竹熊 健太郎『ゴルゴ13はいつ終わるのか? 竹熊漫談』(イースト・プレス、2005年)を読みました。

ゴルゴ全巻コンプリートの道(153巻…)を歩み始めた所で気になった本を読んでみました。内容はあの竹熊健太郎さんによるエッセイ・評論集です。竹熊さんのことは、高校時代ビッグコミックスピリッツの“サルまん”(『猿でも描けるまんが教室』)で知りました。その後、横浜国大に北仲スクール(横浜文化都市スクール)でのサブカル講座ではご本人の講義を聴くことができました。(鷹の爪団とそのマンガ史における意義を知ったのはこの時でした。)

さて、本書はマンガやサブカルの骨太の批評となっており読み応えありました。少年マンガが70年代に一段落した後に萩尾望都、竹宮恵子などによる少女マンガが骨太のマンガを創り出し、少年漫画の空白を埋めたこと。宇宙戦艦ヤマトが初回放送時には人気が出なかったが、月刊OUTにより世に出たこと、ヤマトやルパン三世の人気が出た後にアニメブームが起こり粗製乱造となりアニメの冬の時代が来たことなど、ほぼコンテンポラリーな文化を整理し、歴史にしてくれています。こうした動きと並行してオタクが生まれるのですが、その政治的な位置づけなどにはなるほどと納得しました。その他、リミティッド・アニメーションと手塚の韜晦、そして、エヴァの分析もさすが。私はジャンプ世代でマガジンにはそんなにいい印象はないのですが70年代のマガジンには大伴昌司の企画などがあり、それがその後のサブカルを作ったということを知り胸が熱くなりました。これを読んでまた読みたい漫画が増えてしまいました。日本(社会)文化論としても重要な一冊です。

本書より…

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こうした「去勢というトラウマ」を克服する努力が最初に実を結んだのが七十年代初頭であり、TVアニメ十年の模索の成果として『ルパン三世』(七一年)『科学忍者隊ガッチャマン』(七二年)そして『宇宙戦艦ヤマト』(七四年)があったのだ。これらの作品は技術的にも内容的にも現在の水準から見てもほとんど遜色がないが、こうした異常に突出した作品群を小学校高学年から中学生にかけて視聴する羽目になった「オタク第一世代」の衝撃をあなたは想像できるだろうか。物心ついたときかたTVアニメを見ていたがゆえに、当時としては一番「目が肥えていた」彼らは、同時にTVアニメに対する周囲の無理解と戦わざるを得なかった。しかし周囲(親や大人)を説得するには、まだ圧倒的に「幼すぎた」のだった。
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竹熊 ただね、「ジャンプ」一人勝ち時代の前に育った僕としては、「少年マガジン」の絶頂期の影響がやっぱりでかいわけ。六十年代に「怪獣ブーム」を興したのも「少年マガジン」だし、フリー編集者の大伴昌司が六十年代後半~七十年代初頭に手がけた一連の「巻頭グラビア大図解」は、僕らの世代の百科全書であり、いわばオタクの基礎教養講座だったわけで。

ークオリティが異常に高いですよね。

竹熊 大伴のグラビアはね、子供向けとはいっても手加減のない情報が載っていたんですよ。

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