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第3回 「2020年 都市対抗野球」

1.はじめに

てるnote第3弾は、11月22日に開幕する「都市対抗野球」です。
 プロ、高校、大学、社会人など様々な野球カテゴリーがありますが、今年の都市対抗野球は、全野球カテゴリーのビッグイベントの中で最後に開催される大会であり、今年を締めくくる大会の位置づけになっています。
 しかしながら、野球ファンの中の都市対抗野球の印象は、社会人がただ野球やっている大会くらいの認知度の方がいると思います。そのようなファンの為に、都市対抗野球がどのようなものか知って楽しんで頂けたらと思い、このnoteを書きました。
 よって、都市対抗野球に詳しいファン向けではありませんので、ご了承ください。

2.都市対抗野球とは

 都市対抗野球の歴史は非常に古く、プロ野球が始まる前から開催されています。現・毎日新聞社の記者であった橋戸信さんの発案で、MLBがフランチャイズ制を採用して戦っている事をヒントに、日本の各都市の代表チームを集めた大会を1927年に実施した事が始まりです。プロ野球開始の9年前の事です。
 過去には、満州国、朝鮮、台湾の都市が日本統治時代に参加しています。途中、戦争による中断などありましたが、今年で91回目にもなる歴史ある大会です。
 都市対抗野球は日本社会人野球協会と毎日新聞社が主催、スポーツニッポンが後援する大会であり、また、地域の振興に貢献しているという事で総務省も後援している町おこしのイベントにもなっています。
 社会人野球の全国大会としては、社会人野球日本選手権と並び、最高峰の大会の位置づけであり、都市対抗野球の歴史、存在意義からも、価値の高いイベントという事が分かると思います。




3.都市対抗野球 エントリーチーム

 都市対抗野球は企業チームだけが戦っているイメージがあると思いますが、企業を母体としないクラブチームでもエントリーは可能です。所属する都市の都市長の推薦を頂き、ユニフォームの袖に所属都市の都市町章を付ければ、エントリー可能です。
 出場チームはその都市を代表しますので、チームを呼ぶ時は、チーム名だけでなく、都市名も同時に呼びます。



4.都市対抗野球 対戦方法

都市対抗野球の本戦は東京ドームで開催されますが、本戦に出場する為には、以下の地区分けされたグループで、地区予選を勝ち抜く必要があります。地区予選は、一次予選、二次予選とある為、本戦出場権を勝ち取る事は大変です。プロ野球選手をよく輩出する名門チームでさえ、地区予選で敗退する事は珍しくありません。
 本戦は地区予選を勝ち抜いた31チームと前年の優勝チームの計32チームで、トーナメントによる対決を行います。(日程は7章参照)
 優勝チームには、優勝旗・黒獅子旗を始め様々なものが授与され、個人表彰もあります。特に黒獅子旗は伝統ある旗であり、戦時中にこの旗が大陸に渡った際、選手が命がけで日本本土に持ち帰えるなど、この旗には数々のエピソードがあります。

地区分け:北海道地区(1)、東北地区(2)、北信越地区(1)、北関東地区(2)、南関東地区(3)、東京地区(4)、西関東地区(2)、東海地区(6)、近畿地区(5)、中国地区(2)、四国地区(1)、九州地区(2)
※( )内は出場チーム数  ※前年優勝チームは無条件出場
 




5.都市対抗野球ルール

 基本的にはプロ野球と同じルールです。プロ野球と違う主なルールを紹介します。

 ■指名打者制を採用しています。

 ■決勝戦以外でコールドゲームを採用しています。7回もしくは8回に10点差以上が付いた場合、コールドゲームになります。

 ■延長12回以降、タイブレークを採用しています。タイブレークは1死満塁の状況、選択打順で開始します。

 ■スピードアップルールがあります。試合時間短縮の為に、投手はボールを受け取ってから、走者あり時には20秒以内に投球をしなければいけません。これは徹底されたルールであり、二塁塁審がストップウォッチで計測しています。2回目までの違反は警告、3回目からの違反はボールが宣告されます。

 ■補強選手制度を採用しています。これは都市対抗野球の独自ルールです。本戦出場を決めた各地区のチームが同地区予選で敗退したチームから最大3名の選手をレンタル補強できるルールです。敗退したチームのエースや主砲を指名出来るため、この制度の使い方がチーム編成の上で非常に重要です。

 ■ベンチには、選手や監督コーチの他に、チームの顔となるマスコットガールの女の子が応援の為にベンチ入りします。応援団を代表しており、ベンチ最前列で黄色い声援を送っています。非常に可愛い女性が選ばれているので、選手はヤル気アップになっている事だろうと思います。




