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『生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ』(国立近代美術館)

先日たまたま棟方志功の展示のチラシを見掛け、そう言えばの作品をしっかり観たことないなあと思い、行ってみることにしました。

志功は、世界的に権威のある現代アートの賞であるベネチアビエンナーレを受賞した世界的な版画家です。今回は、その志功の初の大規模な回顧展とのことでした。 

とは言え正直、今までの自分の持っていた志功のイメージは、高めの和食やホテルに飾られていたり、デパートや特産品の包装紙をデザインしたりといった感じでしたが…


実際の作品はと言うと…
展示の解説を読んだり、作品を観たりしていると志功の版画作品は、なんとなく3つの傾向がありそうだと感じました。
1つ目の傾向は、油絵を描きながら版画を作っていた初期の従来型の版画作品。
2つ目の傾向は、柳宗悦などの民藝運動をしていたメンバーからの影響を受けての版画作品。
3つ目の傾向は、独自の作風を確立して、巨大な作品を中心とした現代アート的な作品。
(あくまで、個人の感想です…)

意外な印象を受けたのは、初期の版画作品で、モダンで繊細な絵柄や色使い、近くで観ると、なんとも言えない滲みとか風合いでした。
この頃の小さな作品は、手に取って近くで見たり、回しながら観たりしたら、より魅力的なのだろうなあと思ったりしました。

今回の展示で、個人的に志功の木版画の魅力を感じたのは、黒くぶっとい線や大胆な黒い色面による造詣と、その黒い色面に透ける木目や滲み…
そして、黒い色面と対比するように配置された繊細に着彩された色面…
木版画なのに、油絵におけるマチエールのように感じる画面の質感。

そういえば、志功が芸術家を志したきっかけとなったのは、ゴッホのひまわりだったというのも、そういった意味で志功の作品に影響を与えているのかなあと感じたりしました。

基本的に人物画でも仏教関連の人物などをテーマとした作品はかなりの数があったのですが、キリスト教の聖人をモチーフとした作品も並んでいました。

観ていて、この黒い線や宗教絵画的な表現がジョルジュ・ルオーぽいのぶっとい黒い線の絵画と重なって見えたりもしました。ある種、精神性の追求のようなものを、絵を通して行うという作家性のようなが共通していることもあるのかなあと…

ただ、その後の志功の絵画が、より大きく大胆になっていって、よりオリジナリティが出て来て、あまりそういう感じはしなくなっていったりするのも、面白く感じました。

それから、作品からガーっと吐き出すようなパワーとかスピード感は、作品制を高めて独自の作風を作り上げていく原動力になっているんだろうなあと感じました。


あんまり作品とは関係ないのですが、棟方志向の作品を観ていると、トリミングしたい欲に駆られました。
作品の力強さをより強調するためのトリミングが出来ていると、よりこの版画の魅力が発揮されるのかもとも思ったりました。

https://www.momat.go.jp/exhibitions/553

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