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危険な糸

これは、わたしが動物看護師をしていた頃の実話です。


2010年10月
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昨日の出来事。

緑色の液を吐いてぐったりしていたパピヨン。診察で異物を食べた可能性があり、診察の途中でそのまま緊急手術になった。

異物の場所は胃か腸か…
胃ならある程度なら内視鏡で取り出せる。
もし腸なら、どの部分か特定しないといけないし、閉塞していたらだいぶ厄介で一刻を争う。

内視鏡か開腹か迷ってる時間はない。

皮膚と皮下組織を電メスで切開
皮膚と脂肪が焼ける。焼き肉屋さんのような、匂いと少しのけむり。

皮下組織を焼き切ると、プルンとした
みずみずしい腹膜が現れる。

正中線に沿ってジョキジョキ
腹膜の中に収められていた腸が溢れ出してくるのをガーゼで抑え、腸を辿ってゆき、少しずつ外へ出して異常がないか確認する。

!!!!!

あった。ここや!!

なんじゃこりゃぁ!!!

腸がアコーディオンみたいにヒダが寄って閉塞(へいそく)の状態になっている。
危険な状態だ。すぐに開腹して良かった。

そして腸を少し切開したら、糸のカタマリが顔を出した。取り出すため少し引っ張った。

すごい抵抗がある、取れない…。

なんでや。

プチンとそこで糸を切って、カタマリを取り出した。糸が突っ張っていたから、どこかに引っ掛かっているのか。

口から内視鏡を入れて確認したところ、胃の中に糸が残っていたが、詰まりそうなものではなかった。

異物なので取り出す。
糸を内視鏡の先のカンシで挟み
胃→食道→口へとゆっくりゆっくりと
引き出していく。

もうすぐ終わると思ったその時、
糸が口の中で何かに引っかかっていて、取りだせなかった。

なんでかな。

口の中をもう一度確認してみた。


なにこの光景、、、、、

長い長い釣り糸が舌の裏にめり込んでいた。
血も出ていない。細い細い糸だから見えにくいし、気づきにくい。

これに気付いた時、
糸が突っ張っていた謎がとけた。

恐ろしいことに食べてしまった糸の一部が口内に引っかかったまま腸まで達して、糸によって引っ張られて腸がアコーディオン状に寄ってしまった。

この子、痛かったやろなぁ…
麻酔で少しは楽になってるんかな…

手術前にも口をガーっと開けて確認したけど、舌の裏の奥の奥までは見えておらず、その時は分からなかった。喉に近い部分から、結構裂けていた。

ちょっと見たぐらいでは分からないぐらい、深い部分。

最後の糸が引っかかったから、分かったようなもので、排泄されるだろうと内視鏡で糸を取り出してなかったら、気付かずに手術が終わっていたのかな…と思うと怖い。

舌の裏、左右共に開いた所を縫いあわせ、手術は無事終わりました。

胃や腸を切開すると3日絶食になるので、しばらく入院ですが、早く元気になって欲しいです。

舌を裂いてしまうほどの強い糸。
釣糸は溶けたり無くなったりしない。

鳥海の生き物が釣糸とは知らずに食べてしまうことだってあるし環境問題にもなっている。

最近は自然に還る糸もあるらしいが。
一部の心ない人が、釣糸を川や草むらに捨て、草にからまってゴミになる。

『出したゴミは持ち帰る』
当たり前のことが出来ない人がいる。
特に草むらは、拾い食いに注意が必要です。

飼い主のお父さんの趣味は「釣り」
どうやらその釣り糸を口にしてしまったようです。

犬、猫に限らず動物を飼っている飼い主のみなさま、くれぐれも誤飲にはお気を付け下さい。

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