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Ⅳ-#10 マップの活用法

 さて、このビジョン分析シート、個人で作成してみるほか、校長会研修で相互に見比べてみたり、校内研修でワークショップ形式で作成してみたりと色々な活用方法が可能です。
 以下ではそうした活用の際にどのような観点に留意して考えていくのことができるのか、そのヒントについて述べます。

1.弱点を見つけてカバーする方法を考える

 作成したシートの空白の大きい部分については、学校づくりのビジョンが及んでいないことが示唆されます。

例えば授業一筋で頑張ってきたリーダーは左側・上側の記載が多くなり、また逆に教育委員会の指導主事経験が豊富なリーダーは、下側・右側の記載が多くなる傾向にあります。

 けれども「埋まっていない部分について力量を高めて、より力を入れよ」と言いたいわけではありません。埋まっていない部分は大抵、経験が少ないことであったり性格的に苦手なことであったりすることが多く、それを無理してやったとしても、あまり効率的ではないことが多いのではないかと筆者は考えています。
 
 権限を委譲して任せることも立派なリーダーシップの発揮の仕方です。例えば校長であれば「校内の人間関係づくりは教頭に任せる」、「コミュニティスクールを導入して、学校応援団をもり立て、地域との協力関係は地域主導に委ねる」といったように、弱点をカバーするような手立てを考えたりする方が有効なことが多いのではないかと筆者は思います。 

2.リーダーやその学校固有の持ち味がより活かされる学校改善戦略を練る

 前回述べたようにどのようなリーダーにも得手・不得手があり、学校にもその歴史や環境などによって様々な制約条件があります。限られた学校の経営資源で学校を変えて行くには、戦略的に学校づくりを行っていく必要があります。

 例えば、第7回で紹介した特別支援学校の校長は教職員への働きかけと、学校経営方針の洗練というシートの両端に力点を置きながら全体をカバーしようとしていました。

第8回で紹介した中学校の校長は、グランドデザインを中核に仕組み作りに注力し、結果的にその効果が経営の各分野に波及していくように考えたようです。

 優れたリーダーであるほどにいわゆる教科書的なリーダーシップの発揮はしていないのではないかと筆者は考えています。少なくとも筆者の知っている優れた校長はみなそうです。ビジョン分析マップを作成して戦略を可視化してみることで、学校づくりを支える考え方やツール、働きかけなど、各要素間の影響の流れを見直してみることができます。

戦略性を高めることで、校長その他のリーダーの発揮するリーダーシップが学校改善へと向かう流れを、より円滑なものにしていければ理想的です。こうしたリフレクションの1つの手立てとして経営ビジョン分析マップを役立ててもらえれば幸いです。