少林寺拳法と空手

小さい頃、プールとかピアノとかメジャーなタイプの習い事に漠然とした憧れがあった。
理由はちゃんとあって、一般的な日常生活を送っていればあまり触れることのないマイナー習い事をしていたからだ。

それが少林寺拳法。
しかも何個かのうちの一つではなく少林寺拳法一筋。一本道。
それを4歳から13歳までの9年間習っていた。
ただ6年生の時に142cm 37kgというピチレモンのキッズモデルの平均みたいな体型だった僕は、黒帯を巻いても全く様にならなかった。

少林寺拳法をやめてしばらくたった大学生の頃でも178cm 57kgという背を高くしたカラテカ矢部みたいな体型だったけれど、久々にやりたいなとふと思い道場をGoogleマップで探したことがある。
近くで唯一出てきたのは空手道場だった。
まぁ似たようなもんだろうと体験の申込みをした。

当日道場に足を踏み入れると、

「こんにちはッ!!」

とんでもないデシベルの挨拶が飛んできて、そこには織田裕二似のおじさんが立っていた。この時点で、あっ違うかも!と思ってしまうほど幸先の悪い出だし。

そこから道場のざっくりとした概要や入会における条件のようなものの説明があった。
ただ入会するには乗り越えなければいけない壁はいくつかある。
まずは時間、そしてお金だ。

当時学生で圧倒的夜型だった僕は、夜中までやっていなければ通うことは難しいなと思っていたし、平日は講義と課題で割と忙しかった。早速、どんな日程で教室は開かれてますか?と聞いたところ


「24時間いつでもいいですよッ!!」


訳がわからなかった。

詳しく聞いたら、LINEで先生に連絡をして空いていればいつでも教えてくれると言う。たとえ夜中の3時だろうと。

詳しく聞いても訳はわからなかったけれどとにかく時間の制約はクリア。
よしとしよう。
次はお金だ。もちろん学生、金はない。
しかも24時間対応してくれるなら結構いい金額すんじゃね?とビビりながら金額を聞いた。


「月3000円ですねッ!!」


訳がわからなかった。part2。

怪しい匂いすらしてしまう金額。
入会して1ヶ月くらいしたら浄水器とか売り付けられんちゃうか疑う金額。
ほんでこれ買ったら紹介料で3万円のキャッシュバックがあるから5人に紹介したら実質無料だよとか言われて。

不安は拭えないけれどひとまず金額の壁もクリア。オールグリーンだ。
入るかどうかはさておき、とりあえず体験教室を受けることになった。

まずは準備運動から。
力士のように四股の姿勢ですり足をしながら進む動きを教えられた。
これが基礎の動きで力士の体幹の強さはここからくるのだそうだ。準備運動の相場って屈伸とかだよなあと思いつつ四股歩きをする。

「はいッ、これを30分しましょうッ!!」

ん???
……30……だと?
ウソ……だろ……??


思わずBLEACHの破面編で一護が、強すぎるウルキオラが十刃の中ではNo.4だということに絶望した時のリアクションがでた。

ちなみにBLEACHのキャラの中ではドルドーニが好き。ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ。
ヒトを見掛けで判断してはいけないし、チョコラテは此処に置いて行かなきゃいけないし、鬼にならなきゃいけない、ニーニョは。

話を戻して、初見殺しの四股歩き30分にしっかり息があがってしまった僕は、もう帰りたいくらいだった。

「ここからは実戦に近い形で指導していきますッ!!」

途中で逃げ出すわけにも行かず、体験は続く。

「攻撃されて反撃する時に、ボクシングのフックみたいにしちゃダメですッ! これだけで良いんですッ!!」
と先生はさっきの四股の要領で掌底を腰あたりからグッと突き出した。


、、、ほんまか?

嘘つけよみたいな顔をしてしまっていたからか、では寺内さんに向けて実際にしてみますので体感して下さいという流れになってしまった。

先生が対面に立って四股掌底を僕の胸目がけて打ってきた。

食らった瞬間息が完全に止まった。
ッオオウ!!とアザラシの鳴き声が僕の喉から出た。親アザラシが小アザラシを守る時のやつ。

地面に倒れ込んで悶えてる僕と満足そうに仁王立ちする先生。

そこからの記憶は曖昧やけど、そこからその道場には行ってません。

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