日本に馴染む花形装飾」を探り始めるように。

そこで、花形装飾の伝統を受け継ぎつつも日本風にアレンジし、また活字からデジタル、すなわち現代の組版技術(DTP)として使用できるようフォントとして出力することにしました。

制作過程

「唐草文彩体」は、日本の古典装飾における蔓草「唐草文様」をモチーフとして造形を作っています。

唐草文様とは、「唐」つまり中国から渡来した植物文様であり、仏教装飾として多くの建築装飾や工芸品を彩りました。

また「文彩(ぶんさい)」という言葉には「文章に豊かな表現を与える」という意味もあり、まさに文字と共に用いるために誕生した装飾活字にぴったりだと思い、「唐草」と「文彩」を融合したフォントして「唐草文彩体」と名付けています。

■フォント(装飾)の造形

唐草文様のモチーフは様々な文献を元に、「法隆寺」や「東大寺」など、皆さんもご存知の建築装飾などを参考に造形を起こしています。

特に仏教的意匠である「宝相華(ほうそうげ)」は、蓮華・パルメット・牡丹などが組み合わさった空想上の花で、豊かな広がりが美しく本フォントでも多く取り扱っています。

参考にした建築装飾と花形装飾フォント例
参考にした建築装飾と花形装飾フォント例
出典:『日本の古典装飾―天平から江戸の時代様式にみる―』(2006)
『日本の文様⑨ 唐草』(1974)

■組版

パーツは大まかに「⑴ 罫線、⑵ 上下左右対照の花,幾何学、⑶ 左右対称の蔓草花、⑷ 大きめの正方パーツ、⑸ 長方形の蔓草、⑹ シリーズ」
6つのカテゴリーに分類され、組み合わせ方により文様のバリエーションを無限に生み出せます。  

花形装飾フォント「唐草文彩体」パーツ構成
花形装飾フォント「唐草文彩体」パーツ構成

例えば、外枠と内枠の間に草花を並列させたり、角や中央に複数のパーツを組み合わせたり、はたまた飾り罫や地紋として使用したりなど…
自由な発想で探求すればするほど、紙面の雰囲気に付加価値を生み出してくれるでしょう。

社殿や灯籠の形を象った花形装飾ユニット 「唐草文彩体」見本帳より
社殿や灯籠の形を象った花形装飾ユニット 「唐草文彩体」見本帳より

■見本帳

本研究で制作したフォントや組版は、最終的に「印刷指標+ビジュアルブック」をコンセプトに見本帳としてまとめました。

現物は現在自宅に1点しかないのですが、noteではフォントデータと合わせてこちらに収録している組見本やフレーム集も配布することで、参考として活用していただければと考えています。

フォントの使い方

Illustratorなどで使用する場合、【ウィンドウ→書式→字形】または【書式→字形】から「字形パネル」を開き、フォント名「唐草文彩体」を選択後、
ツールから「文字ツール」を選んでクリックしたのち、字形パネルから使用したい装飾をダブルクリックして入力してください。

同じ装飾を連続して使用する際は、コピー&ペーストで量産するのが早くて効率的です。

字形パネル、花形装飾フォント全種
字形パネル、花形装飾フォント全種

利用規約について

フォントや組見本を使用する際はクレジットの表記は不必要です。
個人/商用利用OKです。
フォントや組見本の著作権は、すべて制作者本人に帰属します。

<禁止事項>
フォントや組見本の複製、再配布、譲渡はご遠慮ください。

収録内容

【フォントデータ+ 見本帳に収録している組見本とフレーム集】のセット価格になります。

■フォントデータ

フォントはOpenType形式で、カテゴリー別の種類は以下になります。

カテゴリー別の種類
カテゴリー別の種類

■見本帳に収録している組見本とフレーム集

見本帳に収録している組見本とフレーム集を、そのまま使える(フォントのアウトライン前)データとしてセットで付属します。※一部例外あり

詳細は下記スライドと表をご参照ください。

収録内容
収録内容

※【巻末付録|フレーム集ポスター】は諸事情により一部アウトライン済データも含まれております。恐れ入りますがご了承ください。


また、フォントデータが2つ格納されておりますが収録内容に違いはありません。(フォントをインストールした際の表示がローマ字か漢字かの違い)

私が当時2つのフォントを混在した状態で見本帳を制作した関係で、恐れ入りますが組見本やフレーム集を流用する際は2つのフォントをインストールした上でご使用ください。

価格

通常1,500円(税込)のところ公開から3ヶ月限定で1,000円(税込)で配布します。
たくさんお手に取っていただけると嬉しいです!

期間:2022年12月14日〜2023年3月14日まで

【2023年3月15日追記】
→こちらの割引は終了いたしました。お手に取ってくださった方々、ありがとうございました!

ダウンロードは以下よりお願いいたします。

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180字 / 1ファイル

¥ 1,500

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