てしこ

コロナ渦で読書好き❤︎そしてアート好き❤︎ 早稲田大学卒→元旅行会社勤務✈️→脱サラ イギリ…

てしこ

コロナ渦で読書好き❤︎そしてアート好き❤︎ 早稲田大学卒→元旅行会社勤務✈️→脱サラ イギリスバーミンガム大学大学院でArt History and Curatingを学ぶ🎨 島で3年間隠遁生活🌴→今は地元で転職活動中。

最近の記事

「推し、燃ゆ」を読んで

この本の帯に豊﨑由美さんが「すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書」と書いてあるが、本当にに絶望をみた。 無職になって、いままさに「なにわ男子」の沼にはまりかけている私の身としては、自分の事の顛末を覗き込んでいるような…。 (以下、ネタバレ含みます) ところどころ自分とも重なった。「社会不適合者」物忘れも激しく、片付けられない。バイト先でも注文を忘れたり、なかなかこなせない主人公あかりは、発達障害を抱えているように見える。 バイトの業務も勉強もうま

    • 人には話せないそれぞれの金銭事情を身にしみて知れる「三千円の使いかた」

      「金銭事情」は友人同士で話すのは、タブーな感じがある。 旅行や外食でもなんとなく「高い」と思いながらも、「この時ばかりは気にしてはならぬ」と笑顔で応じる。クーポンを提示するのも「ケチケチしている」と思われそうで気が引ける。 そんなこんなで日常にふと際立つのが、自分自身のお金がない惨めさ。僻み。そして、ケチくさいことへの嫌悪感。 決して、裕福な家庭で育ったわけではない。無理をして大学に行かせてもらった。今は、仕事を辞めて、転職活動中の身である。「お金への不安」がいつも付き

      • 文豪の生活を描いた「めぞん文豪」を読んで悶々。

        「太宰治・石川啄木・川端康成らが現代を生きていたら…」を妄想して描いたヤングキングコミックス連載の漫画「めぞん文豪」。文豪たちが一つ屋根の下で共同生活をしながら、SNSを駆使してtweetしたり、クラウドファンディングしたり…。現代を生きていく姿が見られるなんて、なんて面白そう!と期待して購入したが、正直期待外れであった。 なにせ主人公の太宰がイメージと違って、泣き虫の愛らしいピュアキャラで描かれている。 太宰の言葉を引用して、「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる漫画

        • 「そして、バトンは渡された」の納得できないところ

          瀬尾まいこさんの本は一度も読んだことがなく、ミーハー的に話題の映画が観たくなって読んだら、サクサク1日で読めるほど、物語が面白く展開していく。 (ここからネタバレ入ります) サクサク読める理由の一つが、会話のテンポの良さ。特に森宮さんと優子の会話。森宮さんのすっとぼけ具合が茶番劇のように快活で、日常の出来事がほのぼの、ほっこりする。森宮さんが、毎日作るあったかい料理も元気が出て好き。学校であったことの相談も、普通の親ならば娘を心配し過ぎてしまうことも、第三者目線で深刻化せ

        「推し、燃ゆ」を読んで

        • 人には話せないそれぞれの金銭事情を身にしみて知れる「三千円の使いかた」

        • 文豪の生活を描いた「めぞん文豪」を読んで悶々。

        • 「そして、バトンは渡された」の納得できないところ

          東山魁夷「風景は心の鏡」

          東山魁夷の作品が好き。 自然へと回帰するようなやさしい気持ちになるのが、私にとっての東山魁夷。 そして、彼が書く文章も好き。文体すら芸術性がある。 例えば、『日本の美を求めて』という魁夷の本では、「風景は人間の心の祈り、そして心の鏡」と述べて、自然との調和を訴えています。 風景は、いわば人間の心の祈りである。(…)庭はその家に住む人の心を最も良く表すものであり、山林にも田園にもそこに住む人々の心が映し出されている。河も海も同じである。その国の風景はその国民の心を象徴す

          東山魁夷「風景は心の鏡」

          孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

          どこへ行っても自分の居場所を探しているような。きっとどこかで「誰か」が私を待っている気がして。それでも目が覚めると変わらない朝。 どうも。初っ端からポエマー気取りましたが、好きな人も恋人もいない時、途方もなくどうしようもない気持ちになる時はありませんか。わたしにはあります! そんな気持ちに寄り添ってくれたのが、なんと横尾忠則のえほん! 絵:横尾忠則 文(詩):穂村弘の『えほん・どうぶつ図鑑』です! えほん、どうぶつ図鑑!!!!子供向け、ファミリー向けの本ではないのか?

          孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

          平野啓一郎「本心」から学ぶ現代社会問題

          平野啓一郎の「本心」…。これは「小説の枠に収まりきれない未来予測」だった。 今後やってくる自分の「未来」、気候変動問題、格差社会、少子高齢化、超長寿社会…。その上でやってくる「自分の死」や「愛する人の死」。 普段目を向けないこと、現代社会問題を、小説を通してとても考える機会になった。平野啓一郎の、作品を通しての社会を変えていこうというメッセージ性にはとても胸を打たれる。 舞台は、今からほんの少し先の未来、自由死(死を自己決定できる権利)が合法化された2040年代の日本。

          平野啓一郎「本心」から学ぶ現代社会問題

          電車と船を乗り継いで島に帰る。街灯が灯り、夜が始まるというのに、真っ暗な世界に帰るので、いつも切ない。たまたま、久石譲のMerry-Go-Land(ハウルの動く城のオープニング)を選曲したら、世界が変わった。車窓からの景色が明るく、気持ちも明るく。船からの眺めもジブリの舞台。

          電車と船を乗り継いで島に帰る。街灯が灯り、夜が始まるというのに、真っ暗な世界に帰るので、いつも切ない。たまたま、久石譲のMerry-Go-Land(ハウルの動く城のオープニング)を選曲したら、世界が変わった。車窓からの景色が明るく、気持ちも明るく。船からの眺めもジブリの舞台。

          「悪童日記」から学ぶコロナ渦の生き方

          「悪童日記。ラスト3行は忘れられない」…レビューを読んだ時、そう書かれていて壮絶なラストを想像したが、想像以上であった。なんだろうこの気持ち。双子の「ぼくら」の日記を覗き見していたら、それを影で知っている「ぼくら」に、最後にまんまとやられた気分であった。この本は「私が生涯に選ぶ名著30」に勝手にノミネートされた。 この本の一人称は「ぼくら」。舞台は、第二次世界大戦期末〜戦後にかけての(おそらく)ハンガリーの<小さな町>。母に連れられ、<小さな町>にある、魔女と呼ばれるおばあ

          「悪童日記」から学ぶコロナ渦の生き方

          原田マハ「リボルバー」はゴッホを愛するものが思い描く夢物語

          自己紹介が遅くなりましたが、私はヴィンセント・ヴァン・ゴッホを愛してやまない者です。 ゴッホの絵に心を射抜かれ、脱サラ。美術を一から学ぶため、イギリスへ渡航し、修士論文は「ゴッホ」について。麦畑行って、ゴッホのお墓の前で嗚咽しました。ちゃっかり「ひまわり」も添えて。なので、ゴッホとゴーギャンの研究者でもある、主人公「高遠冴」に妙に感情移入…。 本の結末というと、ゴッホファンが一瞬でも「幸せな気持ち」に浸れる内容でした。「そうだったら、どんなに良いのに」と思えるような。つま

          原田マハ「リボルバー」はゴッホを愛するものが思い描く夢物語

          村田沙耶香「殺人出産」で思わず殺人を肯定してしまいそうな感覚に陥る脅威

          ※ネタバレあり 「コンビニ人間」を読んだ時も、「地球星人」を読んだ時も、読み終えた際は、恐怖を感じ、ボロボロと涙が出てきた。村田沙耶香が描く世界が怖くなって、夜は眠れなくなった。 村田沙耶香の作品は、日頃なんとなく感じる「社会の圧力」や「違和感」をそのまま物語として体現し、ダイレクトに自分へ責めてくる。社会の体現としての登場人物たちの声が、時に自分に向けられているような感覚で、傷つけられる。主人公が自分と重なることもあり、共感しつつも、精神的にやられる。 精

          村田沙耶香「殺人出産」で思わず殺人を肯定してしまいそうな感覚に陥る脅威