見出し画像

「絶対に失敗したくない」病への3つの対策

今回はシンプル。「絶対に失敗したくない」と思っていると適切な判断ができませんよ、という話です。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

先日、「駐在員になるメリット・デメリット」という記事を投稿しましたが、これに対してHiRockyさんから次のようなリプをいただきました。

確かにそうだなあと思いました。
駐在員を目指すかどうか迷っている人は、メリットとかデメリットとか考えはじめると判断がつかず、駐在に行けなくなってしまうかもしれません。

適切な判断をするために必要な情報を集めることは基本的にはよいことですよね。
ただし「どこかにあるはずの正解」を探し始めると、決められなくなってしまいます。さらに「絶対失敗したくない」という気持ちがあるとなおさらです。

「絶対失敗したくない」の裏側には、何があるのでしょうか?


「絶対失敗したくない」病の裏側❶
メリットはたいてい不確実だが、デメリットは確実

メリットもデメリットも確実であれば、判断は難しくありません。
ただ、そんなことは珍しく、判断が求められる場合はたいていはメリットの方が不確実です。

例えば、企業の設備投資。
多額の支払いが最初に来ます。これがいわばデメリット。
一方、設備を取得して得られる利益には不確実性が伴います。

もっと身近な例でいうと、同じ趣味を持つ人の飲み会に誘われたときはどうでしょうか? でも、ほとんど知らない人。
参加する費用がかかるし、時間も取られます。知らない人に囲まれて、終わったら相当疲れているでしょう。
これに対してメリットは? すごく楽しいかもしれないし、友だちができるかもしれない。でも、そうでない可能性もあります。


「絶対失敗したくない」病の裏側❷
損失回避バイアス

人は、「得したい」気持ちよりも「損したくない」気持ちの方が大きい。

あなたはコイン投げのギャンブルに誘われました。
裏が出たら、1万円払います。
表が出たら、1万5千円もらえます。
このギャンブルは魅力的ですか? あなたはやりますか?

これは行動経済学でノーベル経済学賞をとったダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』から抜粋したものです。(金額は、イメージしやすいようにドルから円に変えています)

皆さんはそろばんをはじくまでもなく、このギャンブルには参加する方が得だと冷静に考えられたかもしれませんね。
しかしカーネマン教授らの調査によると、たいていの人は「1万円損するかもしれないなら参加したくない」と考えるそうです。
あなたも実際に1万円払わされる可能性があれば、結果は違ったかもしれません。

日常の意思決定でも、得することよりも損することの方が大きく見えることはよくあります。結果的に損失を回避するように行動し、一歩が踏み出せない、ということになります。


では、どうすればよいのか?

「絶対失敗したくない」病はどのように防げばよいでしょうか?

  • 「正解」を求めない
    迷っている段階で、絶対的な「正解」はないことがほとんどです。それなのにもっと情報を求めたり、思案することに時間を使うと無駄に判断を遅らせるだけになります。

  • 損失回避バイアスを思い出す
    目の前にはプラスの情報もマイナスの情報もあると思います。両方を公平に見ているつもりでも、マイナスの方に過大な重みづけをしてしまっていませんか?

  • 最悪の事態を考えてみる
    とは言え、無謀な判断をして破滅的な結果を招くことは避けないといけません。最悪の場合、どんな事態になるのでしょうか? 可能性は低くても万一のことが起こってしまった場合、その最悪の事態を受け容れることはできるでしょうか?


おわりに

監査人という商売柄もあって、私自身はかなり保守的で慎重な方だと思います。今回の記事はそんな自分への戒めの気持ちで書きました。

ただ、ときどきは好奇心の方が大きくなり、目をつぶって一歩踏み出すことがあります。
そんなときは「では、どうすればよいのか?」に挙げたようなことを考えていました。

ということで、今回の記事の中で肝心の「では、どうすればよいのか?」はノーベル賞学者の打ち出した理論ではなく、残念ながら私が考えたことです。
何の権威もないですが、皆さんの参考になれば幸いです。

ところで、バナーの絵はいつも「いらすとや」を使っているのですが、「実験に失敗した博士の絵」はどこかで使った記憶がありました。

この記事は、失敗がこわくて前に踏み出せない人に向けて書いたものです。よかったら合わせてお読みください。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?