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お返しに舐める

いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんには、
独自のお礼の方法があります。
それは例えば、ママなどが、いい子いい子と、
撫でてくれた時のあとなどに、
ママ、ありがとう!という気持ちを込めて、
撫でてくれた手の甲を、ペロッ!と舐めるのです。
すると、ママはそれが嬉しくて、
それからもっと、撫でてくれたりするのです。
「あっ、そうなの?ママ、僕の、ペロッ!が嬉しかったんだ。それは今まで気付かなかったよ。だいたい僕自体、ペロッ!っと、ママの手を舐めたりするのも、ほとんど無意識だったりするんだけどね。でも言われてみれば、確かにママ、嬉しそうな顔をしてくれているね。僕が、ペロッ!っとすると」
と、きゅん君もとっても嬉しそうです。
「ぐーは知っていたわ。きゅんみたく、知らずにやっていたなんてことはないもの。だから、ぐーは、ママが喜んでくれるのが、また嬉しくて、また更に、ママにペロッ!として、またママがそれで撫でてくれて、しばらくはその繰り返しよ」
ぐーちゃん、それはさぞかし幸せな時間ですね。
しかし、ぐーちゃんの話を聞いた、きゅん君に、
対抗心がメラメラと湧いてきました。
「ぐーがいっぱいママに舐め返すんだったら、僕はその倍、いやもっともっとママを舐めてやるー!」
きゅん君が、そうゆうと、ぐーちゃんも、
あとには引けません。
「おあいにくさまね。きゅん。でもその前に、きゅんが舐めた以上に、ぐーがママを舐めているから、きゅんはいつまで経っても、ぐーには敵わないわ」
と、まあ、かくして、きゅん君、ぐーちゃんの、
ママをどっちがいっぱい舐められるか?合戦が、
ここに勃発したのです。
でも、おふたり、これでは、
もともとのお礼という意味がすっかり何処かに、
飛んでいってしまってはいませんか?
と問うても、ふたりの耳には届いていない様子で、
それからというもの、昼夜を問わず、暇さえあれば、
ママにくっつきまくり、主に、きゅん君が、
ママの右手を、ぐーちゃんが、ママの左手を、
ペロペロと舐め回す毎日であります。
この状態を、ママは笑いながら受け入れてくれていますが、
問題はこの、ふたりで、
「この勝負、絶対、ぐーには負けない!」
「ぐーが、きゅんに負ける訳がないわ!ぐーには見えている。ぐーがお勝利した時に上げている雄叫びさんが!」
と、完全に、きゅん君も、ぐーちゃんも、
一歩も譲る気はさらさらなく、
だんだんどんどんエスカレートして、
しまいには、
「僕、この頃メンタルがおかしいなあ。何でだろう?」
と、妙に疲れた顔の、きゅん君がそう言えば、
同じく、ぐったりしている、ぐーちゃんも、
「ぐー、何だか最近疲れて仕方がないのよねえ」
とこぼす有様で、おふたりストレスで、
自分で自分の身体までも舐め回し、
毛繕いし始めた近頃なのでありました。

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