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【随時更新】DAOにおける意思決定プロセスを小学生でも分かるようにまとめてみた!

こんにちは!tenpapaです!
数週間ぶりの投稿になってしまいましたが、今回はDAOにおける意思決定プロセスについて、最近学んだことをまとめておきたいと思います。

DAOにおいて、どのように意思決定をするのか?は重要なポイントです。日本の選挙制度のように1人1票という意思決定プロセスにも出来ますし、DAOならではの意思決定プロセスを設ける事も可能です。

また、DAOではワンマン経営者のように、誰かがサクッと決めてしまう事は推奨されていません。

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という諺?をDAOの意思決定プロセスについて学んでいると頻繁に聞くのですが、DAOにおいてはメンバーからの意見の吸い上げと全員で決めている!という一体感が大事なのです。※したがって「自分でサクサク決めていきたい!」という人には「なんて遅いんだろう・・・」というようなもどかしさを感じる人は実際にいると思います(私も思っていましたが、既に慣れました)

今回の投稿では、DAOにおける意思決定プロセスに関して、8つの方法論を紹介していきたいと思います。

どの意思決定プロセスが良いのか?は、それぞれのDAOで異なりますし、もしかしたら複数の意思決定プロセスをMixさせるのが正解かもしれません。

今回の投稿が自身のDAOでの最適解を見つけるきっかけになれば幸いです!


Token Voting

このモデルではトークンの保持数によって投票権の数が決まり、最終的に最も票を獲得したアイデアが採用されるという伝統的な(歴史ある)意思決定プロセスとなります。

株式会社の株主総会もこのスタイルですが、このモデルのデメリットはお金持ち(トークンを多く保持する人)が力を持つ仕組みなので、トークンが平等に分配されるような仕組みが導入されていないと不平等を招いてしまいます。

Quadratic Voting

このモデルは、Yes-Noの投票ではなく、選択肢が複数ある際に活用できるものになります。

例えば、みんなでピザパーティーを開くとしましょう。ピザのトッピングを決めるときに、「チーズ」、「ベーコン」、「パイナップル」、「マッシュルーム」の4つの選択肢があります。各人が1票ずつ投票できるとしましょう。

しかし、一人ひとりの好みは同じではないですよね。たとえば、あなたはパイナップルが大好きで、それがないとピザが食べられないと思っているかもしれません。でも、他の友達はそれほどパイナップルにこだわっていないかもしれません。

ここでQuadratic Votingの出番です。このシステムでは、あなたは単に「パイナップルに1票」と投票するだけではなく、パイナップルへのあなたの愛を表現するために、例えば「パイナップルに4票」を投じることができます。でも、その代わりに16ポイント(4の2乗)を支払わなければなりません。つまり、あなたが本当にパイナップルを強く望んでいるなら、それだけのポイントを使って投票することができます。

一方、他の友達はそれぞれのトッピングに1票ずつ投じることを選ぶかもしれません。その場合、それぞれのトッピングに1ポイントずつ支払います(1の2乗は1なので)。

これがQuadratic Votingの基本的な考え方です。これにより、みんなの本当の意見や好みを反映することができ、一部の人々が強く望むもの(つまりは少数意見)が採用される可能性が高くなります。※下記のサイトでQuadratic Votingを簡単に試す事ができます

DAOでいえば、トークンを持って、自分があるアイデアに対して非常に自分の意見を反映させたい!と思ったら、その分のトークンを使用して表現する事になるのです。

Token Votingよりもトークンを持っている人の力が弱まるので、その分平等になりやすいという事です。

ちなみに、なぜ2乗なのか?と言う点については、下記のサイトに図を交えて解説がされています。

簡単に説明をするならば、2乗が3乗やそれ以上の高次元よりも「バランスが良いから」という事になります。

Square Root Voting

Quadratic Votingと同じ乗数の話であれば、Square Root Votingも有名です。

Square Rootは「平方根」の事を指すのですが、Square Root Votingでは投票の権利を平方根にすることで投票権の力を分散させようとするモデルとなります。

Token Votingでは、トークンを持っていれば持っているほど投票権があると説明しました。つまり、4のトークンであれば4、100のトークンであれば100を持つことになります。

