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日銀は、来年、金融正常化に向かえるのか?

本日12/19、今年最後の日本銀行(以下、日銀)金融政策決定会合において、現在の大規模金融緩和政策の維持が決まった。来年以降の日銀金融政策並びにドル円相場の行方を追った。


1.市場の金融正常化への期待が裏切られた背景

一部にあったマイナス金利の解除を含む、大規模金融緩和政策修正への期待を完全に裏切り、声明文での「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」との文言が削除されるとの見方もあったが、こちらも削除されることはなかった。
前回の会合時との大きな情勢変化は、やはり、今月の米国連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ前倒し観測の台頭が挙げられる。今回の日銀声明文の中でも、前回では記載のなかった「海外経済の回復ペースの鈍化」という文言が2回記載されており、外部環境の変化が、大規模金融緩和政策維持の決め手になったと思われる。

2.今後の金融正常化への道筋

今後の国内の消費者物価指数は、当面2%を超える水準で推移した後、更に前年比2%を下回る局面もあり得るものの、需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりのもとで、物価安定目標2%の達成に向かうとの時間軸が示されている。これは、今年第4四半期(10-12月期)の需給ギャップがマイナスに落ち込んでも、来年第1四半期(1-3月期)に需給ギャップがプラス転換し、春闘での賃上げを確認した後に、ようやく金融正常化に向かえると判断しているとも読める。従って、金融正常化への着手については、市場の来年第1四半期(1-3月期)に行われると見るのは、時期尚早で、早くても第2四半期(4-6月期)以降となると見るべきであろう。

3.日銀が大規模金融緩和政策解除を急がない背景

来年は、米国の利下げが視野に入る中、世界的な景気減速への懸念が一層高まっており、日銀としては、拙速な金融正常化は回避すべきと考えている可能性がある。更に、足元の円安一服により、行き過ぎた円安進行への懸念が薄らいでいることも大きい。植田日銀総裁は、かねてより、金融緩和の早期解除のリスクと、金融緩和を続け過ぎることのリスクを比較すると前者のリスクの方がかなり大きいと述べており、今後も現行の大規模金融緩和政策を粘り強く維持していくものと思われる。

4.今後のドル円市場への影響

米国の利下げ前倒し観測の台頭により、ドル円相場は、図表1の通り、一時、140円台後半まで円高が進行したが、今回の大規模金融緩和政策維持の報道を受け、ドル円相場は、143円台を回復している。従って、当面は、140円を超えて円高が進行するリスクは少なくなったといえるが、来年に入ると、米国の予算審議の難航により、米国の金融市場が不安定化する可能性もあり、一方向的に円安軌道に戻ることも難しいであろう。当面は、141円/146円でのレンジ相場を予想する。


(図表1 ドル円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

前回の日銀関連の記事はこちら

20231219執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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