その1秒をけずり出せ

箱根駅伝が好きだ。大学生という子供から大人になろうとしている青年たちが、母校のプライドをかけぶつかり合う様に毎年感動している。

エンターテインメントとしても、とてもうまくできているように思う。先頭争いだけでなく、シード権争い、そして繰上げスタートと余すことなく面白い。捨てるところがないのである。鯛みたいだ。

私は、基本的には父の母校である中央大学を応援しているが、東洋大学も好きな大学の一つだ。理由は単純で、監督の酒井さんが好きだからだ。

酒井監督自身も東洋大出身の箱根ランナーだったのだが、主将を務めた4年生のときにメンバーに入れず、走れなかった過去がある。その際の悔しさがあるから、メンバーから外される思いが痛いほど分かるそうだ。箱根を走った経験も走れなかった経験もしているからこそ、選手からの信頼も厚く、「酒井節」とも言える「ドS」の檄にも選手は応えてくれるのだと思う。

東洋大学のスローガンにもなった「その一秒をけずりだせ」という言葉がある。これは、2代目山の神こと柏原竜二選手を要しながら、21秒差で総合優勝を逃してしまった87回大会(2011年)の反省を受け、掲げられた言葉だ。1人で21秒縮めるのではなく、部員全員が1秒を大切にし、1秒にこだわることでチームの和を強くしようというのが狙いだそうだ。僕はこの言葉が大好きで、仕事や勉強で苦しいときにもけずりだせる「1秒」があるはずだと自分に言い聞かせている。2020年は、より一層この言葉を胸に、仕事、プライベートの1秒をけずりだしていきたいと思う。

今年の往路の東洋は2区の相澤選手の空前絶後の1時間5分台、5区宮下選手の意地の区間新があったにも関わらず、11位に沈んでしまっている。しかし、東洋がこのまま終わるわけはない。11年連続総合3位以内の底力、1秒をけずりだせる底力に期待したい。

(中央大のシードにも期待している)

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