6.本戦出場チーム紹介

 2020年大会の本戦に出場するチームは以下の32チームです。

■前年優勝:JFE東日本(千葉市)
■北海道:JR北海道(札幌市)
■東北:TDK(にかほ市)、日本製紙石巻(石巻市)
■北信越:伏木海陸運送(高岡市)
■北関東:日立製作所(日立市)、日本製鉄鹿島(鹿嶋市)
■南関東:Honda(狭山市)、日本通運(さいたま市)、ハナマウイ(富里市)
■東京:JR東日本、NTT東日本、セガサミー、鷺宮製作所
■西関東:ENEOS(横浜市)、東芝(川崎市)
■東海:トヨタ自動車(豊田市)、ホンダ鈴鹿(鈴鹿市)、ヤマハ(浜松市)、東邦ガス(名古屋市)、ジェイプロジェクト(名古屋市)、三菱自動車岡崎(岡崎市)
■近畿:NTT西日本(大阪市)、パナソニック(門真市)、大阪ガス(大阪市)、日本新薬(京都市)、日本生命(大阪市)
■中国:三菱重工広島(広島市)、三菱自動車倉敷(倉敷市)
■四国:四国銀行(高知市)
■九州:ホンダ熊本(大津市)、西部ガス(福岡市)

7.対戦日程と試合中継

 11月22日に開幕し、12月3日の決勝戦まで全12日間で開催されます。通常は7月開催ですが、2020年は東京オリンピックと日程が重なる事から、11月に開催時期が変更されています。下記に1回戦の対戦カードとそれ以降の日程を紹介します。
 また、テレビやインターネット中継で試合やダイジェストの番組が放送されます。

 <日程>
 ■11月22日(開幕日)
JFE東日本vs三菱自動車倉敷、トヨタ自動車vsセガサミー
 ■11月23日
ホンダ鈴鹿vs日本生命、東芝vsNTT西日本、ENEOSvs東邦ガス
 ■11月24日
ホンダvs大阪ガス、鷺宮製作所vsジェイプロジェクト、日本製紙石巻vs西部ガス
 ■11月25日
日本製鉄鹿島vs三菱重工広島、TDKvs日本新薬、JR東日本vs三菱自動車岡崎
 ■11月26日
ホンダ熊本vs日本通運、四国銀行vsハナマウイ、伏木海陸運送vsパナソニック
 ■11月27日
ヤマハvs日立製作所、JR北海道vsNTT東日本
 ■11月27日~11月30日:2回戦
 ■11月30日~12月1日:準々決勝
 ■12月2日:準決勝
 ■12月3日:決勝


 <中継>
 ■試合中継;TV中継はJSPORTで全戦放送。決勝戦はNHK-BS1で放送。インターネット中継は毎日新聞サイト(無料)、JSPORTオンデマンドで全戦放送。  
 ■ダイジェスト番組:JSPORT、関東地区の独立局では30分のダイジェスト番組を毎日夜に放送。




8.注目チームと優勝予想

 出場32チームの中から、私が特に注目している8チームを紹介し、最後に優勝予想もしてみました。

 <注目チーム>

 ■JFE東日本(千葉市):
前年優勝チームです。打線は今川選手(日本ハムドラフト6位)、平山選手、峯本選手らを中心とした打線が売りの攻撃型チームです。一方、投手陣は他の強豪チームより不安があり、昨年橋戸賞(MVP)を受賞した元DeNAの須田投手を中心にどうまとめていくか、投手陣の活躍が鍵になります。

 ■トヨタ自動車(豊田市):
東海地区予選で一度もリードを許さず、勝ち上がった安定感のあるチームです。層の厚さはNo.1であり、エースの栗林投手(広島ドラフト 1位)やベテランのミスター社会人・佐竹投手、川尻投手など投手陣が安定しており、ここに王子からエース近藤投手が補強され、投手王国のチームとなっています。打線も沓掛選手、逢澤選手を始め繋がりのある打線です。投打において、非常にハイレベルなチームです。

 ■NTT西日本(大阪市):
予選4試合で計2失点しかなく、投手・守備力が非常に高いチームです。エース大江投手や濱崎投手は力があり、中継ぎ陣も奪三振力が高い投手が多く、そこに三菱重工神戸高砂から森投手を補強し、非常に高い投手力の野球で勝利を狙っていきます。

