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【監査法人の海外駐在】海外駐在員の仕事

監査法人などプロフェッショナルファームから海外に派遣されるときに、一番駐在員らしい仕事は「ジャパンデスク」だと思います。「ジャパンデスク」って、どんな仕事なんでしょうか?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

これまで、海外経験をいろいろな記事でお勧めし、また監査法人で海外派遣に選ばれるための方法をお伝えしてきました。

今回のてりたまnoteでは、実際に海外で担当する仕事についてお話しします。


お伝えしたいこと

今回お伝えしたいことは、次の2つです。

  • ジャパンデスクの仕事は、よろず相談窓口

  • 海外日系クライアントの駐在員は、どう対応してよいか分からない困りごとが多いことが背景にある

監査法人から派遣された私の経験から書いていますが、コンサルティング、税務、法務などほかのプロフェッショナルファームにも共通していると思います。


ジャパンデスクの仕事

ジャパンデスクって何でしょうか? 以前、会計人コースWebに寄稿させていただいたときに、次のように説明しました。

日系クライアントのよろず相談窓口です。クライアントの漠然とした困りごとを切り分けて、各担当者に投げ、結果をまとめてクライアントに返します。クライアントと現地メンバーとのコミュニケーションのサポートも行います。

教えて!てりたま先生「会計士監査」のちょっといい話
Episode2 ― 海外で働くということ
会計人コースWeb

ファームによって、「コーディネーター」と呼んだり、単に「駐在員」と呼ぶなどさまざまです。
分かりやすいと思うので、ここでは「ジャパンデスク」と呼ぶことにします。

まずは「よろず相談窓口」の中身をご説明しましょう。

ありとあらゆる質問に対応

「よろず」というだけあって質問の幅は日本にいるときの比ではありません。
私が担当していたときには、次のような質問を受けました。

  • 会計
    「経理がぜんぜん分からないのですが、繰延税金資産の回収可能性について教えてもらえませんか?」

  • 監査
    「監査チームから親会社のサポートレターを取れと言われたのですが、サポートレターって何ですか?」

  • 税務
    移転価格税制の対応って、何をやればいいんですか?」

  • IT
    会計システムを入れ替えたいのですが、日系企業がよく使っているシステムは何ですか?」

  • 人事
    「営業部長から、昇格・昇給してもらわないと今の仕事は続けられないと言われたのですが、ほかの会社はどうしてますか?」

  • 法務
    「今度雇う人が二重国籍を持っているそうで、何か問題はありますか?」

  • その他
    「日本から家族を呼び寄せるんですが、学校の手続はどうやればいいんですか?」

ありとあらゆるクレームに対応

ジャパンデスクとは関係ないのですが、香港から日本に戻るときの話。乗るはずだった飛行機がキャンセルされました。
乗客の大半は日本人で、香港の係員が説明したときは皆さんたいへんおとなしく聞いていて、英語で質問する人も穏やかでした。
ところが日本人の係員が現れたとたんにエキサイトして、クレームの集中砲火を浴びせていました。

英語を話せない人は仕方ないですが、話せる人も日本人には物が言いやすいんだなと思いました。

同じことはプロフェッショナルファームからの駐在員にも言えます。
現地のパートナーの話はニコニコして聞いているのに、私だけになったとたんに怒り出す人もいました。
「私のような駐在員がいない方が、クレームが少なくなってファームにとってよいのでは…」と自虐的になったことも。

コミュニケーションのサポート

海外ですので、日常のコミュニケーションは日本語以外の言葉が中心になります。

でも、クライアントは、英語を話せる人が多く、話せない場合は通訳を置いています。このため、言語のサポートは通常は必要ありません。
現地のチームメンバーと一緒に親会社の偉い人に会うときに、通訳をするようなことはありますが、例外的です。

それでも、言語以外のサポートを求められることがあります。
大きくは次の2点です。

  • 文化的なサポート
    相手の言っている言葉の一つひとつは聞き取れたが、何を言いたいのか分からない、ということはよくあります。(日本語でもありますけどね)
    話し手の文化的な背景や、場合によっては個人的な背景を踏まえてかみ砕いて伝えることが必要になることがあります。

  • 専門的な内容の理解の手助け
    よく知らない分野のことを外国語で理解するのはたいへんです。
    先ほど例に出した「繰延税金資産の回収可能性」を会計に詳しくない人に説明するのは、日本語でも難しいですが、外国語になるとほぼ不可能でしょう。


ジャパンデスクのニーズはどこにある?

「ジャパンデスク」なるものが必要とされるのは、日系クライアントに日本から駐在に来ている人たちが困っているからです。

ある程度の規模のある子会社でないと、経理、人事、IT、法務などに一人ずつの駐在員は置けません。
一人で管理部門を全部担当したり、日本から赴任した社長が直接見ていたりします。

そうすると、専門外のこともたくさん担当しないといけません。現地で詳しい人を採用するにも、予算の制約があるため、外部に頼ることになります。

また、日系クライアントの駐在員は、本社からのプレッシャーを常に受けています。
海外では、親会社では想定できないようなことが日常的に起こります。ネガティブなサプライズになることが多く、そのたびに「駐在員のお前がいて、どうしてこんなことになるんだ」と怒られます。

そんな事態を避けるために、日本語で質問できるプロフェッショナルファームの駐在員はとてもありがたい存在です。
いざというときに、「事前に専門家のアドバイスは受けていたのですが」と言い訳に使えたりもします。(あまり使ってほしくないですが)


おわりに

てりたまnoteでは、ことあるごとに海外派遣を進めておきながら、海外での仕事の中身をあまり説明してきませんでした。

今回から何回かのシリーズでお伝えしていきたいと思います。
これを読んで、海外を目指す人が増えるといいなと考えています。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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