男の子は異星人

男の子は異星人

(さんさい 2018年6月号より転載)

大阪教育大学教育学部准教授 小﨑泰弘

第三回 言葉より体!

 生まれたての赤ちゃんの泣き声はとてもかわいいものです。それにより自分の感情を表しています。それが一歳ごろから喃語という言葉を発するように変わっていきます。最初は「あーうー」とかが、だんだんと意味を持ってきて「ワンワン」「ブゥーブゥー」などと、ものを指して名前などを言うようになります。そのあとは「ママあっち」「まんまいる」などと、自分の意思を伝えることや思いを言葉にしていくことができます。子供の育ちを強く感じる瞬間ですね。


 この言葉の出るタイミングにも、男の子と女の子では違いが見られます。保養所などでは、「男の子は口が遅い」という言い方をします。つまり、「発語」(最初の言葉)が、女の子と比べて遅い傾向にあります。女の子は言葉をうまく使い、そして、そのことにより自分の思いや感情、または、してほしいや嫌なことを、ある程度自由に伝えることができます。言葉によるコミュニケーションがうまいと言えますね。それが女の子は「おしゃべり」や「かしましい」というイメージにつながっていくのです。


 それに比べて、言葉の遅い男の子は、思いや伝えたいことはあるのですが、それが言葉にできにくい。自分の心の中に伝えたい思いや欲求はたくさんあるのに、それをうまく伝える方法を持っていないのです。そのために言葉ではなく、自らの行動で自分の思いを伝えます。


・何か欲しいときに「ちょうだい」と言えないので、奪い取る
・嫌いなものを「いやー」と言えないので、口から吐き出す
・好きな子がいれば、抱き締めに行ったりチューをしたりする
・うれしいときにうれしさを全身で表現して、踊り出す、走りまわる


 周りからすると、荒々しく、また乱暴に見えたり、とんでもない行動に思えますが、男の子的にはとても自然な行動であり、一つの表現方法なのです。つまり女の子と同じように自分の感情や思いを表現しようとするのですが、言葉より手っ取り早く自分自身の体を使うのです。


 分別のある大人から見ると間違った行動に見えますが、彼らはそれ以外の方法がよく分からないのです。もちろんそんなことをすれば、回りから怒られますし、止められたりします。しかしなぜ怒られているのか、止められているのかは、分かっていないでしょう。それほど当たり前の感覚だと思います。言葉をしゃべるように、奪い取るのです! まるで山賊のようなものです。
 だからそんな乱暴な男の子の行動を単に静止するだけではなく、そのときに「お口で言ってごらん」「これ欲しかったのかな?」など、言葉を使い良い行動を教えてほしいのです。行動より言葉の方が使いやすい、便利、分かってもらえるということに気付くことで、男の子たちは言葉をより積極的に、そして上手に使うことになります。男の子を育てるときのちょっとしたポイントですよ。


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