ここのところ、というかここ数年でしょうか。世の中明るいニュースがなかなかない状況で、久々に明るいニュースが飛び込んできましたね。すべての歯車がかみ合わさり、結果的に最高のシナリオ。主演：大谷翔平、助演：その他全員。まさに現実はドラマよりもドラマチックだ。

にわか野球ファンの私でさえ優勝の余韻に浸っているなか、株式投資を始めた私としては気になるのは株価の動向。過去のWBCでも日本が優勝した際にはミズノやアシックスなどのスポーツ関連銘柄が上昇したらしい。

今回の優勝では直前でSVBの破綻など、大きな懸念材料が発生したこともあるのか、そこまで顕著な上昇等は生じていない模様。ところが、面白い事象がひとつ。「大谷工業」という金属加工の会社の株が急上昇しているのだ。

特別業績が良くなったわけではない、時代を動かすような発明をしたわけでもない。WBCの主役が同じ「大谷」翔平であることのみが、これまで底辺を彷徨っていたこの会社の株価を一気に約4倍に押し上げたのだ。

かつてかの有名な経済学者ケインズは「株価は美人投票だ」と言ったらしい。その人の性格が良かろうが悪かろうが、家事ができようができまいが、健康だろうがなかろうが、美人投票においては関係ない。美人だ、という一点において、人々は投票をする。そしてより美人な人に票が集まる。つまりは、株価が上がる。

各企業のファンダメンタルを分析したり、社会経済を勉強している人たちからすると、まったく馬鹿馬鹿しい話だし、そんなことで株価が大きく動くのではたまったもんじゃない、ということかもしれない。

ただ、これもまた真実なのだと思う。大衆の心理とはそういうものなのだ。それが市場を動かす。必ずしも練り上げられたロジックや、高尚なテクニックによってのみ、相場が決まるわけではない。だから面白い。