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家は城なり

ある日のこと、いぬうた市の、きゅん君は、
自宅の1階のダイニングルームにある窓辺に立ち、
外を見ながら、横にいる、ぐーちゃんに、
とうとうと何かを語っていました。
「いいか、ぐー。家は城だ。外にあふれている、あらゆる危険なモノから、僕たちを守ってくれる、ありがたい場所だ。しかし、ただ僕らはその恩恵に甘えて、のほほんと過ごしていてはダメだ。というのは、外にはたくさんの敵もいて、いついかなる時も、隙さえあれば、我が家に入り込もうとするからだ。そこで僕らは、その敵らから、家を守らないといけない。それが僕らの仕事であり使命である。全ては、この家という城、ママという城主を守るためである。分かったかな。ぐー」
どうやら、きゅん君は家を守るのが仕事だと思っているようで、
それを、ぐーちゃんに教えたのですね。
その使命感は結構ですが、何だか行き過ぎたことに、
ならなければいいのですが。
「分かったわ!きゅん。ぐー、一生懸命、このおウチとママをお守りするわ。ちょっとでも、このおウチに入ってこようとする方がいらしたら、ぐー、問答無用で、有無をいわせず、立ちどころに、噛み散らかしてやるわ!」
案の定、ぐーちゃんは変な気合いが入ってしまいましたね。
しかし、きゅん君もそれを感じたらしく、
今度は、いさめ、たしなめます。
「いやいや、それではダメなんだ。それがこの仕事の難しいとこだが、この家に入って来ようとする者の中には、ママの荷物を運んで来てくれる親切な宅急便の人とか、それこそ、ママの大事な友人とか、友好的な人もかなりいる。僕らはそれを瞬時に判断して行動に移さないといけない。仮に友好関係の人に突然ガブリとやったら、これは大変なことになる。ママがぺこぺこと頭を下げないといけなくなるとこを、僕らは見なくてはならなくなるんだ。それは何とか避けないといけない」
ここでひとつ、きゅん君、呼吸を置きます。
「しかし、しかしだ。それが本当に敵だった場合、敵か否か?の判断に迷っていると、その間に敵の侵入を許したり、逆に僕らがガブリといかれる可能性も大いにある。そこが大変に難しい。ひとり言えることは、常に緊張感を持って、外部の様子を伺い続けること。これが僕らがやらないといけないことなのだ」
ここで、きゅん君、深く息を吐きました。
やっと話が終えたようです。
ぐーちゃんに伝えたいことは全て伝え切ったようで、
きゅん君の顔に満足の色が漂いました。
その、きゅん君に対し、一方の、ぐーちゃんは不満顔です。
「何かめんどくさいわ。おウチにいらっしゃる方を、一瞬にして、敵さんか、味方さんか、見分けるなんて、まず、ぐーには無理」
そうこぼす、ぐーちゃんに、きゅん君が、
更にアドバイスをします。
「だったらいい方法がある。噛むかどうか、決める前に吠えればよろしい。吠えるくらいだったら、のちのち味方と判明しても、まあ、可愛いわんちゃん!と多めに見てくれるし、僕らが吠えてびくついたら、その人物は怪しいから、その時は改めて噛むがよかろう。何故なら、この犬好きのママは犬嫌いの人とは友達にならないから、訪れることはない。だから、僕らが吠えて、びくつく人は敵だと思って間違いはないのだ」
と、そうよく分からない根拠を元に、堂々と対処法を、
ぐーちゃんに伝授した、きゅん君です。
これには、ぐーちゃんも、
「分かったわ!ぐー、どなたか来たら、がんばって吠えて、噛むー!」
と、納得の表情です。
なので、皆さん、万が一、きゅん君と、
ぐーちゃんの家に行って、ふたりに吠えられた場合、
間違っても、ビビった顔などしてはいけませんよ。
したら最後、すぐさま、ガブリと来るでしょうから。

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