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サウナの聖地 しきじ に深夜行ってみたら…

「11月しきじでも行きませんか?」

LINEを送って来たのは、サウナのはなしに度々出てくる、僕をサウナーへと引き込んだ前職の後輩、サウナーS君からだ。


「週末飲み行きませんか?」みたいな軽い感じで書かれているが、とんでもない。

しきじというのは、サウナの聖地と呼ばれている、静岡にあるサウナしきじのことだ。

高校野球であれば甲子園。高校サッカーであれば国立。高校ラグビーであれば花園。サウナーであればしきじなのだ。

カレンダーを見て候補日を返信し、何時に行くか検討する。

聖地なので、土日の昼間にでも行けば、激混みになることは想像出来た。

裸の男達が、タオルで股間を隠し、静かにドアの前に並ぶのが、サウナ渋滞だ。

ここでは書けないが、これが悪いことを連想してしまい、並んでいるのを見るだけでもテンションが下がってしまうのだ。

一般の人は「なにそれ?そこまでして入りたいの?」と思うかもしれないが、都内の人気サウナだと実際にサウナ渋滞が起きている。


激混みを避ける為に、金曜の夜に車で出発。夜中にチェックインし、深夜と早朝のサウナを楽しむ計画にした。

そして、静岡といえば、さわやかハンバーグ。さわやかも土日のランチ時になると、激混み大行列必須である。

しきじを朝10時にチェックアウトした後、さわやかで整理券をもらい、10時45分に入店。さわやかでお腹いっぱいになった後は、三保松原で日本一の富士山を見てから、帰路へ。

という渋滞を避ける完璧なプランを立て、行く前からととのってしまいそうであった。

そして、当日、メンバーは、僕とS君、こちらもサウナのはなしによく出てくるA君の3人だ。


僕の実家の車で行くことになり、22時に最寄り駅に集合。しかし、ここから完璧なプランが徐々に崩れていくこととなる。

今まで実家の車は5人乗りのコルトだったのだが、いつの日か8人乗りのデカい車に変わっていた。

事前に車を借りることを父親に伝えると「乗り方教えようか?」と言われたが「大丈夫、レンタカーだって練習しないでしょ?」と答えた。

しかし、ペーパードライバー歴17年の大ベテランである僕は、当日になるとかなり緊張していた。

まず、マンションの立体駐車場から車を出さなければいけないのだが、出す最中に次の車が待ち始めると、無言のプレッシャーがかかり、焦ってしまうのだ。

ランチ時に激混みの駅の立ち食いそばで、そばを食べている気持ちのような感じだ。

立体駐車場に入り、車に乗り込むと、イメージよりも古い車だった。エンジンをかけ発進させようとするが、左手でサイドブレーキを下げようとするが、左手が空を切った。

「あれ?サイドブレーキないな。左にないとどこにあるんだっけ?」ありそうなところを探すが全くない。段々と焦り出し、一気に背中が熱く汗ばんできた。そして、次を待つ車が現れたのだ。

「うわ、やべっ」もう軽くパニック状態でなりつつある。もう一度冷静になりサイドブレーキを探すが、見当たらない。

「仕方ない、とりあえず出るか」とサイドブレーキをかけたまま、ギコギコとゆっくり駐車場から出た。

そして、めちゃくちゃ恥ずかしかったのだが、すでに寝かけていた父親に電話をかけた。

「ごめん、シフトレバー?サイドレバー?が無いんだけどどこ?」(サイドブレーキという言葉が浮かんでいなった)

「は?なにそれ、そんなのないよ」

と、いつになくつっけんどんに返される。

「いや、普通エンジンかけたらさ、レバー下げると、勝手に車って進むじゃん。そのレバーだよ」

「は?そんなのないだろ」

「いやいやいや、あるじゃん。今Dにしても進まないんだから」

「は?わかんねーな。とりあえず行くわ」

と、噛み合わない会話に業を煮やした父親が来てくれることになった。

「あんなイライラしている親父記憶にないな。やはり人は睡眠の邪魔をされるのが1番嫌なんだろうな」と思いつつ、父親が来た。

「なんだよ、どこだよ」と言われ説明すると、「足元の左だよ」と言われ、ハッと気付く。まさに灯台下暗しだ。

「どうもすみませんでした」と父親に謝り、「他は大丈夫か?」と聞かれ、「多分大丈夫」と全く確信を持てないまま、とりあえず駅に向かった。


駅に着き、しきじまでのナビを入力することにした。液晶を触り、ハッと気付いた。タッチパネルでなかったのだ。

「これは相当古いな、となると、ナビも古いからマズイな」と思いスマホでGoogleマップでナビすることを考える。

が、スマホホルダーが取り付けられていない。探すとコルトに付けられていたホルダーが箱に入っていた。

取り出して付けようとするが、コルトとエアコンの羽の向きが変わっており、上手く付けられない。箱には縦でも横向きでも設置可能と書いてあるが、箱に入っていることから推測すると、父親もチャレンジして上手く出来なかったのだろうと予想し、とりあえず諦めた。

