就職氷河期と居酒屋甲子園

★追記あり(2018年3月17日更新)

 少し前の話になるが、皆さんは居酒屋甲子園を覚えているだろうか。

 NHKの番組『クローズアップ現代』の特集「ポエム化する社会」で紹介されたイベントである。放送当時は「共感をあつめやすい“ポジティブな言葉の多用”が若い世代を中心に広まっている」という現象を紹介する事例として紹介された。

 実際に放送当初は、その異様な(ともすればグロテスクともいえる)光景に対し、インターネット上では批判の声が多くあがっていた。若者を低賃金で安くこき使うだけでなく、その上洗脳までしている——まさに「やりがい搾取」の典型であるという論調が根強かった。その批判はもっともであるように見えるが、それは問題の一部、あるいは表層でしかないだろう。

 世間はあまりにインパクトの強いその光景に目を奪われ、彼らがその全身で伝えようとしていたメッセージに気づくことができなかった。居酒屋甲子園がテレビで脚光をあびてもう3年近く経つ。当時、彼らの姿から何を考えるべきだったのだろうか。2017年~2018年、空前の「売り手市場」に沸く求人市場となったいまだからこそふり返ってみよう。われわれは、あの痕跡を忘れてはならないはずだ。
 

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