 ■ENEOS(横浜市):
過去にENEOSで3度優勝した名将・大久保監督が復帰し、5年ぶりの本戦出場を決めました。都市対抗野球最多優勝回数(11回)を誇る超名門チームであり、通算100勝まであと1勝と迫っています。エース藤井選手(楽天ドラフト3位)を中心に、守備力も非常に高く、守りの野球で勝利を目指します。また、三菱パワーの伊藤投手(巨人ドラフト4位)を補強し、更にチーム力UPとなっています。

 ■JR東日本(東京都):
伊藤投手(阪神ドラフト2位)、西田投手の両投手がチームを支えます。伊藤投手は地区予選であわやノーヒットノーランのピッチングを披露しました。更に東京ガスのエース・高橋投手を補強し、投手力が非常に高くなりました。打線は杉崎選手がリードオフマンとなり、佐藤選手、菅田選手、渡辺選手のクリーンアップで返していきます。大学時代に二刀流で注目された菅田選手は二刀流を止め、打者に専念しています。

 ■NTT東日本(東京都):
佐々木投手(西武ドラフト2位指名)、沼田投手、稲毛田投手と投手陣の層が厚く、特にベテランの沼田投手が先発やリリーフで大活躍しています。打線では、火ノ浦選手、向山選手、嘉納選手、上川畑選手を中心とした打撃陣は脅威で、更に東京ガスから笹川選手、楠選手たちが補強選手として加わり、トップクラスの打線を形成する事が出来ました。チームトータルのバランスが高いチームとなっています。

 ■Honda(狭山市):
投手ではルーキー朝山投手を軸として戦います。打線では吉田選手、井上選手、佐藤選手などが中心となり、上位~下位打線とどこからでも得点を狙えます。打撃型チームである為、勝利の行方はエース朝山投手の出来次第にかかっています。また、チームはここ最近の本戦ではなかなか1回戦を突破できない苦しい戦いが続いており、今年こそは2回戦突破したいところです。

 ■ハナマウイ(富里市):
元オリックス・本西監督が創部わずか2年で本戦出場に導いたチームです。選手数は少なく、また、選手たちはフルタイム勤務している環境の中、それでも本戦に出場してきました。新興チームが企業チーム相手にどのような戦い方をするか注目です。

 <優勝予想>
 私の優勝予想はJR東日本です。JR東日本とトヨタ自動車は決勝に上がるだろうと予想し、この2チームの決着には非常に悩みました。
 この2チームは元々投打において、非常に高いレベルのチームが結成できていましたが、補強選手制度で他チームのエース級を補強し、更に強くなっています。このハイレベルなバランスのチームが決勝まで負ける事は予想しづらいです。
 他に、NTT西日本も投手力が非常に高く、優勝候補に入れたかったのですが、同じブロックにいるトヨタ自動車と比較した時に、打撃面が若干劣り、敗退するのではないかと考え、優勝候補には入れていません。
 あと、個人的に好きなチームはHondaです。ずっと応援していますので、Hondaは私の心の中で優勝候補に入れています。





9.注目選手紹介

 私が注目する選手は多いのですが、その中でも特に注目したい選手を紹介します。

 ■JR東日本・伊藤将司(横浜-国際武道大):阪神ドラフト2位
阪神にドラフト2位で指名された投手です。球の出どころが見づらいフォームで、制球力が高く、投球モーションを変えて打者を翻弄し、非常にクレバーな投手術を見せます。

 ■JR東日本(東京ガス)・高橋佑樹(川越東-慶応大):2021年ドラフト候補
東京ガスからの補強選手です。昨年の慶応大学のエースで、明治神宮大会では大活躍をしました。球速は速くはないものの、ノビのあるストレートと多彩な変化球を使い分ける技巧派です。ボンバーの愛称でファンが多いです。

 ■トヨタ自動車・栗林良吏(愛知黎明高-名城大):広島ドラフト1位
社会人1年目からエース格として活躍している完成度の高い投手です。最速153キロのストレートを中心に内角外角を攻め分け、高い奪三振力を誇ります。今年のドラフトでは広島カープからドラフト1位の指名を受けました。

 ■Honda・朝山広憲(作新学院-法政大):2021年ドラフト候補
東京六大学野球で最優秀防御率のタイトルを獲得した実力を社会人野球でも発揮しています。球威不足があるものの、ストレートとスプリットのコンビネーションが素晴らしく、コントロールと強気のピッチングでなかなか失点をしません。父はPL学園の元主将で、KKコンビと一緒に甲子園で優勝しています。

 ■Honda・吉田叡生(佐野日大-中央大):2021年ドラフト 候補
高校大学時代からバットコントロールに長け、小柄ながら引き締まった体から強い打球を打つバッターです。大学4年時に首位打者を獲得した打棒は今年も健在で、予選でも2ホーマーの長打を披露し、チームを勝利に導きました。

