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無理やり相手の気持ちを引きずり出すのは契約には有効だけどカウンセリングには必要ないという話

先日、ひどく傷ついた体験をしました。それも、未だかつて体感したことのない心の中を荒らされたような体験で、なんだか汚されたというか、人の心に土足でズケズケと…っていう表現が、本当の意味で腑に落ちたような感覚です。

大切な友人の絡んだ事柄なので、ちょっと詳しく書けないのがもどかしいんですが、できる限りの表現で、あらゆるセラピストやカウンセラーやコーチなど、心理を扱う人に届くと良いなという気持ちで書かせていただきます。

私が心を汚されたと感じた相手は、いわゆるスピ的な視える人との触れ込みでした。ちょっとした質問をすると、その人の未来の姿?最高の姿?が降りて来て視えるらしく、私の周辺でも何人か視てもらってとても良かったとの声が上がっていた人でした。

そのため、正直なところ私にも油断があったと思います。どんな人なのかきちんと下調べしなかったし、警戒心もゼロで近づいてしまいました。

その人に私が一体何を期待していたかというと、友人がらみで会いに行っていたので、そこまでの悩みがあるわけでも、何かを求めていたわけでもなかったんです。ただ、お会いしたからには何か聞かねばと「私が本当に活きる道ってなんですかね?」という、ちょっと占いに行くくらいのざっくりした質問を持って行きました。
もちろん、そこで返された結果を受け入れるも受け入れないも私次第だし、何を言われても大丈夫!というつもりでいました。

ですが、その場で起こったことは本当に今思い出しても憤りと悔しさでじんわり涙がこみ上げるほど屈辱的なものでした。

まず、これからの私を視てもらうわけなので、今までどんな活動をして来たのかをざっくりと話しました。すると友人に、去年あったハプニングも話してみたら?と施され、そこそこの額の詐欺にあった話をしました。それに加え、今取り組んでいる活動の話で自分の略歴をまとめたのです。

すると、そこから強い口調での彼女の質問責めが始まりました。

そして、その質問の内容は明らかに、今私がやっている活動がいかに私にあっていないかを、私自身に認めさせるための誘導尋問でした。確かに、私が今取り組んでいることは、心から楽しい100%の活動ではありません。けれど、そんなことはわかった上で、今までの活動の総括として、誰かの役に立てるならば形に残したかったのです。
けれど彼女は、そんなに気持ちのこもっていない自分本位な商品を、お客様が買いたいと思うのか!?と、強く責めて来ました。

そして、その話が終わると今度は、私が去年あった詐欺の話について追求して来ました。そんな目にあったとしたら、相当に辛いはずだ。なのにあなたは淡々と話をした。頭と心が乖離している証拠だ。辛かったでしょう?抑え込んでいるんでしょう?と。

そこで私は、堰を切ったように泣いてしまいました。そりゃそうです。言い方は遠回しではあるものの、一生懸命取り組んでいることを、自分にあっていないと気づけと強い口調で追求された直後に、あまり思い出したくもない詐欺にあった当時の感情を思い出せ思い出せと優しく施されたら、そりゃ泣くに決まってます。というか、当時もしっかり辛かったけど、今はわかりやすく説明をする時間だったから淡々と話しただけなのに、感情が感じきれていないって…どうしてわかるの?って話です。

その後も、怒涛の質問と、私がいかに自分を生きておらずかわいそうかという話が続きました。感情と感覚は違う、思考と感情も違う、心からやりたいことだけをやって、やりたくないことは手放すべきだ…。

正直なところ、私自身もカウンセラーのお仕事をしているので、話している内容のほとんどが、正論であったことはわかります。ただ、わかっていてもできない部分というのは人間なので当然あります。なので、正論で追い詰められたとて、できるようになるのはまた別の話なのです。

カウンセラーの仕事の最も大切なことが傾聴です。相手の心の声に耳を傾けるんです。時に、クライアントが迷い込んでしまいそうな時は、質問で方向性を促す時はあります。けれど、クライアントがまだ直視できな感情や過去の出来事を、誘導尋問で無理やり引っ張り出すようなことは絶対にしないし、してはいけない行為なんです。
というのも、それを引きずり出す行為は、時に命の危険をはらみます。

彼女がしきりに言っていた、頭と心が乖離しているという表現。これはカウンセリングでも普通に使う表現です。潜在意識と顕在意識の間に分厚い氷が張った状態なんて言うこともあります。

