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#1427 非認知能力の育て方

中山芳一さんの『教師のための「非認知能力」の育て方』を読んだ。

今日は、その書籍からの学びを整理していく。

「非認知能力」とは、ペーパーテストで測れるような認知能力ではなく、心・人間性・人格・社会情動的スキルのような客観的に把握することのできない能力を指す。

そこには、様々な種類の能力が含まれる。

そこで本書では、以下の3つの括りで非認知能力をまとめている。

非認知能力群
①自分を高める力:意欲・向上心、自信・自尊感情、楽観性など
②他者とつながる力:コミュニケーション力、共感性、社交性・協調性など
③自分と向き合う力:自制心、忍耐力、レジリエンス・回復力など

そして、上記のような非認知能力は、「人格」に関係するものであり、後天的に育成可能であるとしている。

なので、「気質」「性格」とは異なるわけである。

また、非認知能力育成のためのピラミッドが存在する。

それは
①気質・性格・基本特性
②価値観
③自己認識(自己客観視と自己調整)
④行動特性(習慣化)
⑤行動
で構成される。

このうち、教師は②③④に働きかけることが重要である。

非認知能力というものは、他者からの押し付けではなく、子ども自らの意識で伸ばしていくものだ。

そのために
①教師による直接的な意識づけ
②教育活動における間接的な意識づけ
が必要になる。

そして、チームで非認知能力を育成する5ステップを紹介している。

それは
①チャンクダウン
②フィードバック
③ギミック
④アセスメント
⑤リフレクション
である。

以下に、その詳細をまとめていく。

ステップ1:チャンクダウン(抽象的な教育目標から具体的な行動指標へ)

チャンクダウンのためには
①学校教育目標を
②非認知能力③行動指標に具体化していく必要がある。

このように抽象的な目標を、具体化(言語化)することで、目指すべき指標が明確化するのだ。

逆に言えば、抽象的な目標をチャンクダウンしなければ、「絵に描いた餅」になってしまうのである。

また、行動指標の並べ方には
①並列(水平)
②段階(垂直)
の2種類があることを付記しておく。

ステップ2:フィードバック(日常的な見取りとフィードバックで意識づけ)

教師による「意識づけ」には、子どもに与える「直接的な意識づけ」と学習や行事を仕組むような「間接的な意識づけ」がある。

そのうち、直接的な意識づけは以下の2種類である。

①ほめて伸ばす:ほめポイント(意識づけポイント) ※同じ方向へ
②注意してなおす:注意ポイント(意識づけポイント) ※違う方向へ

そして、教師が上記のようなフィードバックをするためには、子どもを適切に見取っていかなければならない。

見取りの構成要素としては
①気づき
②読み解き
③意味(価値)づけ
がある。

その際に、育成を目指す非認知能力と関連する「自分と向き合うレンズ」「自分を高めるレンズ」「他者とつながるレンズ」を活用することが重要だ。

このようなレンズを教師がつけることで、子どもの見取りの質が向上するのだ。

また、子どもを見取ったあとのフィードバックには2種類ある。

①即時的フィードバック
②適時的フィードバック
である。

このようなフィードバックにより、「価値の強要」ではなく「価値の共有」をするのである。

さらに、いつも教師が子どもを見取ってフィードバックするのではなく、子ども自らが自身を見取ってフィードバックすることも必要だ。

そのため授業前に、意識のスイッチオン(我慢orやる気orつながり)をし、どのような非認知能力を意識するかを自己選択・決定する。

そして、子ども自らが自身の学習の様子を見取り、フィードバックを行うのである。

ステップ3:ギミック(意図的な仕掛けと感情への働きかけ)

ギミックとは、教師が子どもに教育活動という刺激を与え、子どもをそれを意識して学習活動を進めていくことを指す。

ギミックも3つの非認知能力に関連し、
①自分と向き合えそうなギミック
②自分を高められそうなギミック
③他者とつながれそうなギミック
を用意することができる。

ギミックには以下の三要素がある。

①ねらい・意図
②空間・教具・活動
③感情の動き

この要素を教師が意識し、意図的に仕掛けを用意していくのである。

また、最強ギミックとして「PBL」が紹介されている。

そして
①発見②解決③省察のような
「AARサイクル」を盛り込んだPBLこそが
真の最強ギミックなのである。

PBLの分類には
①内発的×校外
②内発的×校内
③外発的×校外
④外発的×校内
があり、

PBLの段階にが
①パーソナルプロジェクト
②グループプロジェクト
③スクールプロジェクト
④ローカルプロジェクト
⑤ソーシャルプロジェクト
がある。

ステップ4:アセスメント(量的×質的な振り返りと定期的な自己評価)

子どもは毎日、何らかの「体験」をする。

しかし、それが「経験」「学び」となり、非認知能力が育った状態になるには「振り返り」が必要となる。

体験から学びへの流れは以下の通りだ。

①体験 → 振り返り →
②経験 → 振り返り →
③学び → 意識と行動→
④成長・変容

このような振り返りを軸に学びを進めていく。

OECDでは、振り返りを軸にした学びを「AARサイクル」として紹介している。

また、振り返りの生かし方として、以下の流れが重要となる。

①単元(授業)前に伸ばしたい非認知能力や行動指標を決める(意識のスイッチオン)
②単元(授業)中に振り返る
③単元(授業)終了後に振り返る

このように
①1時間単位の振り返り:ログ(記録)
②単元単位の振り返り:アセスメント(評価)
を繰り返していく。

この「リフレクション:行為後の振り返り」を続けていくことで、
「メタ認知:行為中の振り返り」ができるようになるのだ。

メタ認知ができるようになると、行為中に自分の様子をモニタリングしたり、修正・改善していくようなコントロールをしたりすることができるのである。

さらに、振り返りには質の構造がある。

それは
①出来事
②内的状態・思い
③理由・原因
④方針・見通し
である。

このような振り返りの質を子どもに意識させ、振り返り力を鍛えていくのである。

ステップ5:リフレクション(反省的実践者としての教師自身の省察)

最後に、教師は反省・省察をすることが重要となる。

教師の実践においても、以下のAARサイクルを回していく。

①方針:発達課題の発見、課題の要因分析、方針の明確化
②実行:子どもの見取り、実践の客観視、実践の修正
③省察:評価から課題と成果の明確化、課題設定の吟味、今後の方針の明確化

また、教師も子どもの教育のための「環境の一部」であると考えることが必要だ。

なんでもかんでも「子どもや親のせい」にするのではなく、「もっと自分にできることはなかったのだろうか?」と省察する。

つまり、「自分を変える」という姿勢が求められるのである。

このような反省的実践を繰り返していくことで、子どもの非認知能力を徐々に育成していくのである。


以上が、非認知能力の育て方の概要である。

ぜひとも、この学びを生かし、子どもたちの非認知能を育てていきたい。

では。

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