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見たい夢が見たいのに

おーい!いぬうた市の、きゅん君、今、どこにいますかー!
と、探してみると、いました。いました。
きゅん君、今は、夢の中にいました。
あれ、何だか、キョロキョロして、
何かを探しているように見えますが、
どうなんでしょうか?
ちょっとこのまま様子を伺ってみましょうか。
「おかしいなあ。確かに、ぐーが言っていたけど。もし見たい夢があるんだったら、夢の国の入り口で、支配人を探せばいい。って。けど、さっきから探しているんだけど、そんな奴いないんですけど。見当たらないんですけど。これはまんまと、ぐーに騙されたのかなあ」
きゅん君、そう言って、ちょっと怒っているようです。
すると、そこにある方が、きゅん君の夢に、
登場しました。
それは支配人でなく、
「ぐーでしたー。きゅん、何か、ぐーのこと呼んだ?」
きゅん君の夢に、ぐーちゃんが現れました。
きゅん君、ぐーちゃんの姿を見て、あからさまに、
ゲンナリした顔に変わりました。
きゅん君としては、いつも現実世界では、
ぐーちゃんと四六時中一緒にいるので、
せめて自分の夢の中では、ぐーちゃんと離れて、
見たい夢が見たいと思ったのですが。
きゅん君は後悔しました。
その見たい夢を見る方法を、よりによって、
ぐーちゃんに相談したことを。
「僕がバカだったよ。ぐーに相談したら、ぐーが夢に出てくる確率も、そりゃ高くなるよな。だって、そこでも、ぐーを意識しているんだから」
「何ぶつぶつ言っているのよ。きゅんは。それより、きゅんは、夢の国の支配人さんを探しているんでしょ。だったら、ぐーも一緒に探してあげるわ」
と、ぐーちゃん、きゅん君に言って、
どんどん、自分の夢に介入してくる、ぐーちゃんに、
更にゲンナリする、きゅん君と、
そんなことはお構いなしで、他の者の夢の中に来れて、
興味津々でイキイキと動き回る、ぐーちゃんなのでした。
「きゅんの夢の中って、こうなってるんだー!全く、きゅんらしいわー。全体的に暗くてぼんやりしていてー。ぐー思わず笑っちゃうわよー」
と、ぐーちゃん、大はしゃぎです。
「余計なお世話だよ。それよりも支配人って、どこにいるのさ?ぐー、本当に探す気あるのかい?」
ある程度、あきらめて、きゅん君、
ぐーちゃんと支配人を探すことにしましたが、
やっぱり見つかりません。
なので、みるみると不機嫌になっていく、きゅん君です。
しかし、ぐーちゃんは、そんなことは気にせず、
きゅん君の夢の中でも絶好調にマイペースです。
「失礼ね。ぐー、さっきから一生懸命探しているじゃない。でも、こう暗くては探しようがないのよね。そこで、ぐーから提案があります。きゅんのこの夢じゃ、まだ支配人さんを探すまでの環境が整っていないから、これはまず、きゅんの夢の国の照明を明るくしたりとか、色も明るく塗り替えるとかの、大規模工事が必要と思われます。安心して。ぐーが工事も請け負ってあげるから。とにかく、ぐーに任せなさいっ!」
と、ドン!って前足で、ひとつ胸を叩く、
ぐーちゃんなのでした。
それを聞いた、きゅん君はますますゲンナリします。
これから当分の間、ぐーが僕の夢の中に現れるのかと。
くらくらする頭で、きゅん君は思いました。
そして更に思います。
そういえば、僕の見たい夢って、何だっけ?
と。
すっかりそれすらも忘れかけている、
きゅん君の夢の中の、きゅん君なのでした。

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