 ■日本通運・添田真海(策人学院-明治大):2021年ドラフト候補
期待の大きいルーキーです。東京六大学野球の首位打者は社会人野球になってもヒットを量産しています。バットコントロールが非常に良く、地区予選の打率はチームトップです。選球眼も良く、リードオフマンとして十分な仕事をしています。また、守備もハイレベルであり、二遊間・外野を守れます。三拍子揃った選手です。



10.応援

 都市対抗野球の魅力の1つに応援があり、一塁側、三塁側に特設ステージが設置され、各チームの華やかな応援が名物となっています。
 チームが得点すると、会社のテレビCMの曲や、都市ゆかりの歌手の曲を歌ったりします。
 また、都市や会社ゆかりのキャラクター、商品のモデル人形などが登場します。例えば、Hondaであれば、ステージ上をポケバイが走ったり、JRでは新幹線の大きなモデル人形がスタンドを走ったりします。また、そのような応援は高校野球などよりも豪華であり、その応援に対して、応援団コンクールの審査もあります。
 しかしながら、2020年は新型コロナの影響で、残念な事に応援は行われない事が決定しています。




11.社会人野球出身の主なプロ野球選手

 社会人野球出身の選手では、プロ野球で成功した選手が多く、三冠王や沢村賞を受賞した選手もいます。プロ野球で成功した主な社会人野球出身選手を以下に紹介します。

 ■投手:平松政次(日本石油)、江本孟紀(熊谷組)、与田剛(NTT東京)、佐々岡真司(NTT中国)、潮崎哲也(松下電器)、野茂英雄(新日鐵堺)、伊藤智仁(三菱自動車京都)、岩瀬仁紀(NTT東海)、杉内俊哉(三菱重工長崎)、攝津正(JR東日本東北)、高橋尚成(東芝)
 ■捕手:古田敦也(トヨタ自動車)
 ■内野手:落合博満(東芝府中)、石毛宏典(プリンスホテル)、石井浩郎(プリンスホテル)、宮本慎也(プリンスホテル)、松中信彦(新日鐵君津)、仁志敏久(日本生命)、小笠原道大(NTT関東)、福留孝介(日本生命)、源田壮亮(トヨタ自動車)
 ■外野手:若松勉(電電北海道)、谷佳知(三菱自動車岡崎)、赤星憲広(JR東日本)、長野久義(Honda)、近本光司(大阪ガス)




12.都市対抗野球・社会人野球のレベル

 本戦出場チームのレベルは非常に高く、プロ野球の二軍より強いのではないかと思います。そう考える理由として、大学野球を経験し、社会人で更に経験値を積んだ実力屈指の若手やドラフト候補選手がいたり、30歳善後の経験豊富なベテランなどもいたりする選手層や、緻密な戦術プレーや選手起用をする巧みなベンチワークがあるからです。
 本戦出場を経験し、プロに指名された選手がプロ野球の世界でも比較的すぐに活躍する事からも、都市対抗野球のレベルの高さが分かると思います。プロ野球新人選手でも、都市対抗野球本戦を経験した選手をその他の新人選手と同じ目線で見ては失礼ではないかと私は思うほどレベルが高いです。



13.まとめ

 ■都市対抗野球はプロ野球が始まる前から開催されている歴史あるイベントです
 ■参加チームは各都市長の推薦を受けた都市を代表したチームです
 ■本戦は地区予選を勝ち抜いた31チームと前年優勝チームの計32チームで戦います
 ■都市対抗独自ルールが存在します(時短ルールや補強選手制度など)
 ■2020年の本戦の日程は11月22日から12月3日の12日間で実施します
 ■テレビやインターネットで試合中継やダイジェスト番組の放送があります
 ■応援合戦がとても華やかです(2020年は応援合戦を実施しません)



14.最後に

 簡単な説明ではありましたが、都市対抗野球がどういうものか、ご理解いただけたでしょうか。
 選手は市民、会社などの期待を背負って、この歴史ある大イベントを戦います。今年も熱い試合がたくさん繰り広げられるはずです。2020年野球ビッグイベントの大トリを務める都市対抗野球を堪能しましょう。
 個人的には、優勝予想:JR東日本は当たるのか??も気になり、11月25日のJR東日本vs三菱自動車岡崎での、阪神ドラフト2位伊藤投手と阪神ドラフト6位の中野選手の直接対決も非常に楽しみです。

 都市対抗野球について、色々と知って頂きたく、今回のnoteも長文、乱文になってしまいました。申し訳ありません。それでも最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 てるnote第4弾も近日中に何か書いて、公開します。それでは、さようなら。

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