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ENERGY CURRENCYとゲゼル貨幣との比較

エネルギー通貨とは、再生可能エネルギーを利用して発行される電子通貨のことで、その仕組みや再生可能エネルギーとの関連性が注目されています。ゲゼル貨幣という減価する通貨の概念も、NHKの番組「エンデの遺言「根源からお金を問うこと」」で取り上げられました。今回の記事では、エネルギー通貨の仕組みについて詳しく解説し、ゲゼル貨幣との比較・議論を行います。

エネルギー通貨の基本的な仕組み エネルギー通貨は、再生可能エネルギーを利用して生成される電子通貨で、kWH(キロワット時)を単位として発行されます。再生可能エネルギー発電者が余ったエネルギーを貯蔵し、その貯蔵エネルギーを担保としてエネルギー通貨を発行することができます。この仕組みにより、エネルギー通貨は、エネルギー市場における新しい価値を生み出すことができます。また、スマートフォンやクラウド技術を活用することで、エネルギー通貨の取引や管理が容易になります。デジタルツイン技術も活用し、送電ロスや貯蔵ロスを最小限に抑えることができます。


1930年代、ドイツのシュヴァーネンキルヘンで、炭鉱のオーナーであるヘベッカーは、雇用と炭鉱経営の継続を目的として、石炭と交換できるスタンプ紙幣「ヴェーラ」を発行しました。この紙幣は、ライヒスマルクで担保されるという約束がありました。ヴェーラは、地域の商店や卸売業者、生産者による取引に利用され、経済循環の輪が広がり、失業の脅威も地域的に減少していきました。これは再生エネルギーではありませんし、ゲゼル通貨の実践として発行されましたが、化石エネルギーによるエネルギー通貨の例といえます。


ゲゼル貨幣は、経済学者ゲゼルが提唱した減価する通貨の概念で、一定期間ごとに価値が減少するよう設計されています。発行日より一定期間経つと、定額のスタンプを貼らないと使えないようになっています。これにより、消費者の購買意欲を刺激し、消費や投資を促進し、経済活動を活発化させることを目的としていました。。

オーストリアの町ヴェルグルで町長のウンター・ グッゲンベルガーが1932年に,現金と交換できるスタンプ貨幣「労働証明書」を発行しました。この「労働証明書」により公共事業の賃金,町の職員の給与の半分の支払い,地方税の受け入れなどに用いることとしました。結果として町の財政赤字を削減し,減価に伴うスタンプ料は貧困者 救済の財源とした。このスタンプ紙幣は,一般の貨幣 の14 倍の流通速度で流通したようです。追加の貨幣発行により需要が創出された効果で町の経済は急速に復興しました。他の地域からもこの 制度導入のための見学者が訪れ,200もの町で同様の証明書発行の計画がされました。ドイツ中央銀行は通貨発行の独占権を行使し,こうした「緊急通貨」発行 を禁じました。裁判に至りましたが,最高裁 で敗訴しました。

エネルギー通貨とゲゼル貨幣の共通点は、経済活動の持続可能性を向上させることを目指している点です。また、どちらも通貨の価値を現実の資源にリンクさせることも共通しています。ゲゼルはゲゼル貨幣を最終的には農産物を生産する土地とリンクさせることを考えていたようです。これは当時の重農思想に基づくものです。

エネルギー通貨はエネルギーの実物と直接リンクしているため、環境への配慮や持続可能なエネルギー消費を促進する面で、ゲゼル貨幣とは異なる特徴があります。

エネルギー通貨の導入により、再生可能エネルギー発電者は安定した収入を得ることができ、エネルギー販売の柔軟性も向上します。また、エネルギー通貨は、電力需要のピークを抑制し、電力網の負荷分散に役立つことができます。さらに、消費者にとっても、エネルギー通貨を使用することで、環境に配慮した選択肢が増え、持続可能なエネルギー消費を促進することができます。

エネルギー通貨の普及には、いくつかの課題が存在します。まず、エネルギー通貨の価格安定性が懸念されています。再生可能エネルギーは天候や季節によって発電量が変動するため、貯蔵されたエネルギー通貨の価値も変動しやすくなります。この問題を解決するためには、複数の再生可能エネルギー源を組み合わせることで、安定したエネルギー供給が求められます。またエネルギー貯蔵の技術であるバッテリーや水素の技術の発展も必要です。また、エネルギー通貨の取引や管理の仕組みがまだ十分に整備されていないことも課題です。エネルギー通貨の取引所やウォレットサービスを開発・普及させることで、エネルギー通貨の利便性を向上させる必要があります。

エネルギー通貨は、再生可能エネルギーと密接に関連した電子通貨であり、持続可能なエネルギー消費を促進する可能性があります。エネルギー通貨が独自の価値を持つことがわかります。しかし、価格安定性やインフラ整備といった課題が残されており、これら問題を解決することがエネルギー通貨の普及につながります。
将来的には、エネルギー通貨の発展により、地域レベル、国レベル、世界レベルでのエネルギー資源の効率的な活用が可能になることが期待されます。また、環境への配慮を重視する消費者のニーズに応えることで、持続可能な社会への移行を加速させることができるでしょう。

エネルギー通貨とゲゼル貨幣は、それぞれ異なるアプローチで経済活動の持続可能性を向上させようとしていますが、どちらも新しい通貨のあり方を模索している点で共通しています。これらの通貨が、現代社会における経済や環境問題への解決策として、さらに発展することに期待が寄せられます。