高円寺上京ものがたり(三)

多分、私のモテ期は終わった。


いや、終わるかー!
終わってたまるか。


というわけで、こっちー兄、コイパチ兄、マツノジョー兄さんの三人会で、前説をやった思い出。

何を喋っていいのかわからんかったけど、とりあえず、「今日は一人二席で、全部で六席です」と言った時の「お〜」という興奮と、「え?終電大丈夫かな」という不安を交えた客席。けど、その三人をすごく期待して見に来られてるんやなというのはすごく伝わった。

そのあと、音響と照明を担当していたが、途中でお手洗いに行きたくなったので、マツノジョー兄さんの時にトイレに向かった。
そしたら、ちょうど、戻ってきたコイハチ兄さんに出会い、「天使さん、マツノジョーさんは天才だから、絶対、今、聞いておいた方がいいよ」と。(いや、兄さんもトイレ行ってはりましたやん。あ、けど、兄さんはもう知ってるからいいのか?と心の中で突っ込んだ)

その場面をすごく鮮明に覚えていて、マツノジョー兄さんの今のご活躍をみんな既に心得ていたんやなぁと思う。

とにかく、皆さん、すごい熱量だった。お客様も含めて。
(私、内輪の人間なので、芸がどうのこうの言うと、支障が出そうなので言わないけど、ただ、素直に、今まで聞いたことない落語だったし、講談だった。ちょっと、「そこいくのか!!」と目から鱗だった)


それで、今の状況やし、なんか感慨深い。

「ほんまに、売れはったなぁ」って、いつも、マンションの上の階を見上げて思ってしまう。全然、関係ない人が住んでるけど。


そんな感じで、お三方が来られる時にお手伝いに行ったり、他の成金メンバーの羽光兄さんとも仲良くしてもらい、連雀亭のメンバーに入れて頂いたりして、東京にも一年に二回ぐらい行くようになり、結構、精力的に頑張っていたんだよなぁ。わたくし。

その頃は、まだ、あんまり東京で落語会やってる上方落語の若手はいなかったし。その時にもっと上手くなってたら良かったんかなぁ…

そうそう、モテ期じゃないけど、こっちー兄さんとマツノジョー兄さんが繁昌亭に出演した時、私もお手伝いに行って、その後トリイホールにみんなでタクシーに乗って向かったのよ。
運転手さんが「あれ?芸人さん?」みたいな感じで話をしてきて、そしたら、こっちー兄さんが「この人、天使さん。知ってる?」と聞いたら、「知ってるで。月亭天使さんやろ」って運転手さんが言ってくれたん。

ほな、車内が「おー」って盛り上がって、兄さんが「じゃあ、おまけして」って言ったら、端数をまけてくれたことがあった。

あの時が、一番、輝いてたわ、私。

いや、もっと輝く瞬間、これからもあるわ!!なくてたまるか!

ていうか、この記憶、ほんまかな。
え?もしかして、夢?


けど、今、全くご一緒することないし、しかも伯山先生の活躍ぶりを見ていると、皆さん、私のことなんかすっかり忘れてしまってるやろうなぁとつくづく思ってしまう。


そんな中、今週末、ほんまにほんまに久しぶりに、羽光兄さんと芸協の仕事でお会いすることになった。嬉しい。
最近は、閉塞感しか感じてなかったけど、久しぶりにあの頃のことを思い出したら、下手でもすべってても、お客さんが少なくても、全く注目されてなくても、あの熱量を自分の中で再現したいなと思う。

あー…羽光兄さん、私のこと、覚えてくれてはるやろか。


こんな写真出しても怒られへんかな…
まあ、昔、お客さんから送ってもらったやつやからいいよね笑

このスニーカーの色味、好きやったな。

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