The Texas Chainsaw SHOCKORAMA Tee

今回のCHOPPING MALL Part 5において頒布アイテム中最強の問題作にして「マニアックにも程がある」という我々の趣旨に最高に相応しいTシャツであり、2023年上半期において、テロファクトリー入魂の１枚となった「The Texas Chainsaw SHOCKORAMA Tシャツ」。この究極のTシャツが完成するまでの紆余曲折がまたドラマチックであり、各方面のTシャツ者たちが、それぞれ取って置きのネタを持ち寄り完成したコットン100%のフランケンシュタイン物語といえるストーリーを交えつつ、このアイテムが完成するまでの過程について解説したい。

きっかけは昨年夏に開催されたCHOPPING MALL Part4。原宿KITギャラリーにて２日間という短期開催ながら、テロファクトリーも猿人レコードも本格的なPOP UP展開は初めてという緊張感の中で頒布会は無事成功に終わったのだが、その終わり間際の刹那に会場に現れたのがBOUNTY HUNTERのヒカル氏だった。ヒカル氏は実はDEAD AND BURIEDの頒布会には毎度遊びに来てくれて、深堀りパンク異端ファッション談義に華を咲かせていたのだが、今回テロファクトリーが進出とあって、秘蔵中の秘蔵Tシャツを持って来てくれた。それがオリジナル版のThe Texas Chainsaw SHOCKORAMAのTシャツだった！

　SHOCKORAMA Tシャツは、80年代後半のUK製ブートレグという曖昧なデータ以外誰がどこでデザインしたとかブランドとかいった類の情報は一切ない。似たようなレザーフェイスモチーフのTシャツはSEX PISTOLSの時代から存在したが、それとは微妙に違う。露出としてはNAPALM DEATH黄金期のアー写の中でドラマーのミック・ハリスが着用しているものが比較的有名だが、Tシャツそのもののデータはやっぱりわからない。そんな幻すぎるTシャツの現物がいま、目の前にあるのだ。

単なるコレクション自慢という話ではなく、これは一種の啓示だった。実はこれより更に数ヶ月前、eBayに同じTシャツで状態もそこそこ良いブツが出品されていたのだ。当然チェックはしていたものの、円安ショックで買えるわけねえと思いつつウォッチしてたら落札額なんと750ドルオーバー…世の中どうかしてるぜ…それでも出品された際のディティールのスクショだけは全部保存し、そもそも750ドル払って古着を１枚買うよりも、その750ドルでデザインを解析して復刻したほうが全方位ハッピー！という俺得理論に着地。まあ機会があればやってみようかな程度に念じていたら、いきなり目の前に登場した次第。

この手の復刻で最も重要なのが「サイズ感」である。ビンテージTシャツを集めた書籍など眺めていても実際はボディが縮んでいたり歪んでいたりと、画像だけでは正確な採寸は難しい。どんな復刻であれレプリカであれオリジナルの現物が存在することが最強なのである。
ヒカル氏所有のTシャツはオリジナルの証であるSCREEN STAR社のタグも、ミイラの包帯の端切れのような状態の相当なお勤め品で、プリントはかなり薄くカラーもギリ判別できる高松塚古墳の壁画のようなレベルだったが、採寸は全く問題なく、プリント位置などもバッチリ確認。細部に関してはeBayのスクショ、更にパンクバンドのTシャツだけを集めた洋書『PUNK SHIRTS』（Bryan Ray Turcotte著）にも図版が掲載されていることも判明した。

そこで手を挙げたのがテロファクトリーのプレジデント、尾崎テロルである。「自分全部やっちゃいますよ！」という、在りし日のヤングライオンを彷彿させる力強い言葉によって復刻作業担当が決定。それから約９ヶ月を経て、遂にThe Texas Chainsaw SHOCKORAMA Tシャツの完全復刻版が完成したのだ。しかし、完成に至るまでの最大の難関はインクである。

従来の粘度の強い油性のラバーインクが主流になったのは90年代以降で、80年代は水性の顔料インクがほとんどだった。デザインを完全復刻させたからにはインクも、そしてTシャツのボディも可能な限りオリジナルに近づけたい。リテイク作業は頒布会開催の直前まで続けられ、プリントが完了した商品は無事発送されたものの、到着日は異例の超豪雨注意報発令。会場に届く最後の最後まで気の抜けない状態だったが、おかげさまで近年稀に見るパーフェクトなアイテムが完成した。もちろんヒカル氏も完成品を見届けて大喜びの全方位ハッピーエンド。いやあ、Tシャツって本当に素晴らしいですネ！と水野晴郎ばりにムッチリした肉体にピタT着てお祝いしたいという思いで、遂に本格的に全国通販開始！　

TERROR FACTORY（テロファクトリー） SHOCKORAMA

長い話で恐縮でしたが、この過程があってこそのTシャツなので着る際にはこのテキストを副音声として楽しんでいただければ幸いです！

Text by: 植地 毅（Dead and Buried）