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手描き友禅×西陣織(つづれ織)ビジネス小物

多彩かつ繊細な東西の伝統工芸を掛け合わせた日用使いの作品

手描き友禅とは、江戸時代から伝わる技法で、手作業で布に模様を染めていきます。300年の歴史ある伝統工芸です。
友禅染めでは、染料のにじむのを防ぐ防染糊(もち米で作る糊)と筆や刷毛を用いて絵を描くようにして染めます。手描き染めの技術を生かして、多彩かつ繊細に表現出来るという特徴があります。

友禅の手法は「糸目友禅(絵の輪郭を糸目と呼ばれるノリで描いて防染し、その中を彩色する友禅)」と「無線友禅(糸目を使わずに直接彩色する友禅)」に分けられます。

手しごと百選で今回ご紹介するのは、おもに無線友禅の手法で図案から仕上げまで一貫して製作されている手描き友禅作家・笠原以津子さんです。この道35年のベテランです。

手描き友禅とのコラボ続々

ここ最近、笠原さんは多くのコラボ作品も手掛けています。中には、人気漫画『銀魂』のグッズ販売会社からオファーがあり、手描き友禅とのコラボ作品も手掛けました。

友禅作家さんは、一人で黙々と製作に専念されるのが常と聞きますが、製作の幅を広げたり友禅の魅力を伝えたりするために、積極的に他ジャンルの作家との交流を深めている笠原さんのような工芸士もいます。

笠原さんは以前、東京を表現する手描き友禅「ネクタイ」シリーズを製作しました。その時に知り合ったデザイナーの紹介で、京都の西陣織(つづれ織)「京都上七軒 つづれ織あだち」の足立敏さんと出会ったのがきっかけとなり、今回の作品「手描き友禅×西陣織(つづれ織)ビジネス小物」が誕生しました。

「足立さんの作品は刺繍を施していたのですが、手描き友禅で表現してみても面白いのではないかと思ったのです」と笠原さん。こうして、東京の工芸と京都の工芸のコラボ作品が始動したのでした。

共同作業における大事なこと

2人が手掛けたのは名刺入れ(販売価格4,200円)と印鑑入れ(同3,800円)です。
比較的手頃な値段の小物を作ることで、多くの人に手づくりの「友禅と西陣織(つづれ織)」を身につけてもらいたいという想いが込められています。

西陣織(つづれ織)に施した笠原さんの友禅は、さまざまなデザインで引き立てます。

伝統的な草木模様の他、現代的な飾り模様や可愛らしいうさぎなどです。使い手(購入者)を想像しながら図案を考案し、彼らの生活にフィットする友禅を仕上げていきます。

たった一人で製作する場合と、今回のように共同製作する場合で、作り手の心構えが全く異なると笠原さんは言います。

「人と人との信頼関係が本当に大事なんだと実感しました」

価値観も経歴も違うものづくりの作家が一つの作品を作り上げるためには、スムーズに作業を行う環境をつくることが肝心です。素早く的確なフィードバックやコミュニケーション、立てたスケジュールに対する正確性などです。

手描き友禅への関心の高まり

「友禅と西陣織(つづれ織)ビジネス小物」は行政からの依頼で、2018年秋までに185点を仕上げる予定です。功労賞として贈答されるそうです。

笠原さんは今、秋に表彰される功労者に喜んでもらえるよう、彼らが普段使いするシーンを想像しながら、オリジナルの柄を考案中です。

最近の製作オファーについては、インターネット経由での問い合わせが多くなってきたと笠原さんは言います。積極的にイベント出展や体験教室も開催していることもあり、それらの案内をインターネット上にも告知されています。

夏休み期間の今、体験教室をほぼ毎日開催していて、直近では1日3回に分けて12人も申し込みがありました。子どもを含む家族参加や学生、社会人、シニア層まで年齢層は幅広いとのこと。

多くの人が手描き友禅に関心を持っている現状について驚いたと話す笠原さんですが、体験者に理由を聞くと、「東京で友禅体験だ出来るところがあるなんて知りませんでした」という感想をよく聞くそうです。少なからず伝統工芸への興味関心があり、それらを体験したり触れたりできる機会を探している人たちがいるのです。

積極的に手描き友禅について発信する笠原さんの活動を、これからも取り上げて応援することで、もっともっと多くの人たちに手しごとの世界へ誘いたいと思いました。

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