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監査法人のパートナーになってみて意外だったこと

てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。

監査法人の職員(一年生からシニアマネジャーまで)にとって、パートナーの生態はよく分かりません。上に行くほどパートナーと接する機会は増えますが、ずっと一緒にいるわけではないので見えない部分が結構あります。

私がパートナーになったときに驚いたことを5つにまとめます。

パートナーの中の最下層に入る

パートナーは監査の責任者であるとともに、監査法人の経営層にいる人たちです。職員から見ると経営層の中がどうなっているか、よく分かりません。

パートナー限定のミーティングに初めて出席すると気づきます。自分がこの集団の一番下であることを。
ほかのパートナーは元上司や先輩ばかりです。法人に入ったときからパートナーだった人もいます。

それは、中学三年生が進学して高校一年生になったような気分でした。これまで職員の筆頭として、シニアやスタッフを従えていたのが、気づいたら最下級生。
もっとも、それほど上限関係は厳しくなかったので、同僚の中の先輩、後輩くらいでしたが。

監査以外の仕事が意外と忙しい

「経営層」だけに、法人運営のいろいろな仕事が容赦なく回ってきます。
職員のときも回ってきましたが、数が多いのと、いきなり「責任者」になるところが違います。

パートナーとしての初仕事は、法人主催のボランティアのリーダーでした。
会計士は忙しくて参加できず、法人の管理部門や会計士をサポートする人たちと一緒に公園のごみ拾い。最後に、皆さんをねぎらうご挨拶をして終了です。

意外と部下のことを考えている

親の心子知らずと言いますが、上司が部下のことをどう思っているか、部下からは分かりづらいものです。

監査法人も同じで、職員のときは「パートナーは現場の負担のことなんて何とも思ってないだろう」と信じて疑いませんでした。ところがパートナーになってみると、パートナー同士で意外と職員の話をすることが多かったので驚きました。
現場にかけている負担のことや、職員一人ひとりの体調、モチベーション、昇格について話しています。
もっともパートナーの中だけで話していても、職員に伝わらないのは当然なんですが。

職員、特にシニアマネジャーやマネジャーに負担をかけていることは分かっているので、「今、声をかけると迷惑じゃないだろうか」「ちょっとお願いしたいことがあるが、無理だろうか」などと非常に気も遣っていました。

サインするこわさ

日本では個人名でサインすることもあり、一番最初の監査報告書にサインするときは、一瞬手が止まりました。
ここにサインすることで、最悪のケースでどんなことが起こるのか、と考えてしまったからです。
しかし、業務執行社員を拝命し、監査手続は終えて、審査も終わっているので、「やっぱりやめた」などと言えるタイミングではありません。あきらめてサインしました。

たとえが適切かどうか分かりませんが、監査報告書へのサインは、自動車の運転のようなものだと思います。
今から運転することで、大事故を起こしてしまい、自分の人生を棒に振ってしまうかもしれません。発生確率は低いですが、最悪のケースのインパクトは甚大です。
最初は最悪のインパクトを考えて手が震えますが、次第に発生確率の方に意識が傾いて、すいすいサインするようになります。

現場が見えないこわさ

パートナーは、確かに法人運営に関する情報は多く、法人の行く先については、職員よりも遠くまで視界が広がっています。その代わり、調書を作ってくれているスタッフたちとの間に階層があるので、現場の情報が少なくなります。
おそらくマネジャーの皆さんも、シニアやスタッフだったときと比べて、現場のことが分かりづらくなると思いますが、それに輪をかけた状態です。

その中で判断することは、非常にこわいことです。
判断するために必要な情報はすべて目の前にあるのか、自分はすべて理解しているのか、自分が判断することによってどのような影響が起こりえるのか。

もちろん、必要であれば、調書を細かくレビューし、マネジャーに聞いたり調書作成者に聞いたり、あるいはクライアントから直接聞いたり資料を見せてもらったりすればよいのですが、そうすると時間がかかってしまいます。

私はパートナーになりたてのころは肩に力が入っていたこともあり、気合いで即決して失敗することがたびたび。その都度、マネジャーに迷惑をかけたり、先輩パートナーにおさめていただきました。

おわりに

パートナーというと、自信満々で隆々としているイメージを持たれているかもしれませんが、私は結構どたばたしてきました。
また機会があれば、パートナーの生態について書いてみたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄かTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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