そうこうしているうちにS君とA君と合流。

「今週のハライチのターン聞いてないんすよ」とS君。「Bluetooth繋げましょう」とするが繋がらない。

「時間はいくらでもあるんだからさ」と何回も試したがダメだった。僕のスマホでも繋がらなかったので、そのまま出発することにした。

出発してから数分、S君のGoogleマップは最寄りの高速でなく、少し走ってから高速を乗るようなルートで、車のナビは最寄りの高速から乗るルート。

早く高速に乗りたかった為、ナビのルートを選択することにした。

そして、高速に乗るも、二手に分かれるルートを速攻で間違えた。

「あーGoogle信じないからすよ」とS君。しかし、時間はいくらでもある。

「マジでごめん」と反省し、約20分と800円を無駄にして、無事に正しい高速ルートに乗ることができた。


その後は順調に進み、途中サービスエリアで休憩することにした。

トイレをしてから「夜飯食べてないんでそば食べていいですか?」とA君。

「もちろんOKよ」とA君がそばを食べ終えるのを待つ。

食べ終えた後に、しらじらしく「言いにくいなー」と2人がつぶやくので、「タバコでしょ?一服してきて良いに決まってるじゃん」と言い、2人はサービスエリアの一番端に追いやられている喫煙所に向かっていった。

休憩終了後、サービスエリアを出ると、高速は大渋滞になっていた。

「あぁ、そば食ってるからだ」とS君。「本当に申し訳ない」とA君。

ここではっきりと理解した。このサウナ旅行は、完全に流れが悪い。


高速渋滞になったら、しりとりか、クイズか、なぞなぞをやるというのがお決まりである。日本に高速道路がたくさん出来始める高度経済成長期から、しりとり、クイズ、なぞなぞと決まっているのである。

「では、クイズやりましょう。日本のマンガ売上部数トップ10を当てて下さい。1位が1点、10位が10点。100位以下はドボンでマイナス1点です」とA君が提案してくれた。

以前部内の飲み会でやったらめちゃくちゃ盛り上がったらしい。

このクイズが簡単そうでめちゃくちゃ難しい。

残り2個くらいで、「床屋さんに置いてあります」と言うヒントをもらい、何回目かの回答で、「美味しんぼ!!!」と答えられた時は最高に気持ち良かった。スッキリボールを100個投げても足りないくらいだ。

僕とS君の対戦だったのだが、頭をこれでもかと絞り出しでも、しきじに着くまで、最後まで10位を当てることはできなかった。

ちなみに10位はBLEACHである。


白熱のクイズバトルを終え、しきじに着いたのは、1時35分。駐車場は結構埋まっている。

22時出発、24時過ぎ到着を予定していたのだが、だいぶオーバーしてしまった。

入り口前で一服した後、券売機でチケットを買いチェックイン。やっと、しきじに入れると思うとワクワクが止まらない。

受付でチケットを出すと「あのーお風呂2時までなんですよ」とまさかの事態。

「え?24時間営業じゃないの?うわー失敗したー」頭を抱える3人。

出発からの時間ロスの出来事が走馬灯のように駆け巡る。しかし後悔しても仕方ない。時間はもう取り戻せないのだ。

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スタッフの方に聞くと、お風呂は2時までで、翌朝は6時からとのこと。

「大丈夫です。入ります」と伝え、ダッシュで1セット、翌朝じっくり入る作戦に変更した。

ロッカーキーをもらい、急いで浴室へ。さっと身体を洗い、サウナに入りたいのだが、シャワーのお湯が一向に熱くならない。

「ここのシャワーがダメなのか」と思い、他のシャワーを使うも熱くならない。他の人も同じで、手でシャワーの温度を確かめている。

「仕方ない」と諦め、冷たいシャワーで、身体を一気に洗いサウナへ。

しきじには、フィンランドサウナと、しきじ特有の薬草サウナがある。

薬草サウナに入るも、身体はなかなか温まらなかった。恐らく、終了間際だったので、温度が低くなっていたのだろう。

1時55分までサウナに入り、水風呂に入る。しきじは、天然水を使用した、飲める水風呂が有名なのである。

水風呂に入ると、水がたしかに軟らかい。身体を優しく包んでくれる感じがする。実際に飲んでみても美味い軟水だ。

しかし、身体が温まりきっていなく、ドタバタしていたので、当然ととのうことは出来ず、諦めて、2階の休憩スペースに向かった。


休憩スペースの電気は既に消され、リクライニングチェアは全て埋まっていた。迷っていると、どんどんスペースがなくなると思い、毛布を二つ持ってきて、窓際のスペースに敷き寝ることにした。

