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同時リスクオフ相場の行方!

4/15に発表された米国3月小売売上高の市場予想比上振れにより、米国長期金利が上昇、ニューヨークダウは6日連続の下落となった。今年に入り、米国の利下げ観測により、堅調推移を続けてきた株式市場、FX、ビットコインなどのリスク資産が一転、同時リスクオフ相場に転換しつつある。上昇相場復活の道筋と、当面のヘッジ方法を解説する。


1.同時リスクオフ相場への移行の背景

今月に入り、発表されたISM製造業景況指数、雇用統計、消費者物価指数、小売売上高など3月米国経済指標がいずれも堅調な内容となったことで、米国の6月利下げシナリオが遠のき、年内の利下げ自体を疑問視する向きが増えてきた。こうした状況から、米国10年債利回りが4.60%台まで上昇してきており、今後、5.0%を目指すとの見方も台頭してきている。こうした利下げ観測の後退に加え、先週来の中東情勢の緊迫化が、図表1,2,3の通り、米国株安を拡大し、南アフリカランドなどの高金利通貨で運用する円キャリー取引や、ビットコインなどのリスク資産も押し下げ、リスクオン相場が一旦終止符を打つ形となっている。

(図表1 ニューヨークダウ推移チャート 右軸:単位 ドル Trading View提供のチャート)
(図表2 南アフリカランド円推移チャート右軸:単位 円 Trading View提供のチャート)
(図表3 ビットコイン推移チャート右軸:単位 ドル Trading View提供のチャート)

2.米国長期金利上昇の背景

米国経済指標の堅調や、インフレ率の底打ち観測の背景には、米国の中立金利(長期的に貯蓄と投資を均衡させる名目金利)が大幅に上昇しているとの見立てがある。現在、2.5%程度とされる中立金利が、3.5%程度まで上昇したとする仮説が正しい場合、現在、5.5%の政策金利では、現在のインフレ率の反騰を抑えるのに十分ではないとの見方もできる。
また、今後米国の長期金利が5%まで上昇したとしても、依然、政策金利より低い水準に止まっており、長期金利の上昇余地は更に大きいとの見解も成り立つ。
こうした米国の金利見通しの修正が当分の間続くと仮定すると、同時リスクオフ相場が長期化するとの見方もできる。

3.同時リスクオフ相場がいつまで続くのか

米国の長期金利上昇が続く一方、米国の企業業績自体は堅調な業態が多い。今後、金利上昇によるバリエーション調整が一巡したところで、株式市場が上昇への転換点を迎えることは考えられる。具体的な時期や水準の予測は難しいが、米国の利下げ観測自体が消滅しない限り、2022年の金融引き締め時のような大幅な調整は回避されよう。

4.FXの中で唯一堅調なドル円相場とリスクヘッジ方法

先週来の米長期金利上昇により、FXの中でも、南アフリカランド円など高金利通貨で運用するクロス円相場は大きく調整する一方、ドル円相場だけは米国の長期金利上昇に連動して、154円台まで大きく上昇している。
米国株価が頭打ちとなっても、ドル円相場自体に上昇余地があるため、円ベースでの米国株式投資や、ビットコイン投資は一定のヘッジ効果を持とう。また、FXについても、米国長期金利上昇に弱い新興国通貨から米ドルに取引通貨ペアを移すことも、一つの考え方と言える。

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2024年4月16日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久





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