見出し画像

東証グロース市場250指数低迷の背景と反転のシナリオ!

東証グロース市場250指数は、プライム市場上場銘柄中心の日経平均株価に対し、この数年大きく出遅れ、低迷が続いてきた。その背景と反転のシナリオを解説する。


1.金利感応度の高い東証グロース市場250指数

東証グロース市場250指数構成銘柄は、ベンチャー企業中心に情報・通信関連が4割を占める。企業の成長性が高い反面、株価については、将来キャッシュフローに依存する部分が大きく、長期金利の上昇による割引現在価値の減少の悪影響を多く受けるため、金融引き締め局面では株価に下落圧力が高まる傾向にある。東証グロース市場250指数は、図表1の通り、米国の金融引き締めが始まる直前の2021年後半から大きく下落して以降、安値圏でのレンジ相場が続いている。その背景としては、2022年4月に東証グロース市場の前身である東証マザーズが廃止となった事に加え、東証グロース市場の主たるリスクテイカーである海外投資家が米国の金融引き締め政策が始まる前に、海外投資資金を早めに引き揚げた事で、日本自体のマイナス金利政策とは無関係に、東証グロース市場が下落する事になった。更に、その後の米国金融引き締め政策が予想以上に長期化し、米国10年物国債金利が、図表2の通り、昨年後半に一時5%に到達するまで上昇した事が挙げられる。

(図表1 東証グロース市場250指数推移チャート Trading Viewからの引用)
(図表2 米国10年物国債金利推移チャート 右軸:単位 % Trading Viewからの引用)

2.東京証券取引所のPBR改善要請によるバリュー株優位の構図

2023年3月、東京証券取引所からプライム、スタンダード上場企業で※PBR1倍割れ企業に対するPBR改善要請が出された事で、PBRの低いバリュー銘柄中心に企業改革の機運が高まり、図表3の通り、日経平均株価が、2023年夏場以降、大きく上昇する傾向が強まった。
(※PBRとは株価純資産倍率=株価/1株当たり純資産で、PBR1倍割れとは、株式価値よりも解散価値が高い状態を意味し、今後の成長に対し、市場の評価・期待が低い事を表す。)

(図表3 日経平均株価推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

3.割安に放置される東証グロース市場250指数の今後の行方

2/22日経平均株価が、1989年末の史上最高値を更新し、39,000円台に乗せた事もあり、割安に放置されてきた東証グロース市場250指数も、図表1の通り、底値打ちの兆しも見えてきている。しかし、3/8発表の米国2月雇用統計の上振れリスクや、米議会における2024年度歳出法案の審議難航による来月以降の政府機関閉鎖に伴う米国債格下げ懸念など、米国長期金利が一段と上昇する可能性のあるリスクイベントを控え、今の段階での東証グロース市場250指数底打ち宣言は時期尚早と考えられる。但し、今後上記2つのリスクイベントを消化し、米国の利下げ局面入りの蓋然性が高まる事で米国長期金利のピークアウトが確認出来れば、海外投資家を中心とするリスクマネーが、成長性が高く来期の増益予想が堅調な優良銘柄を幅広く物色する事で、東証グロース市場250指数全体の上昇に繋がる日も遠くないものと判断できる。

前回の記事はこちら

20240227執筆チーフストラテジスト 林 哲久



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?