タイマーをセットし、持参した耳栓をつけ、横になる。

しかし、朝まで一睡も出来なかった。原因は、地べたに毛布なので、身体が痛い。耳栓をしても響き渡るおっさんのいびき。そして、定期的に上からしずくが落ちてくるのだ。

最初、顔に落ちてきた時はビックリした。「なに雨漏り?」と思ったが恐らく結露が原因だと思う。

頭を毛布で隠すも、定期的にポタ、ポタとしずくが周辺に落ちてくる。1時間に1回くらいで、しずくが頭にヒットしてくるのだ。

毛布を被り防御しても、一向に眠ることは出来ず、目がバキバキのまま、朝を迎えた。


5時50分頃にロッカーへ降りると、既にお風呂は開いていて、パラパラと先客がいた。

「よし!人が少ない!」ということで、身体を軽く洗い、お風呂に浸かり、薬草サウナに入った。昨日よりも明らかに蒸気が多く、熱く感じる。

しっかり10分入り、水風呂へ。昨日よりも体感2度くらい低く感じる。

「あーこれがしきじの水風呂だぁ」と幸せな気分に包まれる。

ととのいイスに座って休憩すると、昨日からの疲労と睡眠不足からか、頭がグワングワンしてきた。

「これは最高に気持ちいいやぁ」とヨダレを垂らす絵文字みたいな顔をして目をとじる。

ゆっくり目を開けると、6時台とは思えないほど、人が増えていた。お泊まりしていた人が皆、朝ウナを楽しんでいるのだ。

2セット目は、フィンランドサウナだ。

ちなみにしきじのサウナは、フィンランドサウナ側にテレビが付いており、音量は結構デカい。薬草サウナ側は、テレビの音だけが流れている。

フィンランドサウナでしっかり汗を出し、水風呂、休憩。

この2セット目の休憩がもの凄かった。頭はグワングワンしていて、昇天しそうな感じだ。5分くらい目を閉じていたつもりが、時計を見ると15分休憩していた。

久し振りにめちゃくちゃ気持ち良い休憩をすることが出来、4セットを楽しんだ。

混雑のピークは、7時前くらいで、時間が経つにつれて、解消していった。


寝ていないので、休憩スペースで仮眠しようと思うも上手く寝ることが出来ない。ならばもう1セット入ろうと、8時45分に再度サウナに入った。

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この時間は、人が少なく、浴室内も外の日差しが入りとても明るい。

薬草サウナの扉を開けると、蒸気が半端ないことになっていた。薬草サウナは、下段の方が熱そうに見えたので、下段に座る。

人の出入りが少ない為、サウナ内はめちゃくちゃ熱い。足の裏すら熱くて、マットを敷かないとヤケドしそうだ。

蒸気はどんどん凄くなり、頭を下げていないと入れない。背中は焼けるように熱い。我慢に我慢しても7分しか入ることが出来なかった。

最後に、薬草サウナ本来の暴力的な熱さを体感出来、満足して、初しきじを終えることが出来た。もちろん、ペットボトルに水を入れ持ち帰った。

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完璧な朝ウナは、昨夜からの悪い流れを完全に断ち切っていた。

10時にチェックアウトし、さわやかハンバーグも整理券3番をゲットし、入店早々速攻で注文し、ハンバーグを堪能。

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その後、三保松原で富士山を見る。

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帰路に着き早々、A君が「お腹が痛い」と、コンビニに寄ることとなる。

A君を待つ車内で、「これ、多分Sが誕生日プレゼント持って来てくれると思ったから、お返し準備してたのよ」と、金曜日が35歳の誕生日であった僕は、その週が誕生日のS君にプレゼントを渡した。

何をあげようか迷った末に選んだのは、ハライチ岩井のエッセイ第2弾。『どうやら僕の日常生活はまちがっている』

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「まだ第二弾読んだことなかったんですよー」とS君、そして「僕からもどうぞ」とマルシンスパのKOKUタオルをもらった。

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サウナーはサウナのタオルをもらえるととても嬉しいのだ。しきじでもお土産用として、僕はタオルを3個買っていた。

すると、車に戻って来たA君から「僕からもお二人に」と、しっかりとプレゼント用にラッピングされた袋をもらう。中身は体験型のカタログギフトであった。

おっさん3人で誕生日プレゼントを渡し合う。一気に車内はハートフルになった。

その後、渋滞はあったが、ドラマ視聴率とCD売上クイズで時間を潰し、トラブルなく帰宅することが出来た。


唯一気になるのは、三保松原で富士山を前におみくじを引いたが、待人 都合でこられません と書かれていたことだけだった。














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