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30年前の監査って、こんな感じ【監査ガチ勢向け】

監査の昔話を聞きたいという人がいたので、昔の監査を思い出して書きます。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

私が会計士補として監査業界に入ったのは1989年。もう35年も前なんですね。
どうりで1989年の話をすると「まだ生まれていません」という反応をもらうことが増えるはずです。

十年ひと昔と言いますが、30年も経てば大昔。今日はそのときのことを思い出して書こうと思います。

「連結情報」

当時は単体決算が主、連結が従、という取り扱いでした。
決算発表も、単体を先に、連結を後にする会社が主流。両方を同時に発表する会社のために「連単同時発表」という言葉もありました。

有報提出時期は今と同じ(ただし、必ず総会後)でしたが、有報には単体の情報しか入ってなかったんです。

連結決算については、有報提出期限から一か月以内に「連結情報」という書類を財務局に提出していました。3月決算では7月末ごろの提出になります。
連結計算書類もなかったので、商法監査(今の会社法監査)の対象は単体のみ。連結情報提出まで、連結決算に対する監査意見の表明はありません。

監査現場では、単体の監査が終われば、やれやれ山を越えた、という感じで打ち上げなどしていました。
その後、ダラダラと連結の監査をするわけですが、「まあ、しょせん連結だから」となめた態度で気楽にやっていました。

ちなみに、私が子どものときに「ロシア」と言うと日露戦争を思い起こさせるレトロな響きがありました。「ソ連」を誤って「ロシア」と言おうものなら「お前は何時代の人間なんだwww」と爆笑を誘います。今や「ソ連」がその対象なんでしょうね。

有報に連結が取り込まれるとすぐに「連結情報」はそんな雰囲気の言葉になりました。

時代が下って中間決算から四半期決算に衣替えしたあと、「半期報告書」もそんなレトロな響きの言葉になります。(金融機関や非上場の有報提出会社は半期報告書を出していたので、この世からなくなったわけではなかったですが。そういう意味ではソ連の中に「ロシア共和国」はあったので同じことだったかも。長い注ですみません)
これからは、「四半期報告書」がその扱いになるんでしょうね。。


パソコンの導入

私が新人の頃は、調書はほぼ手書き。
そこに「ラップトップパソコン」なるものが登場し、監査現場でも使いはじめたころです。

「ラップトップ」とは「ひざ上」ということですが、重量は10kgほどもあり、本当にひざの上に置くと足の血が止まりそうになります。(ちなみに今私が使っているLet's noteは1kg弱です)

ハードディスクがないモデルもあり、その代わりフロッピーディスクのドライブが2つありました。
フロッピーディスクを知らない人もいると思いますが、約9cm四方のプラスチックケースに入った記憶媒体で、そのままディスクドライブにさして使います。1枚で格納できるデータ量はたったの1MB強。
はじめてハードディスクがついたときの容量は20MBで、フロッピーディスク20枚分も何を覚えさせるんだと衝撃を受けました。

インターネットもなく、クラウドもない。クライアントからデータを入手するという発想もない。
そんな中でのパソコンの用途は、「きれいに素早く表を印刷する」でした。

調書が手書きだと、前期調書にある表は丸写ししないといけません。
表のフォーマットだけ作っておいて、コピーして数字を書き込むようなことはやっていましたが、前期の数字は転記が必要。
それも面倒なので、どんどん右側に紙を足して当期の数字を書き込んでいきました。その長い長い紙を何度も折ってA4サイズに収めるので、「巻物のような調書」と呼ばれていました。

そこでパソコンが登場。Lotus 123という表計算ソフトで前期調書をコピーすれば、あっという間に当期の表ができます。
それをプリントアウトして、コメントは手で書き込むのが当たり前。コメントも表計算ソフトに打ち込むと、ちょっと先進的な感じでした。
しかし、なかなか画面で見たとおりに印刷できないので、紙と時間を果てしなくムダにしながら、パソコンの導入ははじまりました。

おわりに

「昔話なんか興味あるかなあ」と思いながら書きましたが、いかがでしたか? 3つか4つ話すつもりでしたが、長くなったので続きは別の機会に。

会計士noteクリエイター仲間である「電子の海に潜む闘魂」さんがまだ電子の海に潜伏しておられたとき、note上のコメントのやり取りで、こんなご意見をいただきました。

そうそう、せっかくですから「お題」のご提案です。思い出話シリーズを書きましょう!

個人的に、昔の現場はこんな感じだったみたいな話は、なぜ今がこうなのか、という事を考えたり、納得したり咀嚼したりするうえで、結構大事なんじゃないかと思っています。歴史を学ぶ意義みたいなことかもしれません。なので多少乱暴な主観であっても語り継いでいこうという気があるのです。

そういう点では、てりたまさんからは、きっともっと深いリアルなフレーバーを感じる体験談が出てきそうだなと勝手に思っている次第です。楽しみだなあ。

改めてコメントを読むと、もっと監査の中身のことを期待されているような気が…… 「どうやらおまえは、おれが何を言っているのか、微塵も理解していないようだな。」とお叱りをいただきそうです。
気を取り直して、次回の案を練ることにします。
さあ、皆さんは仕事、仕事。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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