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怒涛の反転攻勢が見られるか、南アフリカランド!

昨年、南アフリカがロシアに武器供与したとの疑惑が高まって以降、対ドルで史上最安値まで売り込まれたランド相場であるが、同国財務相が、本件に係わる米国との対立は解消したと発言してからは、底打ちの動きを見せている。BRICSの一員として、西側とは一線を画す外交が、同国の特徴である。

1. 底打ちの兆しを見せる南アランド

一時ランド相場は、図表1の様に、対ドルで今月初19.87まで売り込まれた後、急速に反転上昇の動きを強めている。対円についても、図表2の通りコロナ後に一時6円割れまで下落した後、現在は、7円70銭近辺まで上昇してきている。加えて、ラマポーザ大統領が、ウクライナ、ロシアを相次ぎ訪問、仲介外交に打って出るなど、アフリカ代表としての存在感を高めていることも追い風となっている。

図表1 (ドル南アランド長期チャート Trading viewからの引用)
図表2 (ランド円長期チャート  Trading viewからの引用)

2. 【エマージング探求】南アフリカランドの魅力と課題

まず、政策金利が8%を超える高金利国であることがあり、国内インフレ率が6%台で高止まりしている現状、当面、現行の金融引き締め策が継続される可能性がある。
次に、金、プラチナ、鉄鉱石などの鉱物資源国であることが大きな特徴である。一方、経常収支は、慢性的に赤字体質で、第一次所得収支で、国内配当金の本国送金金額が大きい構造的問題があり、外的ショックに脆弱な側面もある。また、最近の中国経済の減速など、世界的なデフレ圧力が高まると、鉄鉱石など資源価格の低迷から、同国の貿易収支が悪化する可能性もある。
一方で、最近の地政学リスクの高まりから、質への逃避の観点から、金価格は、図表3の通り、過去最高値の2,000ドル台手前の水準での値動きが続いており、今後、米国の景気減速により、米国が利下げ局面に移行すると、金の相対的価値が上昇し、金価格との相関関係が高い南アランドに追い風になることも想定される。
結論として南アランドは、ロシアへの武器輸出疑惑により、過度にランドが売り込まれた経緯があり、現在の高金利を考慮すると、割安な水準に放置されてきたとも言える。図表4の通り、経常収支赤字の再拡大には留意しつつも、円キャリーの対象国として、見直し買いが入る蓋然性は相応に高いと判断できる。

図表3 (金価格チャート Trading viewからの引用)
図表4 (経常収支推移チャート 単位 1億ドル CEICからの引用)

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20230622執筆 為替アナリスト 林 哲久



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