見出し画像

みんなが憧れる丁寧な暮らしは 宮崎県にあった

都会の時間はせわしなく流れ、田舎の時間は錆びついたように動かない。
両方のいい所取りなかなか叶わないものだ。

今回、宮崎を訪れる機会に恵まれた。せっかくなので宮崎の生活を知りたい。見聞きしたことと調べたことで、宮崎の生活を覗いてみたいと思う。

(ピーチ航空のホーダイパスを使って、宮崎県を訪問しました!)

画像8

宮崎の不思議な空気感

宮崎駅から歩いて10分くらいの場所に「蚤の市」というバーがある。1970年代はじめから営業している由緒正しいオーセンティックバーだ。

「バブルの時はこの辺もすごかったんですよ」とバーのマスターは言っていた。「県庁と市庁で働いてる人がねえ、5時のサイレンが鳴り終わる前にバーに流れ込んできたんだよ」

今でもお客さんの多くは公務員だが、当時ほどの勢いはないのだという。「若い人はみんな、働く場所と遊ぶ場所がいっぱいある福岡とか東京に出て行っちゃうんだよねえ」とマスターは笑う。

1時間くらい相手してもらって、店を出たのが9時くらい。バーが位置する宮崎随一の歓楽街「ニシタチ」は、がやがやしていた。キャッチのお兄さん達と2軒目を探す人たちで溢れかえっている。

それでもキャッチに呼び止められることもない。夜9時を回って掻き入れ時なのに、キャッチのお兄さんたちは客を求めるでもなくのんびりと構えている。そういえば人々の歩くスピードも少しだけ遅い。人口密度的には歌舞伎町っぽいのに雰囲気は夜の温泉街みたいというか、なんだか街全体がゆっくりしているように感じた。

とはいえ宮崎が活気のない街なのかといえば、全然そういうわけではない。ニシタチには人が溢れているし、駅前の大通りにしても夜遅くまで人気が絶える気配はなかった。

酔い覚ましも兼ねてスーパー銭湯に立ち寄る。もう10時近いから貸切に近いのかなと思っていたが、30~40代の人たちと彼らに連れられた子どもたちで賑わっていた。

実際、宮崎の街からは勢いを感じた。次の日、早起きしてその辺をぶらぶらしていると、地方にありがちな空き家はほとんど見受けられない。住宅街はある程度新陳代謝が進んでおり、築30~40年の家に混じって新築物件が建てられている。

一見すると元気がある印象だ。それでいて、どこかゆっくりしたところも感じる。不思議な街だなあと思う。

画像2
画像3

やわらかいうどんと、新鮮な食材

宮崎の人は、朝うどんを食べると聞いた。地元の人たちが通っているお店があるらしい。

(ちなみに、九州のうどんは日本一おいしいと思う。これはもう、体験したことのない方はぜひ試してみてほしい。コシのないヘタレ具合が最高に愛おしい。)

南宮崎にある「おくのうどん店」を訪れた。魚介系のダシが濃厚で、凝縮された海の香りが印象的だ。

あと、一味唐辛子との相性が抜群にいい。丸のままの種が入った一味をうどんに掛けると印象が一気に明るくなる。うどん屋さんにきて一味唐辛子をやたらと褒めるのは少し気が引けるが、これには本当に感動した。ただの辛味調味料としてテーブルに備えているお店も多い中、ダシの香りを全力で引き立てる組み合わせが考えられている。ああ、宮崎の人は食べることに本気なのだなと感じる。

こちらのお店だけではない。とにかく、宮崎のご飯は美味しい。その美味しさには2つの理由があると思う。1つ目は作り手さんの技術と執念であって、これは朝食ですでに実証されている。もう1つ、素材がめちゃめちゃ良い。

スーパーがあったから立ち寄ってみると、店頭に並べられた野菜の大きさがおかしい。そして嫉妬するほどに、お肉やお魚のクオリティが高い。

どの棚を見ても、朝採れの野菜とか目が透き通った小顔の魚とか、朝に絞めたばかりの鶏肉がめちゃめちゃ美味しそうに並ぶ。ナンコツ、鶏皮、砂肝、ハツ、レバー、もも肉のぶつ切り。みずみずしいのにドリップが溜まっていない鮮度感は、これはもうここでしか買えない。

移動よりも大切なこと

スーパーを見学したあと、ちょっと移動したいなあと思ってバスに乗る。宮崎滞在中はバス移動が多かった。

宮崎の都市圏は道路沿いに伸びている。

スポット間の距離が恐ろしく長い(だから歩けない)ことに加えて、鉄道路線と無関係に発達しているから電車移動もあまり有効ではない。宮崎駅の乗降客数は3,762人/日とあるが、これは40万人が暮らす宮崎市の中心駅としてはかなり少ない。宮崎県では、線路ではなく道路に沿って人が流れていることが予想される。

学生さんやお年寄りに混じって、僕もバスで動き回っていた。珍しいことに、20代、30代の人々も結構バスを利用している。

人の乗り降りが多いから、バスはやたらと遅延する。15分くらい遅れたバスはその遅れを気にしない丁寧な運転を心がけているから遅延幅は広がる一方だ。車内のみなさんはしかし、気にしている様子はない。県民性みたいなものがあるのだろうか、そういえばタクシーが急加速や割り込みをしないのも宮崎ならではの光景だと感じた。

ちなみに、宮崎県は車社会と言われるが、全国的に見れば必ずしもそういうわけではない。1世帯当たり保有台数は1.28台であり、全国ランキングで29位とむしろ中下位に位置する。

要するに、宮崎の人はあまり移動しない。

電車はあまり使わない。車はそんなに多くない。その分バスが多用されるわけでもなく、県としてはバスの便数が少ないことを課題として考えているくらいだ。

大都市に住む僕たちが移動時間をせっせと捻出する中、宮崎の人はどういう暮らしをしているのか。宮崎県のWebサイトによれば、「共働き世帯における夫の家事関連時間」は日本一長いのだという。

電車の中で無為にスマホを触る時間を、家のことに充てているらしい。豊かな時間と魅力的な食材を使って、おいしいご飯をつくる。宮崎の生活はすごく丁寧だ。

もちろん僕だって牧歌的な生活を想像しているわけではない。それでも暮らしぶりの丁寧さは垣間見えるし、宮崎っていい街だなと素直に思った。

画像4
画像5

(この一味がとにかく美味しいの…!)

画像6

(バスをひたすら待つ)

旅をするより住みたい宮崎

繰り返しになるが、宮崎県においてはスポット間の距離が恐ろしく長く、難しい。たとえば渓谷で有名な高千穂までは車がなければ相当行きづらい。比較的近いと言われるモアイ像(@日南海岸)だって、1時間に1, 2本しかないバスで1時間半くらいはかかるらしい。新宿なら箱根くらいまで行けそうだ。

結局僕は都市部のバスを何度も乗り継ぎ、ぐるぐる歩き回っただけだ。それでも結構楽しかったが、その辺にも行ければもっと違った光景が見られたのだろう。

やっぱりレンタカー旅は誰かと一緒がいいなと思うけれど、今度は1人でも借りてみようと思っている。あと、赤提灯のお店で地鶏の炭火焼を食べたいし、スーパーで買った食材を自分で調理してみたい。

とにかく宮崎は住みたいと本気で思える街だ。おだやかで丁寧な人がたくさん住んでいるのだろう。しかも三食おいしい。いい街だ。

画像7
画像8

(帰りも乗り放題チケットを使って、大阪経由で成田まで飛びました)

サポートしていただいた分はコーヒーの勉強代に使います!