それがSquare Root Votingでは平方根の投票権、つまり4なら2、100なら10になるのです。こうする事で、Token Votingでは巨大な投票権を持ってしまう人も、平方根の力で力が希薄化されて、少数意見も取り入れやすくなるのです。

Quadratic Votingと同じように見えますが、Quadratic Votingが何かに投票する時に自由意志において乗数の投票をするのに対して、Square Root Votingでは投票権がデフォルトで平方根になるので乗数の方向性が異なります。

Consensus Decision-Making

このモデルでは、全員が納得するまで話し合って意思決定をしていきます。具体的としては、こんな感じです。

例えばあなたがクラスの皆と一緒に遠足に行く場所を決めるとき、「動物園に行きたい!」と言う人もいれば、「美術館に行きたい!」と言う人が出てくるとします。

そのときに、「多数決」を使うと、一番票が多い場所に行くことになります。でも、これだと票が少なかった人たちはがっかりするかもしれませんね。

こんな時にConsensus Decision-Makingを使用すると、みんなが納得できる場所を探すことになります。

「動物園に行きたい人」も「美術館に行きたい人」も納得できる、「科学博物館」に行くことになるかもしれません。科学博物館なら、動物の展示もあるし、美術の展示もあるからです。

このように、Consensus Decision-Makingは全員が納得できる選択をする方法なので、時間がかかり意思決定が遅くなる可能性が高くなりますが、全員が納得感を得られるという点においては有効な方法です。

Futarchy

個人的に一番難解だったのがFutarchyでしたが、イーサリアムでも導入?検討?されている考え方なので、一番時間を使って理解に努めました。※気になる方は下記をご覧ください

Futarchyは、投票ではなく、将来の予測で決定を下すような新しい政府のシステムを提案した考え方です。この言葉は英語の"Future"(未来)と"Monarchy"(君主制)を合わせた造語です。

それでは、これを小学生でも理解できるくらい分かりやすく説明してみます。

Futarchyは、みんなが将来何が起こるかを予想して、それに基づいて決定をするシステムのことを言います。例えば、クラスでパーティーを開こうとなった際、ピザパーティーにするか、アイスクリームパーティーにするかを決めるとしましょう。

通常の投票であれば、ピザパーティーとアイスクリームパーティーのいずれが良いですか?と生徒の中で投票をして決めると思います。それをFutarchyでは、疑似的なお金を用意して、どちらが選ばれるのか?を予想して賭けを行います。

この「賭け」を行う事で、どちらになるのか?を本気で考えるようになりますし、それが結果的にクラスの全員にとって良い結果になるはずという考え方です。※例えば、それぞれの生徒にピザとアイスクリームのいずれが好きかをヒアリングしたりといった事です

これを聞くと、「ケインズの美人投票」を思い出す方もいるかと思いますが、僕の理解ではそれと似ていると考えています。

つまり、自分が良いと思うものではなく、みんなが選ぶものを予想し投票をするという事になり、結果的にDAOのコミュニティにとって最適なものになるだろうということです。

Futarchyのデメリットは、私も理解に苦しんだように(理解できているのかも不安ではあるんですが・・・)、理解がされにくい難解さが含まれている点が挙げられます。

Liquid Democracy

Liquid Democracyのモデルでは、ある意思決定をする際に自分自身で投票する事も出来ますが、誰かに委任をすることも出来るように設計されています。

またまたピザパーティーを例にとってみましょう。

ピザパーティーではどんなピザを注文するか決めることになりました。選べるピザはマルゲリータ、ペパロニ、ハワイアンの3つです。

この際の意思決定プロセスの一つの方法は、全員が「このピザがいい!」と投票をする方法です。しかし、皆がピザについて詳しくないかもしれない、または時間がなくてピザの選択を考える時間がないかもしれません。

他の意思決定プロセスの方法は、ピザに詳しい友達、たとえばピザマスターのトム君に全員が票を任せる方法です。トム君はピザについてよく知っているから、きっといい選択をしてくれるでしょう。これは代表民主主義に似ています。

