サカナクション 「834.194」を考える その1

ようやくサカナクションの「834.194」について書いていきます。 当然今回では全てを語り切ることはできないので、今回はその第1弾ってやつになります。あとで書いていますが、この作品は時間をかければ、かけるほど違う「表情」を見せるのでないかと考えていることもあって、これからも長く考えていくことになるとは思いますが、良ければお付き合いください!


ちなみに、「834.194」を初めて聴いた時の感想はこちらに書いています。よければ、こちらもどうぞ!

まず断っておくと、今回これを書くにあたって、アルバムのリリース以降のインタビューやレビューは「あえて」全く読んでいません。その理由としては、作り手や他者の意見を交える事なく、「純粋」に自分の考えでこのアルバムと向き合いたかったというのがあります。

また、これを書き終えて、それらの記事を読んだ時にどのくらい僕自身の考えと、山口一郎の考えが重なったのか、もしくはそれがズレていたのかを確認する答え合わせも楽しみたいなぁと考えていることもあります。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここから「834.194」について書いていきます。今回は、「834.194」というタイトルそのものについて考えていきます。以下、今回の目次です。

1.「闇夜、行くよ」は「答え」ではない

2. 「834.194」という「余白」

3.今回のまとめ


1.「闇夜、行くよ」は「答え」ではない

今回のメインテーマがこれです。山口一郎自身が「闇夜、行くよ」と偶然読めると話して以来、この読み方が決まりみたいになっているが、まずはそれをひっくり返したい。

明確にアルバムの名称が決まっていない。それが何よりも新しい。これまでの作品を振り返ってみると、毎回の作品には必ず明確なテーマがあり、それにふさわしいタイトルとその読み方が定められてきた。だが、今回は「834.194」という数字が並べられただけだ。「札幌」と「東京」へというコンセプトは提示されているものの、それを支える「名前」の読み方が明確に提示されていない。 そんな読み方の「欠落」に注目したい。


2.「834.194」という「余白」

僕自身、この「欠落」を「余白」として考えてみたい。アルバムタイトルに「余白」が存在し、僕らリスナーがそこへ様々な言葉を当てていく、そんな時間こそ今回のアルバムを読み解く上で重要になってくるのではないだろうか?

詳しくは書かないが、彼らがこの作品をリリースするまでは確かに「闇夜」の中を歩くような険しい道のりだった。そんな状況を顧みると、「今」は「闇夜、行くよ」と読むのがふさわしいと思う。

だが、5年後はどうだろうか?10年後、いや、100年後はどうだろうか?このアルバムはいつまでも「闇夜、行くよ」と言えるような作品であり得るだろうか?もしかすると、このアルバムを上回るような作品をサカナクションは生み出すかもしれない。現時点でこのアルバムを「闇夜、行くよ」と定めてしまうと、これからも変わらず「闇夜、行くよ」のままである。だが、明確な名前を定めないからこそ、この作品はこれからの時代の中で様々な名前を持ち、作品としてアップデートされ続けるのではないだろうか?

そして、そんな名前をつけるのは作り手であるサカナクションだけでない。僕らリスナーにだって、この作品をどう名付けるかという「自由」が与えられているのである。与えられた「余白」に対して、言葉を当て続けていく、そんな中でこの「834.194」は様々な形に生まれ変わり続けるのだと僕は考えている。だからこそ、この作品を「闇夜、行くよ」と決めてしまいたくはないのである。

長い時間の中で、作品に触れ、そこで得たものをきっかけに考え、「余白」を塗り潰していくこと。そんな行為が、僕らリスナーには求められているのではないだろうかと僕は考えている。

では、そんな僕自身が今この「834.194」をどのように読むのか、捉えるのかというと、読み方は正直言ってまだ分からない。ただ、「闇夜、行くよ」と読むほど、「闇夜」へ向かっている気がしないのだ。僕は、ここにサカナクションというバンドの「今」と「未来」が強く刻み込まれていると考えている。そう、彼らはこの「834.194」に「今」と「未来」という2つの路線を描いている、そんな風に僕はこの作品を受け取っている。


3.今回のまとめ

今回は、アルバムの内容というよりもその名前の意味について考えてみました。明確な読み方が決められていないからこそ、僕らはそこに言葉を当てていくことができます。次々と言葉を当てて、様々な作品の「表情」を見つけ出していく、そんな行為がこの作品には求められているのではないかということを今回の結論とします。

次回は、

・刻み込まれたサカナクションの「今」と「未来」とは何か?

について考え、書いていきます。以上、寺基千里でした。



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