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水飲み場で涼む

本日の、いぬうた市は大変に天気が良く、
まだ午前中だというのに、温度も急上昇して、
今、きゅん君と、ぐーちゃんが来ているドッグランも、
ほとんど日陰がない状態で、他のわんこたちも皆、
暑さでだらけているのでした。
そんな中、ぐーちゃんはひとり元気で、
いっぱい走ったり、遊んだりしたい中、
その相方の、きゅん君といえば、他のわんこと同じく、
絶賛だらけ中で、ぐーちゃんには、
それがとても不満でありました。
「きゅーん!ぐーつまんないよー!一緒に遊ぼうよー!」
と、何かとちょっかいを出してくるので、
仕方なく、ちょっとだけ相手をしましたが、
もうダメです。
本当は日陰でゆっくり休みたいのですが、
それもないので、せめて水でも飲もうと、
水飲み場に来た時、素晴らしい場所を、
発見した、きゅん君です。
「おお、地獄にホトケとはまさしくこのことだ!僕は何て冷たい場所を発見したのであろうか!この暑苦しい世界において!」
きゅん君のいう冷たい場所、それは水飲み場の流しの部分が、
金属のアミアミで、きゅん君の身体が、
すっぽり入るくらいの大きさがあり、
そこがべらぼうに冷たくて気持ちが良かったのです。
定期的に水を流しているので、常に濡れていて、
そこにお腹をつけると、今まで暑かったのが、
ウソのように一気に心地よくなりました。
当然、そのオアシスに居続ける、きゅん君。
そこに、地獄から、地獄の使者、ぐーちゃんがやって来ました。
「きゅん、姿が見えないと思ったら、そんなところで何やっているのよ」
例によって、きゅん君に、ちょっかいをかけようとしますが、
「邪魔をするな。ぐー。僕はその灼熱地獄から奇跡的にオアシスを発見したんだ。でも、ぐーはその灼熱地獄でも元気でやっていけるんだろ。ならば達者で暮らせ」
と、きゅん君、ぐーちゃんの相手を、
今度は断固拒否しました。
しかし、ぐーちゃんはあきらめません。
「ぐーをバカにしないでよ。暑さに鈍感なような言い方して。ぐー、だって、暑いけど、我慢して遊んでいるんだからね。それよりもそこがそんなに気持ちいいんだったら、独り占めはよくないわ。ぐーにも譲りなさいよ」
と、何とか、きゅん君を退かそうとしますが、
きゅん君は、アミアミにドカンと寝そべり、
「イヤだね。退かないよ。ここは僕が発見したんだ。だから、ここの所有は発見者の権利として僕にある。残念だがあきらめろ」
と、ガンとして退こうとしない、きゅん君です。
そのうち、さすがの、ぐーちゃんも、お手上げとなり、
「もう、いい!ぐー、ひとりで遊んでる」
と、何処か別の場所に行ってしまいました。
「おっほほほ。これでよい。やっとこさで邪魔者は消え、僕のオアシスにようやく平和が訪れた。なのでこれから僕はこのオアシスを十二分満喫するとしようぜよ。納涼。納涼」
しかし、その、きゅん君のオアシスライフは、
すでに終末を迎えていたのです。
というのは、この水飲み場、きゅん君がいたせいか、
しばらく誰も水を流さずにしておいたので、
あっという間に金属のアミアミは乾き、
乾くと逆にすぐ熱を吸収して、
一転、ものすごく熱いアミアミに変貌したのです。
なので、突如、きゅん君、叫び声を上げました。
「熱っ!熱っつ!熱っつつつ!熱っつ熱っ!」
と、叫んで、飛び跳ねた、きゅん君なのでありました。

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