でも、ある人はトム君が好きなペパロニピザが苦手かもしれません。また、別の人はピザについて自分で選びたいと思うかもしれません。

ここでLiquid Democracyが登場します。Liquid Democracyでは、各自が自分で直接投票をすることもできますし、自分の票を他の誰かに任せることもできます。さらに、その任せた人が自分に合わなくなったら、いつでも自分の票を取り戻すこともできます。

これにより、全員が自分にとって最良の選択ができるようになります。ピザを自分で選びたい人も、トム君に任せたい人も、または他の友達に任せたい人も、自分の意志を反映することができるわけです。これがLiquid Democracy、つまり流動的な民主主義の考え方です。

Holacracy

通常の会社は学校のクラスのように運営されていて、先生(これがCEOや上司にあたります)が何をすべきかを生徒(これが従業員にあたります)に指示します。先生が全てをコントロールし、生徒は先生が言うことを聞く、という形が一般的です。

しかし、Holacracyの会社では、少し異なります。それはまるで、生徒全員が小さなプロジェクトのリーダーのような感じです。それぞれの生徒(従業員)は自分の役割を持ち、それをどのように達成するか自分で決めることができます。そして、全員が互いに協力して全体の目標を達成します。

Holacracyの会社では、従業員は自分の仕事を自分で管理し、他の人から直接指示を受けることは少なくなります。それぞれが自分の役割に責任を持ち、自分の考えを自由に表現し、会社全体の意思決定に参加します。

したがって、Holacracyはまるで全員が小さなリーダーで、一緒に大きな目標を達成するために協力する学校のクラスのようなものと言えます。

Holacracyのデメリットは、自分で自分を管理できるという理想?に則っていますが、現実問題としてなかなか難しいでしょう。そのため、全員がHolacracyが目指している世界観を達成できるわけではないので、そのような人たちのフォローが必要になります。

Holographic consensus

Holographic consensusでは、規模が大きくなったDAOが直面する、「提案が多すぎて投票システムが機能しない(コミュニティ内の人が投票してくれない)」という問題を解決してくれます。

Holographic consensusでは、預け入れる人と投票をする人の2人が登場します。まず、提案を出す人が自分の持っているトークンを預け入れ(預け入れる人)を行います。そして提案を見た人が「これは重要な提案で、いずれは投票にかけられるだろう」という提案には、提案をした以外の人も預け入れを行うことが出来ます。

預け入れが増えてくると「注目を集めている提案」としてコミュニティ内のメンバーの興味を集めることが出来ます。「注目を集めている提案」は、そのDAO内で重要な提案だと考えられるので、実際に投票が行われます(投票をする人)。

投票が行われた結果、投票が通れば、ステーキングした分+通った分の報酬がトークンで支払われます。一方で、もし投票が否決されればステーキングされた分は没収されてしまいます。

この仕組みであれば、提案に預け入れをする人たちは「コミュニティ内にとって重要で、通るべきもの」を自分たちで探すことになり、DAOが良い方向に進んでいくというものです。

おまけ - Quadratic Funding

投票システムについてここまでまとめて来ましたが、Quadratic Fundingと呼ばれる資金調達の仕組みがあることを教えてもらったので、そちらも解説してみます!

Quadratic Fundingについては、下記の記事が詳しく解説してくれていますので、興味のある方は読んでみて下さい(英文)。

Quadratic Fundingを一言で説明するならば、Quadratic Votingの仕組みを資金調達にも転用した方法といえます。

Quadratic Votingの特徴は「少数意見が取り入れやすくなる」というものでした。Quadratic Fundingでも同様のコンセプトが適用されており、「少数の支援者が多い方が多く資金調達できる」というものなのです。

例えば、下の図を見て下さい。3つのプロジェクトがあったと仮定し、それぞれが既に1000ドルずつ支援者から資金調達をしているとします。

  計算式はこちらから

#1のプロジェクトは200ドルを5人から 、#2のプロジェクトは500ドルを2人から、#3のプロジェクトは50ドルを20名から集めています。

そして10000ドルの資金をそれぞれのプロジェクトに振り分ける際、「少額でも多くの支援者が集まっているプロジェクトに多くの資金が振り分けられる」という事になるのです。

