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国際ロマンス詐欺師が使っていた「写真」の本人にコンタクトを取るべきではない理由

 前回、写真検索の仕方について書きました。しかし、その写真のノウハウを使って得られた情報をもとに写真の人にコンタクトを取るべきではありません。「写真が誰かほかの人のものだ」ということや、「写真が複数のサイトでプロフィール登録されている」とか「詐欺に使われている写真を晒すサイトにある写真である」ということを知ることだけにとどめてほしいのです。今回はその「写真の人にコンタクトを取るべきではない理由」についてお話します。


写真の人は詐欺師とも被害者とも無関係である


 まず最初に言えることは、写真の人は詐欺とは無関係であるということです。被害者の方にとって数週間、数か月と交流をしてきた詐欺師の姿として想像してきたのは、詐欺師が使っていた写真の人の姿です。ですから、詐欺に気が付いた後でも、写真の人が詐欺と関係していると考えたり、その人の写真を知ることができたのは何かのご縁だと考えたりもするでしょう。しかし現実は、その人の写真をたまたま犯行のツールとして使ったというだけなのです。

国際ロマンス詐欺や投資詐欺は組織犯罪…写真はツールだ!

 写真が犯行のためのツールであると言えるのは、この種の詐欺が組織犯罪だからです。被害者の方にとっては写真の人物と自分自身は1対1です。しかし、近年の国際ロマンス詐欺や投資詐欺などは組織犯罪で行なわれています。1人の人の写真が同じ詐欺団で複数のアカウントを作って使われることもありますし、複数の詐欺団が同じ人の写真を使うということもあります。

 組織として効果の高い詐欺行為をおこなうために、ドラマやアニメを制作するのと同じように細かな人物設定が行われます。この人物はどういう職業で、普段どんなことを考え、どんなことを話すのかといったペルソナ設定をおこない、その設定に合わせた筋書きを作り、その設定に合った写真が選び出されます。

詐欺ストーリー設定に合わせた写真

 詐欺団は、犯行に使うのに都合の良い写真として、その写真を選びます。成りすます職業にピッタリな服装やシーンがある、若いころからの写真が時系列で揃っている、プライベートから仕事風写真まで揃っている、或いは車やお屋敷など金持ち要素を背景にした写真が豊富にあるなど。

 たとえば、人物設定をシンガポールのビジネスパーソンでシンガポールの高級コンドミニアムに住み、食事はラッフルズのあたりの高級レストラン、保守派で車はベンツに乗る、暗号資産で投資をしているなどといった設定をしたときに、それにふさわしい写真をシンガポール人のビジネスパーソンのSNSから探すかもしれません。

 デジタル化された時代において、写真を盗むことは容易にできます。使えそうな誰かのSNSを見つけて、写真を右クリックすれば簡単にダウンロードできますし、右クリックができない設定でも、写真の解像度がそこそこにあれば拡大してスクリーンショットをとればそれなりに精度の高い写真を複製できます。そのような方法で盗んだ写真を使って偽のアカウントを作るということも難しいことではありません。嘘をつくことが平気な人ならだれでもできます。

 つまり、詐欺師が使っていた写真は、「あなただけのために特別に用意された写真」ではないのです。その写真と遭遇したのは、ご縁でもなんでもなく、詐欺組織が戦略的に詐欺ストーリーの計画を立て、その写真を設定に合致したものとして調達し、使用したということに他なりません。
 

あなたが写真の「あの人」とコンタクトを取りたいのは?

詐欺被害者が写真の人とコンタクトとりたい理由

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