ただ、きちんと心を扱える心理職の人間であれば、その氷がどう言う意味を持っているかを知っています。そもそもその氷の成り立ちを知っているんです。

潜在意識と顕在意識の間に氷が張ってしまうのは、自己防衛のためです。心になんのわだかまりもなく、童心のまま大人になれればなんの問題もないでしょう。けれど、耐え難いような苦痛や、我慢、そこに耐えるために、自分の深い部分の心を守るためにその氷が張るんです。
カウンセリングでは、この氷を溶かす作業をします。溶かす作業なので、もちろん時間がかかります。安心安全な場所と相手を前に、時間をかけて少しずつ溶かして、自分の心と向き合っていくんです。

ところがその氷を、まだ信頼関係すら築いていない相手がでっかいハンマー担いで近づいて来て、ガンガン割り壊し始めたらどうなるでしょうか?
それは、氷の下にあった冷たくて深くて暗く恐ろしい空間に、相手を突然つき落とす行為です。そりゃあ感情も吹き出しますよ。穴開けてるんだもの。

ちなみに、カウンセラーであれば、その氷を叩き割ることなんて、正直誰でも簡単にやってのけます。相手の心の癖や奥を読み取ることは日常茶飯事だからです。それでも、叩き壊してしまったら意味がなくて、本人が自分の意思で氷を溶かす努力をすることに意味があるから時間がかかるんです。
もし、うっかり叩き壊してしまったら、その相手はもっと分厚い氷を作り出しますし、先ほども少し触れましたが、最悪死を考え始めてしまいます。
実際、先日の出来事の最中、私の頭にはほんの少しの希死念慮が浮かびました。

彼女がしたことは、まず、相手を強い言葉で追い詰め、その次に突然相手に寄り添うように優しくし、いかに相手が傷ついているのかと言うことを必要以上に無理やり自覚させる行為です。実際のところ、彼女がこれを意図的に使ったかどうかはわかりませんが、とてもわかりやすい報酬と罰で、マインドコントロールに使われる手法です。
そして、そのあとに彼女が言ったことは「私のところに来て欲しい」というもの。私のところに来れば、なんとかする手立てがあるよ。ということです。けれど、具体的な内容の説明はありませんでした。
私に心理の知識がなければ、きっと彼女のところに通ってしまっていたでしょう。

ちなみに、私は彼女が詐欺師だと言いたいわけではないですし、洗脳して金を巻き上げる悪徳商法だと言いたいわけでもありません。実際、彼女のやり方は、心の中の氷が薄い人にとってはいい刺激になるでしょう。けれど、そうじゃない相手や、そうじゃない出来事を扱うには、あまりにも乱暴なのです。相手の状況を知らずに、氷の厚さも何も知らずに、割ってみたら分厚くておおごとになっちゃった。なんて、人の心理を扱うものとして許されません。

ここまで読んでくれた方に知っておいて欲しいことがあります。私たち心理職の人間は、基本的に相手を否定することはありません。頑張れと叱咤激励することはあっても、叱責することはあり得ません。適切な距離感を図って接します。何も言わない時は、甘やかしているわけではなく、タイミングを見ているんです。

残念ながら、自己啓発や心理の業界では、強いリーダーシップと強い言葉で引っ張っていくタイプの方が稼げるという現実があります。弱っている人にとってそれはわかりやすい光に見えるからです。けれどそれがうまくはまる人もいるし、はまらない人もいる。

信頼関係を築いたのちの言動であれば、そのカウンセラーやコーチなりの考えがあるのでしょう。けれど、最初から何か強い刺激を与えてくるのであれば、それはあなたを救い出すためのものではなく、契約を取るための手段であることが多いです。それは劇薬で、一時的には快感を伴いますが、すぐに元に戻る麻薬と同じです。

普段は自分がカウンセリングをする立場でなので、今回のこの出来事は本当に衝撃だったし、勉強になりました。あの日、私の心は犯され、汚れてしまったと感じたんです。今でも思い出すと、心の中の小さな子供が恐怖を訴えます。

私のような思いをする人がいなくなるよう、心理職の人間のモラル向上を願います。そして、弱っている人は強い言葉に騙されないでください。あなたに寄り添う人は、あなたを怯えさせる言葉をつかったりしませんから。

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