上記の図でいうと、「Match Amount」と記載されている所をみると、#3のプロジェクトが合計で7407ドルで最も多くの資金を調達していることが分かります。これがQuadratic Fundingです。

一般的な資金調達では#2が最も好まれます。理由は支援者が少ない方が余計な口を挟む人が少ないのでプロジェクトを前に進めやすいからです。

しかし、Quadratic Fundingでは逆を取ります。つまり、多くの支援者がいる方が多様性を取り入れないといけない。それには多くの時間と体力が必要になる。だから多くの資金を提供しよう。というロジックなんだと思います。

おまけ2 - Retrospective Funding

(2023年9月9日追記)
Retrospective Fundingという新しい方法をJoiさんのweekly gmで知ったので、早速調べてみました!

Restrospective Fundingとは?

Retrospective Fundingを日本語訳すると「遡及的な資金調達方法」となりますが、全くどういうことか分かりませんよね?(笑)

下記で例を挙げて解説します!

Restospective Fundingの具体例

例えば1億円の資金調達がしたいとして、投資家としても「これは、プロジェクトが成功すれば社会的なインパクトが大きいぞ!」と見込まれるものがあるとします。

すると、創業者と投資家の思惑は下記のようになります。

・創業者:1億円を早く調達したいし、1億円投資してくれる!という約束を早く交わしたい!
・投資家:成功すればインパクトが大きいけれど不確実性も大きすぎる。最初から1億円を突っ込むのは嫌だな。。。

これを解決する一つの方法がRetrospective Fundingです。この手法では、事前に「こういう条件が達成できたら、これだけ追加で資金を提供するよ」という約束をしておきます。ただし、「最初は不確実性が大きいので、まずは1000万円からね」みたいな形を取るのです。

この形式を取ることで、創業者も投資家も、先に挙げたジレンマ?を解決することができるのです。

Restrospective Fundingが今まで行われてなかった理由

ここまでの話を聞けば「別にめちゃくちゃ新しい考え方じゃなさそうだし、これまでも出来たよね?」と思うと思いますし、私も感じました。

ここからは私の憶測でしかないのですが、Retrospective Fundingはやってもいいけどコストが掛かりすぎる手法だったと考えます。プロジェクトの進行の計測方法や資金提供の支払いのワークフローなど考えるだけでも「やった方が良いのは分かるけど、面倒だよね」となりそうです。

いま、注目されつつある背景とは?

これも私の憶測でしかないのですが、プロジェクトをオープンにして、そのオープンにしたプロジェクトをブロックチェーン技術で追えることで透明性が高まったのが1つ、そしてスマートコントラクトを用いて「ある条件が達成できたら支払う」ことにコストが掛からなくなってきていることは2つ目だと思っています。

スマートコントラクトの一番の分かりやすい例って自動販売機だと言われていますが、「100円入れたら、コカ・コーラが買える」というのが人の手を介さずに実施できます。
これをRetrospective Fundingでも、何か計測する指標をスマートコントラクトに仕組ませておいて、達成したらお金が支払われるみたいな事ができれば過去に遡っての評価と支払いが容易になるでしょう。

Retrospective Fundingについては、下記の記事でも解説されていたので、興味あれば読んでみて下さい!

まとめ

8つの意思決定プロセスについて、ChatGPTくんの力を借りながらまとめてみましたが、いかがでしょうか?

私も調べていて「Wow・・・こんなにもあるのねん」と思ったくらい、様々な意思決定プロセスが出てきました。

ちなみに、下記のリンク先にはシンガポール国立大学の学生が調べたDAOの意思決定プロセスの調査が記載されおり、今回カバー出来なかった投票システムも掲載されているようでした。

これらのことから理解できるのは、DAO運営の意思決定プロセスで「これ!」という正解は存在しない事&今後も様々な実験がされてくるだとうという事です。

私も可能な限りキャッチアップし、自分が属しているDAOに最適なガバナンスシステム(投票システム)を探していきたいと思いますが、もし皆さんも新しい情報があれば提供いただけると幸いです!

※2023/05/16、Holographic consensusを追加しました
※2023/06/02、Quadratic Votingが試せるサイトを追加しました
※2023/09/09、Retrospective Fundingについて追記しました

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